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第1章 出会い

ごとごとと、電車が揺れる。

(したう)は、頬杖をついて、ぼんやりと外を眺める。

慕は片親で、現在あまり勉学に身が入っていない大学生だ。

だから、メイド喫茶でかわいいメイドさんに囲まれながらだらだらと勉強するのだが、

今日はメイド喫茶がお休みの日。


やる気が出ないので、総武線で秋葉原まで直行することが出来ず、

山手線でぐるぐる回っている。


「どうしようかな、途中下車する気もないしな……」

そう考えているうちに、慕はもう山手線で一周回ってしまっているのだ。

「まあ、ほかにもメイド喫茶はあるし、降りるか」

そしてぶらぶら歩いていると、彼はかわいい少女を見つけた。

彼は引き込まれるようにその少女のいるカフェに入っていった。


「いらっしゃいませ!」

そう言いながら、少女も慕に見とれていた。

少女の初恋だった。


慕は少女に言った。

「あのう、メニュー見せてくれませんか?」

少女はぴくんと動いた。

「は、はいっ、申し訳ありません!」


慕はメニューを適当に見た。

「ミルクコーヒーください」

少女はぱたぱたとミルクコーヒーを取りに行った。

そして、戻ってくる。

慕は彼女に興味を持った。もしかして僕のことが好きなのかな……? と。

「すいません、名前を教えてくれますか?

あと、あなたはどうして働いているんですか? まだ若いのに……」

少女はびっくりした。まさか名前を聞いてくるなんて!!

「と、桃花(おうか)留衣です! ここで仕事をしているのは、

片親で、全然縛られないし、学校に行ってなくて、暇だからです」

片親……その言葉に慕の心臓が音を立てた。

「そ、そういえばあなたの名前は何ですか? 自分だけ名前を教えさせられるなんて不公平ですっ!」

留衣は言った。彼女も彼女でかなりテンパっている。

「黒川慕だよ、僕も片親なんだ。大学生。よろしく」

動揺を殺しつつ、普通な感じで話した。


「大学……羨ましいです。

私は、将来カフェの経営者になりたいのに、短大では経営学と食品衛生学の勉強を両立できなくて……大学だったらできたのかなって思います。

だから、あこがれちゃいます! で、結局このカフェに雇って貰えて、そのままがんばってます。

あまり人気はないから、暇ですが、そのぶんメニューの研究とかもさせてもらえて、楽しいです☆」

すると、マスターらしき人が。

「留衣、初対面の人に人気が無くて暇とか言うんじゃないよ、ちゃんと働きな」

留衣はマスターに向かってむくれた。

「だって店長、この人全然食べ物とか頼まないんだもん、働きようがないよ~。

慕は気まずくなって、ピラフとかを頼んだ。

そしてそこで勉強した。

ピラフが来ると、黙々と食べた。

そして慕が帰ろうとすると。

「また来てくださいね、来ないとこのお店、潰れちゃいますから♥」

留衣の精一杯の愛情表現だったが、慕にはメイド喫茶のツンデレデーの真似だとしか思えなかった。

ただ「また来るよ」と彼女に言ったとき、少し胸が音を立てた……気がした。


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