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17.私はクエスト中ちゃんと護衛してくれなきゃ普通に死にますよ?



 待機場所は前半の時と同じ。


 ユモアという街は中心部にお城があって、商業施設は主にお城の中に集まっているのですが、その最上階ホールの中心に、わたしは今回も待機です。


 特に呼び込みとかしなくても、英雄にはその人の名前、職業、そのた諸々の個人情報を見ることができる、プライバシー無視の超絶能力があるので、きっと私の頭の上には《イベントクエストNPC》とか何とか…… 看板のように何もかもが見えているのでしょう。


 その証拠に、わたしの周りには既に人だかりが。


 イベント後半のクエスト開始時間前だというのに、イベント前半の比じゃないくらい英雄が集まっています。やっぱりスキルアップアイテムというレアアイテムが報酬だからでしょうか。クッキー配ってた前半とは、まるで様子が違いますね……


 初めはちゃんと行列ができていたものの、人が増えるにつれて列は崩れ始め、今となっては英雄達が私の周りを取り囲んで、ダンゴ状態に……! 押されたり引っ張られたりしながら、クエストが解禁になる時間までひたすら耐えているのです…… い…… 息苦しい……‼︎


 もはや誰が先頭かもわからない状態ですが、わたしは目の前の英雄に声をかけるのが最初のお仕事。クエスト解禁は朝6時ジャスト。

 

 『英雄様、わたしのお願いを聞いていただけませんか? 実はわたしの上司のテスタ・ライ様から、このチョコレートを崖の上のトンラ村の男性職員のところまで持っていくよう、言い使ったのですが……


 道中危険な魔物が徘徊していて、とてもわたし一人では義理チョコを運ぶことなどできません。


 職員に配る、所詮義理チョコを……! あの方は私に命をかけて配って来いっていうんですよ⁈(※涙を浮かべて力説)


 もしよろしければ、わたしと一緒にトンラ村までチョコを届けていただけませんでしょうか……? どうか英雄様! よろしくお願いします‼︎』


 これが台本です。昨日必死に覚えました。この台本はテスタ会長が書かれたはずですが、自虐ネタまで入れたりして…… ほんと勘弁してください。


 まぁ、どうせ英雄はわたしのセリフなど聞いちゃいませんがね。



 さて、英雄が「では私にお任せを!」とクエストを受注したなら、わたしが初主演となる今回のクエストがスタートです。英雄の後にくっついて、いざ崖上の村へ! っていう流れ。


 たった一個のチョコをリヤカーに乗せて、えっちらおっちら英雄のあとをついて行きます。さすがは英雄、『凶悪な魔物』も瞬殺です。




 今回のクエストでの行き先なんですが、地元では崖の上と言われている場所にあります。


 コール島には島のど真ん中に断層崖があって、その高さは約500メートル。昔は人がひとり通れるかどうか、という、岩肌に穿たれた道幅は肩幅程しかない細い道を登っていくしか移動手段がありませんでした。狭い道幅の通路を交易のために荷物を担いで通行するわけですから、滑落事故や登ってる途中でモンスターに襲われる、なんて事もあって、崖の上と下ではほとんど交流がなかったようです。


 しかし、近年になって、英雄の力によってこの崖に巨大なリフトが建築されました。作りはとても立派とは言えない無骨な鉄骨剥き出しの装置ですが、これによって崖の上の村と崖下のユモアとランプ村の交流が盛んに行われるようになりました。英雄様のおかげでこのコール島は大きく変わった、ってわけです。


 ユモアの街から北に進むとその巨大なリフトがあって、崖を登った所からさらに北へ進むと、トンラ村があるのです。そのトンラ村までわたしを運べばクエストは終了。エレベーターの待ち時間にもよりますが、だいたい15分から20分くらいで配達完了です。



 まったく、市民にとっては迷惑でしかない話ですが、神様は相当な数のモンスターをこのイベントに合わせて徘徊させるようになりました…… そんなクエストの道中に新たに現れるようになったモンスターは、私たち市民にとっては恐怖でしかありませんが、世界を救いし英雄にとっては物の数ではありません。まさに瞬殺です。


 ……瞬殺なのですが。

 

 英雄の中には、次々現れてくる敵を倒すことにばかり気がいってしまって、わたしを置いてどんどん先へ先へと進んでいく人もいます。


 イベント用の魔物は死んでもまたすぐに復活するんです…… ほら! 木のお化けみたいな巨人が、わたしのすぐ後ろで復活してるし‼︎

 

 長い枝のような腕でベシッ!と叩かれて、慌てて英雄の方へ走って助けを呼びます。


 『すみませんー! <英雄の名前>さん‼︎ わたし襲われてます、襲われていまーす! 助けてくださいよぅ』(※必死の形相で。泣きながらでもOK)


 これ、台本です。昨日夜中にベッドの上で初めて台本を読んだ時、襲われる事も普通に想定してあることに恐怖を覚えてしまいましたが…… これもちゃんと覚えてきましたよ。昨日……


 台本が前日に渡されるのって、普通なんですか……?


