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少女たちは諦めないようです

 エミルは考えた。


 エミル自身、元々、強くなるためにパーティから抜けて旅に出たのだ。それこそ、宿屋で遊んでるわけには行かない。


(だけど……)




「ごめん。僕にはあなた達が期待できるような力は無いよ」


 エミルは、お客様と言う単語を使うのを止めて、あえて対等な立場で話した。


「でも、エミル様はかなり強いですよね?」


 やんあ割と断るエミルに、詰め寄るジェニカ。


「いやいや。誰かと勘違いしてるようだけど、僕なんてかなり雑魚ですよ。所詮は、宿屋の従業員ですよ」


 エミルはあえて半笑いながら答えた。


「むぅー。でも、あなた様を知っている人にとっては間違えようも無いですよ」


「はぁ、その辺にしておきなさいジェニカ」


 さらに追い込んでくるジェニカを言葉で制止しようとしたのはレムだった。


「何よ。レムだって、このお方を仲間にしようとしてたじゃないの」


「あのね。確かに、パーティメンバーがあと一人は欲しいけど、入りたくない人を誘うのは駄目よ」


 レムは、そういうと、コーヒーの入ったマグカップを少しずつ飲んでいった。


 食べ物が入っていたお皿はいつの間にか空になっていた。


「そうだぞジェニカ。無理やりは良くない」


 便乗するエリアル。


「もー分かったわ。今日は、もうしないけど、私、諦めないからね!」


 そういうとジェニカは勢い良く立ち上がってそのまま食堂から出て行ってしまった。


「はぁ、落ち着きが無いわねぇ」


 そうして、ゆっくり立ち上がるレム。


「お連れが騒がしくしてしまって申し訳ないな」


 エリアルは、エミルに頭を下げる。


「いえ、大丈夫ですよ。本当に仲がよろしいパーティですね」


「そういってくれると助かる」


 それだけいうと、レムとエリアルは、ジェニカを追うようにして食堂から出て行ってしまった。





「もー遅いじゃない! 早く行こうよ」


 レムとエリアルが宿屋の外に出て、ギルドに入ると、既にスタンバっていたジェニカが依頼ボートの前に立っていた。


「待ちなさいよ。今日は、クエストに行くのやめとかない?」


 それに待ったをするレム。


「なんでよ?」


「何でもかんでも、忘れたの? 私達3人だけじゃきついから一人いれようって話」


 ジェニカの疑問に、レムはため息交じりで答える。


「だって、それはエミル様が」


「入ってくれたら色々と助かるんだけどねぇ……あの人は、入らないわ」


 レムに対して、勢い良く返そうとしたジェニカをレムはさらに一蹴する。


「分からないじゃない。諦めなければ、きっと入ってくれるわ」


「そうなったらいいわねぇ……はぁ、あなたが羨ましいわ」


 それでも、負けずに引き下がらないジェニカ。そんなジェニカにレムはあざける用に言ってから、ため息交じりで小さく呟く。


「何よ? 言いたいことがあるなら言いなさいよ」


 ジェニカは、後半の部分が聞き取れなかったのか、あるいは、全体を通してレムが何を言いたいのか問い詰めた。


「戦力確保よ」


「だから。それはエミル様を」


「それも即戦力ね。あの人の攻略に手間取ってると、いろんなことができなくなるじゃない」


 短く、かつ。明確に伝えるレムに、そこを漬け込んで主張を曲げようとしないジェニカ。


「私もレムに賛成だな。ジェニカは少々。かの冒険者に拘り過ぎてるのではないか? それに、私たちのレベルで彼と同じ領域に立てれるとは思えないんだが」


 その会話に割ってはいるエリアル。


「むぅ二人してー! まぁ、でも良いわ。確かにこのままじゃきついってのはあるよね」


 そして、ジェニカはというと、自分のギルドカードを見やる。


「三人で手分けして探さない? お昼の12時になったら、再度ここに集合ってことで」


「ふむ。集まって探すよりかは、分散した方が見つけやすくなるな」


 その意見に賛同するようにうなずくエリアル。


「分かったわ。それじゃ。お昼頃に」


 そういうと、少女たちはそれぞれその場から散らばった。





「さて、行くとしましょうか」


 少女は、重い足をとある場所に向かわせた。


 そこは、少女とはまるで縁が程遠い。とある路地裏だ。


 そこら中に、洗ってないで腐ったような臭いが蔓延している。


「あのゴミは、何処にいるのかしら……探すのも嫌だわ」


 周囲の目が少女に集まる。


 薄汚れた服を着た男共が、そこら中にいる。


 その男どもから発する眼には、興味本位で覗いている連中しかいなかった。


 まるで、品定めをしている。そんな感覚に囚われながらも少女は、とある人物を探した。


 そこらかしこに、眼をみやる。途中では、服をびりびりに破かれて大事な部分が隠されていないような女性がそこら辺に寝そべっていた。まるで、何かに捨てられたかのように。


 無法地帯。辺境の町だからだろうか。こういう、設備されていない地域では、暴力が世界を包んでいた。


 そんな地域に入っている少女。回りの野生児にしてみたら格好の獲物だ。物陰に潜めていた連中は群れで襲い掛かってきた。


 お約束事だろう。こういう場面で、少女が着たらどうなるか? 答えは簡単、襲われて犯される。


 しかし、そんなお約束事を破るかのように、その群れが一気に瓦礫した。


 金色の瞳が輝きだす。その後、空間は一気にピンク色で満たされる。すると、全員が全員。その場でうずくまるかのように睡眠し始めたのだ。


「はぁ……まるで無謀ね。この私にちょっかい掛けるなんて。そうは思わない。ジャンク?」


 そう言いながら、ピンク色の空間を解き、後ろを振り返る少女。輝いていた金色の瞳は、元に戻っており、その瞳の先には、薄汚れた服を着ている赤髪の男が壁に寄りかかって座っていた。


「なんで、おめえがここにいるんだよ」

次回は、主人公を中心としたお話を書こうと思います

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