ハナミズキに想いを込めて
「僕、恋ってやつをしてるみたい。」と
いきなり真面目な顔をした君が言うから、私は何も言えなくなってしまった。
頬を赤らめながら楽しそうにその《恋》について語る君を見て少しだけ、涙がこぼれそうになる。
本当にその《恋》の相手のことが好きなのだと見ただけでわかってしまう様な顔をして、君はその子の良いところを私に教えてくれる。
「笑顔がとても可愛い」とか「いつも優しいんだよ」とか「少しドジなところもあるけどそこもすきなんだ」だとかは聞きたくなかった。
私だって君にただ好きなのだと、一言だけでもいいから伝えたい。でも臆病な私はそんな勇気が出せなかった。
──失恋してしまえばいいのに。心の中にそんな想いが現れては消える。
私がそんな事を考えているだなんて思いもよらないだろう君は笑いながら「この恋を応援してくれる?」などと聞いてくる。
私は無理矢理、笑顔を作り「勿論、応援するよ。」と頷きながら答えた。
──そういえば、彼は一体誰のことが好きなのだろう?
先程から彼は相手の好きなところは沢山話しているが名前は聞いていなかった。
その疑問を口に出そうとした時、私の返事に嬉しそうに頷いていた彼が急にまた、真剣な表情を浮かべて私の瞳を見つめてきた。
あまりにも見つめてくるので、少しだけ居心地の悪さを感じながらも私も彼の目を見つめ返す。そして、彼は何かを決心したのか口をひらいた。
「ずっと、あなたのことが好きでした。この先の未来でも僕の隣で笑っていてほしいです。」
私は自分の耳を疑った。彼のことが好きすぎるあまり自分の願望が幻聴として聞こえたのかと思ったのだ。
一度、落ち着こうと目を閉じるとまた彼の
「どうか答えがほしいです。」と言う声が聞こえる。先程の告白は本当にあった事だとようやく理解できた。彼は確かに私のことが好きだと言ってくれた。
──ならば、もう自分の気持ちを隠す必要はないのだ。
彼の想いに応える為に私は口をひらいた。