そのころ、夜逃げされたパーティは……
遅くなってすみませんでした。
今回は、主人公達は都合により出ません
ある日の朝、ギルドの中でちょっとした騒ぎが起こっていた。
何故なら、そのギルドの中には普段いないであろう鎧の着込んだ青年たちがわらわらといた。
フロア内に、壁際やら通路等など、あらゆる場所にその青年たちが姿を現しており、さらには外にもっと多くの男たちが待機していた。
そのギルド内のとある一室。ギルドの応接室の中には、黒髪の少年と赤髪少女が座っており、対面に金髪の少女が座っている。
髪は腰にまで届く位に長く、頭の上に、銀色のティアラミスがあるのが特徴的だった。
瞳の色は翡翠色で、全体的に見たら可愛い系の分類に入るであろう空気を漂わせている。
服装はとても冒険者とはいえなく、どちらかと言ったら、貴族のお嬢様のような服装で。全体的に見ると水色と青色が特徴的な色をしていた。
その金髪の少女の後ろには3人の鎧を着込んだ青年たちがビシっと立っている。
「こ、紅茶でございます」
ギルド職員のうちの一人が紅茶を三つ分用意して、机の上に置いた。
しかし、その手はガタガタと震わせていた。
「あら、ありがとうございますわ」
差し出された紅茶に一口をつける金髪の少女。
優雅に飲もうとする手前。金髪の少女はやめて二人に目を移した。
「え、エミルがいない? マジで?」
差し出された紅茶に目をやらずに、頭を悩ませる黒髪の少年。
「ええ、そうよ。こんな手紙置いて行っちゃたわ」
バン! と乱暴に机を叩きながら一枚の紙を置く赤髪の女性。
その紙には、「旅に出ます探さないで下さい~byエミル」と書かれていた。
「あらあら、これもレイアさんが苛めすぎたのが原因じゃないですか?」
少しからかうように悪戯に聞いてくる金髪の少女が一人。
「何も辞めろって言ってないわよ。邪魔だから前衛に立つなって言っただけじゃないの」
ぷんぷんと怒る赤髪の少女レイア。
「でも、エミルがいる安心感は違うんだよなぁ……探索に魔物、罠に関しては敏感だし、囮で魔物たちの標的にだってなってくれるしな。それに、武器相手なら奪ってくれるし……」
文句を口にする黒髪の少年ユーキ。
「何よ。文句があるのならはっきり口にしなさいよ。仮にでも勇者でしょあんた」
「まぁまぁ。そんなことしても意味無いでしょ? それに、私がこの服装で、ここに来た意味、分かりますよね?」
金髪の少女はニッコリと眩しいほどの笑顔をを二人に向ける。その額の部分には、怒りのマークが浮かび上がるのが幻覚で見えている。
二人は背中に汗をたらたら流し始める。
「人類の戦力でもある勇者様。そして、それと近しい実力を身につけている私達。その内の一人が、旅に出ていってしまわれるなんて……。ああ、いえいえ。攻めてるわけではないんですよ? 相性ってありますからね。仲間内であろうと、喧嘩くらいはありますとも。その末に、出て行ってしまわれることも。まぁ許容範囲でしょう。しかしですね? 私たちは人類を代表とする勇者パーティですよ? ちょっとした人間関係の悪化で戦力をそぎ落として良いわけでは無いんですよ? 分かっていますよね? ねぇ、分かっていますよね?」
ニコニコと淡々と話し続ける金髪の少女。それを無言で聞く勇者と女剣士。
「ココだけの話なら、よかったでしょう。しかしですね。お父様の耳と言うよりも、眼にも入っちゃいましてね。……このような置き手紙が王室の床に置かれていたらしいんですよ」
そこで、少女は後ろに声を呼びかける。すると、一人の鎧を着込んでいる青年が「はっ!」と敬礼しては、一枚の手紙を取り出す。
その青年から一枚の手紙を受け取る金髪の少女は、それを机の上に置いて二人に内容を見せた。
王様へ
この度、勇者パーティから抜けさせて頂きました。
理由につきましては、私が弱いことに気づかされた所存でございまして、自分を見つめ直す為にも抜けさせて頂きました。
パーティの方達にも事前に伝えてあります。
今までありがとうございました。自分よりも強い人を選抜してくださいますようお願い致します。
エミルより
「いやーおかしいですねー。城には見張り人に罠、護衛の人たちに、警備の人たちもいたのにも関わらず、その全てを掻い潜ってお父様の部屋の机の上に置かれていたらしいですよ? ……今朝の4時ほどなんですけどね、私、叩き起こされてしまいましてね? それでこっぴどく怒られましてね? 私もエミルが居づらいだろうなーとは思ってましたけどね? ええ、だからですね。怒ってるわけではないんですよ? 私達仲間でしょ? 連絡を取り合ってるだけなんですよ? ……お父様がお呼びです。今から一緒にお城に行きましょうね」
「ヒッ」
終始にこにこ顔を絶やさない金髪の少女。しかし、背後からゴゴゴという音がにじみ出ている。
それに思わず悲鳴を漏らす、鎧を着込んだ青年達とギルド職員の方。
その笑顔を向けられている勇者と女剣士は、何も言えず。ただただ頷くしかなかった。
次回も主人公達は出ませんが、読んでいただくとうれしいです