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9.私はNPC組合に登録します!



 よく考えてみると、この部屋で過ごす時間よりも仕事場のクッキー工房にいる時間の方がよっぽど長かったので、自分の部屋だというのに落ちつかないんです。


 都での生活も残り僅かなので、とりあえず商会(商工組合連合会)に行って、店を開くには何から始めればいいか、軽く聞いてみようと思います。


 あちこち歩き回るだろうから、歩きやすい靴とクリスタの街の地図を持って出かけました。


 外は雨が降っています。


 クリスタルで作られた光の都は、太陽が輝く晴れの日にはその光をあちこちに跳ね返して、目を開けていられないくらい眩しく光っているのですが、雨が降るとその輝きは灰色の空の色に変わって、暗く沈んで濡れていました。

  

 街に出てみて、人がとても少ない事に驚きました。英雄達の姿がありません。クッキー工房の金策ができなくなったというだけで、一気に寂しくなってしまった都の景色は痛々しい程でした。



 わたしはまず、商会の支店に行ってみようと思いました。

 

 やるかやらないか、はとりあえず抜きにして、個人で店を開くのって何が必要なのかだけでも知っておいて損はないと思いました。


 わたしが一番最初に向かったのは『アルデナ商会』。とりあえず商会の会員にならないと商売は始められないと言われたので、ここで登録する事にしました。他の商会はいろんな条件があって入会が難しいところもあるらしいのですが、ここは無料。とりあえず登録するだけなら、お金もかからないし…… その場で登録しちゃいました。


 そして登録が終わると、「詳細はこの中にすべて書いてありますから、ぜひご一読ください」と、辞書くらいブ厚い『規約』と書かれた本を係の女性から渡されました。


 うへぇ…… こんなの全部読めっていうの……?


 パラパラと投げやりに捲って読んで見ると、


 実際に店を出すときは、取扱商材をひとつ正式名称(呼称ではない)を書き出して、販売価格を税抜きで申請しなくてはならない…… とか、


 新規出店予定の場所を座標で報告し、半径100メートル以内に同商会のメンバーが経営する同じ商材を扱っている店がないか、似た名前の売り子が近くにいないか確認しなければならない、とか……


 事細かに出店に関して注意事項が記載されています。



 これは大変だ……



 店を出すって大変な事なのね、っていうのがわかったので、わたしは静かにコンクリートブロックのような規約を閉じました。


 特に選ぶこともなく、無料に釣られて商会を決めて登録を済ませてしまったので、予想以上に早く用事が終わってしまいました。そろそろお昼だし、カフェに寄ってランチして帰ろかな、なんて思っていたところに、メッセージが届きました。モニス先輩からです。送別会の連絡かもしれないので、出ることにしました。


 『あ、繋がった。ロッペちゃん、まだクリスタにいる?』


 「はい、今月いっぱいまではいるつもりです」


 『よかったー!』


 「どうしたんですか?」


 『今お店にね、ロッペちゃんに会いたいっていう英雄様がいらしてるの』


 「え…… わたしにですか?」

 

 『前に一度お話したことがある方らしくて。ロッペちゃんはもうこの店解雇されちゃってお店にはいないんです、って言ったら、すごくお困りの様子で…… どうしても会いたいから連絡してくれないか、って頼まれちゃって……』


 ちょっとちょっと…… 解雇されたとか言わないで欲しいんだけど!


 『ものすごい量のコーヒークッキー作ってきてくれたみたいで、それ納品したいって言ってくれてるんだけど、前と違って今はもう 買取価格下がっちゃってるからさ…… だからどうしたらいいのか困ってて…… よかったら来てくれないかな?』



 ああ…… これきっとリューさんの事だわ。


 「その方、竜戦士さんですよね?」と尋ねると、『ピンポーン! あたり‼︎ よく分かったね!』とモニス先輩。……間違いない。すぐにクッキー工房へ向かうことにしました。



 わたしは解雇された翌日に、またお店に行くことになりました。




 

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