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見せられないよ! 触手うねうね

続きを投稿します

戦闘シーンにまでは行きませんでした……。今回もシリアスさんは元気なようです

「あ、あんた……」


 少年は、起こそうと少女の肩に触れて身体を揺らせた。


「ん……んむぅ」


 少女は身体を揺らされても、まるで動じず、起きる気配はなかった。


「はぁ、困った」


 少年は少女から顔を外し、上を向くように倒れ込んだ。


 少年の眼に容赦なく入る日差し。その眩しさから右腕を顔の前に掲げて、日差しを眼から守る。


 心臓がばくばくと鼓動が上がる。どうしようもなくなった少年は思いふけった。


 どうして自分が、逃げなくては行けないのか

 どうして自分が、いつも攻められなくては行けないのか

 どうして自分が、いつも大変な眼にあわなくては行けないのか


 答えは単純だ。自分が戦えないからだ。


 人間やゴブリンなどの武器でも対応できる物ならば、問題なく戦える。しかし、それができない相手ならばどうだろうか?


(強くなるために、抜けたのになぁ)


 自分の胸を枕代わりに眠っている少女に、少年は苦笑した。こんなことに対しても困ってしまう弱さに嫌気を感じてしまったようだ。


 いつも強気に出れない。見知らぬ人なんだから、問答無用で起こしてしまえばいい物を、それができない自分に苛立ちを感じてしまっている。


「ん、クロ?」


 クヨクヨと少年が困り果てて悩んでいたら、少女が顔を上げた。


 視線が合った。少年と少女はお互いにぱくぱくと口を空けていた。


 少年はその姿を凝視していた。少女の透き通った青色の眼差しは儚くもキラキラと輝いており、日差しによって白く輝きを放つ銀色の髪と相成っていた。


 少女はその瞳に、水のような物を浮かべては地面にたらたらと流れ始めた。


「クロ、を……どうした、のですか?」


 途切れ途切れに聞こえる、か細い声が少年の耳に入る。


「だ、誰」


 少年は喉をごくんと鳴らしながらも聞き返した。


「クローディアルキフグス」


「ん!?」


 少女は名前だけを言うと、少年の肩を手に持ち、上から見下ろすように、少女は少年をそのまま押し倒す形に持って行った。


「お願いします。私はどうなっても良いから。クロは! クロだけは!」


 少年の肩を揺らしながら、少女は一心不乱に叫んだ。


「待って! ちょっと待って!」


 揺さぶれながらも、少年は後退して距離を離そうと試みた。しかし、肩に手ががっちりと掴まれており、できそうになかった。


 その場で少年は、声を荒げた。少女はびくっと震えた。


「な、なぁ、何かと勘違いしてるか分からないですけど、くろーでぃあるきふぐす? そんな人、僕、知りませんけど」


「……」


「……」


 少年の困惑したような言葉に少女は思考がフリーズしたかのように止まった。


 突然、動きが止まった少女の反応に少年の方も、戸惑い、同じように止まる。


 当り一面の空気が一気に静まる。先ほどまでの慌しい音が急に無くなった事からか、無音が二人にプレッシャーを掛ける。


 風が遮る音だけが二人を包む。


「なぁ、取り合えず。退いてもらっても良いですか?」


「え、あ……ご、ごめんなさい」


 少女は慌てて少年の身体から退いて、後ろに身を引いて、地面に座り込んだ。


 やっと身体を解放された少年は、起き上がりざまに胡坐を掻いて座った。


「……」


「……」


 気まずい空気が再び漂う。


「なぁ、そういや。急に現れてきたんだけど、何処から来たんです?」


「そ、それは……あう」


 空気に耐え切れなくなった少年は咄嗟に少女に言葉を掛けた。するも、咄嗟に少女は目元を手で拭うもその眼から涙が零れていた。


 一体これはどうしたんだろうか。少年は背中に汗が流れるのを感じた。


(え、何か僕、間違えたことしました? 何もしていないような……ん? 身体を揺さぶったのが悪かったのか? いや、揺さぶんなかったらあのまま動けなかったんだ。仕方ないだろ。僕は悪くない)


「ま、まぁ、とりあえずさ。ここでは何だ。落ち着いて話せないですよね? 近くに町があるんですが、そこまで行きませんか?」


「あう。ご、ごめんなさい」


「ですよねー」


「ち、違うんです。そういうのじゃないです……ご一緒させてもらっても宜しいでしょうか?」


 上目遣いで聞いてくる少女。


「いいっすよ。僕も早くその町に着きたいので」


 僕たちはそうして、その場所から動こうとした。


 すると、空気がブレ始めた。


 目の前から、いかづちのようなものがバチバチとなっている。


 それとあわせてか、空が急激に曇り始めた。まるで今から雷でも落ちてくるのではないかの用に、黒い雲が急激に集まっていた。


 一体これは何なんだ? 少年はそう思った。


「あ、あわわわ」


 少女は、これが分かっているのか、口をぱくぱくと震えていた。


 少年は咄嗟に少女を自分の後ろになるように前に立ち、腰にある短剣に手を掛けた。


 そうしていると、バチバチと震えていた箇所に空気が淀むと何かが現れ始めた。


【触手】、特徴的だと上げれればソレだろう。身体を覆うように、赤混じりの黒っぽい触手が無数に纏わり付いている。


 足のように生やされているのは四足。尻尾らしきものは本体から一本に編まれた状態で伸びていた。


 さらにそれらは途中から先に向けて四つに分かれており、先端が全て鋭く尖っている。


 顔の部分もパーツが全て触手で作られており、目や鼻、口等至る所に触手がうねっている。


 触手が生えていることを除けば、見た目は狼っぽいその化け物は、聖書に描かれていそうな冒涜的な何かのようだ。


 それが、複数に絡まっては、一つの物体の形になっていた。


「嘘……どうしてここに」


 少女が口に手を当てて、まるで存在してはいけないものを見るような眼で、ソレを見ていた。


(新種の魔物……? いや、あれは……駄目だろ)


 直感だろうか。はたまた本能からだろうか。少年もソレを理解しないまま腰に収めていたナイフを狼の頭に向けて投げてから前に突き出た。


 触手の化け物は、ソレを理解したのか、投げてきたナイフを触手で絡ませて勢いを殺して飲み込んだ。


(飲み込むって何でもありかよ!)


 少年が心の中で叫んでいると、前のほうから狼の尻尾? と思わしき部分から触手が4つに分けて襲い掛かってきた。


(アクセル! 超反応!)


 触手が少年の身体を貫くと思われた瞬間、少年の身体がブレる。すると、その場所には触手によって地面が抉られた跡だけが残る。


「ヴァァ……」


 狼の身体のいたるところの触手がうねうねと左右を見るや、少年の姿はそこにはなかった。


 ついでにと言わんばかりに、銀髪の少女の姿も無くなっており、化け物は触手を張って辺り一面を探し始めた。

次回、ついに……!?

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