何着ても可愛く見える美少女ってやっぱすげえわ
シリアスさんはお帰りになられました。
これからは、日常を楽しんでください(にっこり
「って! なんで宿屋なんですかーい!」
開口一番、僕は大声をあげていた。
「何でっていわれても、私ここの宿屋の店主だし」
何いってるの? と言う風に答える宿屋の人。
場面は変わって、外から宿屋に入った少年たちは、食堂と思わしき場所で寛いでいた。
4人用の食事にありつける場所に腰掛けるのは、少年と少女。
少年は、腰掛けていた椅子からおもっきり立ち上がって食堂の奥、キッチンにいる店主にツッコンでいた。
「まぁまぁ、落ち着け少年。焦っていてはチャンスは逃してしまうぞ」
「そのチャンスを逃しかねないんです」
奥のほうから店主は鍋を両手で支えて持ってきていた。
マフラーは身に纏っていたが、手袋を外しており、白い三角巾とエプロンを身に纏っており、先ほどまで見ていた歴戦の冒険者の風格がなくなっていた。
「お食事にマフラーを身につけるのはマナー違反ですよ」
「ああ、ごめんね。このマフラー外せないんだよね」
「呪われた装備なんですね。申し訳ございません。事情を知らずに難癖をつけてしまいまして」
「いやいや、良いよ。そういうの慣れてるから。宿屋なんだし、気軽にさ」
宿屋と少女が世間話をするかのように普通に会話をしていた。
「いやいやいや……あのさ」
少年が会話に入ろうとするも、そんなのお構い無しに女性たちは話を続けていた。
「それよりもさ、コート着ながらだと食べ辛くないかい? よかったらだけど、服着てく?」
「良いのでしょうか?」
「良いのよ。あんたらはもうここの従業員だし、適した服装ってのが相応しいわ」
「それ、もう確定なんですね」
「宿屋の神様が言ってるのよ。あんたらを逃すなと」
「ははは……」
「それじゃ、服貸したげるからこっちにいらっしゃい。ああ、それとそこの坊や」
「何でしょうか?」
少年は無視されたことに気にしてるのか、多少不貞腐れたかのような態度で返した。
それに対して、女性は何ともないような口調で伝えた。
「坊やが何をしようが、勝手だけど、これだけは言っとく。今はココにいるべきよ。なんせ、私にすら解けない不思議な呪いに掛かってるんだから」
「へ?」
「それじゃ行きましょうねー。あ、覗いちゃ駄目よ?」
「覗きませんよ!」
店主はからかいながらも少女を連れてその場からいなくなった。
「はぁ、なんなんすかね。本当に……」
少年は上を向いて、時間を潰そうとした。
「おーい、姉御~」
しばらく上を向いていたら、誰かが食堂に足を踏み入れていた。
赤髪で緑瞳の瞳をしていて、何日も洗ってないのか、汚れたボロボロの緑色のズボンに、黒色の半袖が特徴的な、何処からか不良のようなイメージが付きやすい男性だった。
眼と眼が合う。
男性と少年はお互いに声を発しないまま沈黙が流れた。
「な、何か御用でしょうか?」
少年は空気に耐え切れず、ありさわりの無いことを聞いた。
「いや、ねえけど。おめえさんもしかして……ってことはまさか、あいつがいるのか?」
男性はあわあわと慌てだした。
そして、おもむろにごほんと咳き込んだ。
「そっかぁ、姉御がいないなら仕方ないな。うん。出直そう。じゃな」
男性はそういうと、まるで何かから逃げるように、その場から走って出て行った。
「な、なんなんだよ本当に」
「今、誰か。来なかった?」
少年が再び上を向こうとするも、宿屋の人の声が部屋に入った。
「あれ、着替えおわったんすか」
「ええ、それもばっちりね。何着ても似合うんだから」
「はぇー」
「あなた、興味なさそうよねそうねって。いつまでそこにいるのよ」
店主はそういうと、入り口付近のところに顔をやった。
そこには、銀髪の少女が中に入ろうとはせずに、顔だけを覗かせていた。
「や、やっぱり他の服じゃ駄目ですか? こ、こんなスカートを履いて、殿方の前に出るの、凄く恥ずかしいです」
「ええ、良いじゃないの。そういうのは若いうちじゃなきゃ着れないわ。それに、それしか服無いんだから我慢して頂戴」
「嘘ですわ! 絶対に、嘘ですわ!」
「もー仕方ないなー」
そういうと、宿屋の店主が少女の下まで歩いていくと、腕をおもむろに引っ張った。
「きゃあ!」
そこから、映し出される光景は、少年の眼には凄く輝いて見えた。
黒と白が合い重なって際立つ服装。スカートは極端に短く、下手に動いたらパンツが見えてしまうのではないのだろうか? と心配するくらいに短かった。変わりに、黒く長い靴下を履いており、足の部分はそれで露出を抑えていた。黒いコート越しでは分からなかったが以外に、胸があるように見える。そういう服のデザインだろうか? 上着は胸元を少し開けていた。袖は肩の部分までしかなく、代わりに、白く長い手袋をはめており、それで腕の部分の露出を押さえていた。
想像を絶するような美少女がそこに立っていた。思わず少年は固まったまま動けずにいた。
「や、やっぱりこの服装じゃ駄目ですよ。破廉恥すぎです」
少女は、顔を真っ赤にしては再び食堂の入り口付近まで行って、こちらに顔しか出さない位置にまで戻った。
「駄目じゃないだろ? なぁ、少年」
宿屋の人は何かをからかう顔をしながら、少年の方に顔を向けた。凄くにこやかな顔だった。少年は思わず、右手に拳を作るもプルプル震えて我慢した。
「そ、うですね」
少年は、少女に向き直るも、まじまじと顔を見つめた。
「な、なんですか? やっぱり、破廉恥すぎますよね」
「いや、まぁそうだけど……」
「うわーん。面と向かって言われたぁ」
キャラ崩壊してません? 少年はそう苦笑しながらも、どきどきしながら少女を見つめていた。
「いや、うん。こういうときなんていったら分からないけどさ。間違いなく凄く似合ってるよ」
「え」
少女は、そう言葉だけを呟くと、再び顔を赤くした。
「それはそれで凄く恥ずかしいよぉ」
少女はそういうと、顔を伏せた。
「な、何でー!」
「あーはいはい。これ以上はお腹いっぱいになっちゃうから昼にしましょうね」
「「あなたのせいですよね!?」」
少年と少女の声が宿屋の中で響いた。
次回、ようやく自己紹介かな?