 まぁ、それはそれとして。大抵の、というかほとんどの英雄はわたしのこの声を聞いて、慌てて戻ってきてモンスターを斬り伏せ「ごめんね、敵を倒すのに気を取られちゃって……」と次からはわたしの歩くスピードに合わせてくれます。中には、傷ついたわたしを魔法で回復までしてくれる優しい英雄もいました。良いですね、ヒーラー職…… 優しくて大好き。


 だけど、ごくごく稀に変な英雄がいて、その人…… わたしが叩かれるのをただ見てるんです。その様子を写真撮利ながら、じーっとニヤニヤして遠くから眺めてるだけ……


 助けられるだけの力を持っている人に、じーっと見られながら黙って殺されたことがありますか?


 わたしはこんなに恐ろしいことがあるのか、という恐怖の片鱗を味わった気分です。



 「リヤカー引いてモンスターに追いかけ回されるロッペたん超かわいい」


 とか言って、故意にわたしを敵の集団の真っ只中に連れてって、放置する英雄まで……!



 この非道な英雄ども…… 絶対に許さんぞ……‼︎



 その日の仕事終わりに、泣きながらテスタ会長に直訴しました。


 「そうか…… そんな仕打ちを受けたのか…… 本当に申し訳ない。何度も何度も死に戻りをさせられるとは災難だったね。明日のクエストからはそういうことがなくなるように、【修正】して頂こう。ちゃんと報告しておくから安心してくれ」


 「ひっく…… 【修正】ってメンテしなくてもできるんですか? ……ひっく」


 「メンテ…… ああ、日食だよね。ああ、世界への影響が大きくなければ、神様はすぐに対応してくださるんだよ。きっとこの件もすぐに対応してくださると思うよ?」


 「ひっく…… テスタ様は直接神様へそのような意見を直訴できる立場にいらっしゃるという事ですか? ……ひっく」


 「ああ、主要NPCという肩書きを持っている者は、いつでも報告できるのだよ。それとこの先数ヶ月の間に行われる世界の改編についてとかの情報も届くようになるね。まぁ、大雑把な情報ではあるし、私には何のことかわからないことばかりで、ほとんど見てはいないけれど…… これは英雄と主要NPCと呼ばれる特殊な組合員だけに許された権限だね」


 主要NPC…… これになれれば、この世界の神と対話する権限が与えられる…… この話を聞いて驚いてしまって、わたしは泣くことも忘れてしまいました。


 神と直接対話ができるなんて‼︎


 村の教会の神父様にはできないことが、商工業協会の組合員にできてしまう…… すごすぎるでしょ!


 それに世界改変の情報⁉︎ そんな情報を誰より先に知ることができるなんて! ていうか、こんな貴重な情報を得る手段があることすら知らずに、この世界で商売を始めようとしてたなんて‼︎


 主要NPC…… まずはコレになって、神様に少しでも近づかなければ……


 

 ◆ ◆ ◆



 そして翌日、テスタ会長が仰った通り、しっかりとわたしのクエストにプチ【修正】が入りました。『三度失敗したらその日のクエストは再受注できません』


 わたしは二回までなら殺して良いと神は判断なされたようです。神様……



 とはいえこのお陰で、その日からは安全に、かつ順調にクエストNPCを演じさせて頂きました。


 いろんな英雄がいて、やってみればこれはこれで楽しいもんです。なんと、わたしの事を守るために英雄同士でクエストをサポートして、先回りしてモンスターを倒してくれるようになりました。


 その中でも朝からクエスト終了の日没まで、一日中わたしの護衛をしてくれていたのは、テスタ会長と同じ、猫耳が特徴のサンシ族の女性。職業はお侍さんでした。


 銀髪ショートカットのボーイッシュな猫侍さんで、モンスターが現れる場所を既に知っているかのように、モンスターの姿が見えた途端、彼女の刀の一閃があっという間にモンスターをなぎ倒していきます。リヤカー引きながら何度も「おお!」「すごっ!」と、感嘆の声をあげてしまいました。


 そして日が暮れて、ようやくバレンタインイベント後半(ユモア編)の二日目が終了。その日最後にクリアした英雄と一緒に、バンザイしながら写真撮影をしました。もちろん、ボランティアでモンスターを退治して手伝ってくれていた、あの猫侍さんも一緒。



 クエストを終えた英雄は私に手を振りながら、またどこかの街へ消えていきましたが、猫侍さんはまだユモア周辺でやることがあるとの事でした。わたしの身を守るため、ぜひ明日も来てほしい! ちょっとご挨拶をして、何とか明日の約束を取り付けなければ。と思ったのです。


 「どうもありがとうございました! おかげ様で、今日は一度も死ぬ事なく配達を終えることができました‼︎」


 ペコリとわたしが挨拶をすると、猫侍さんはスラリとした身体をわたしの方へ向けて、礼儀正しい東方の挨拶を返してくれました。月の光が猫侍さんの銀髪と腰から下げた刀を照らして、何だか青白く光ってるみたいに見えるっ…… か、かっこいい……!


 「いいのニャ。この島のモンスターを狩り続けるのがボクの日課なのニャ」


 ……ニャ、か……


 「何か目的でもあって、続けていらっしゃるのですか?」

 

 「うん!ボクね、ロボになるのが夢なのニャ」


 ……ロボ?


 



お読みいただき、ありがとうございます!


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