だからといっていつでも使えるわけではない
「……そんな魔法があったなんて……」
言葉に驚きが含まれてるな。まあこっちの世界の魔法の概念とは異なるだろうし、仕方ないと言えば仕方ないが。
「ただ、『全く同じ出力』でないといけない所が、この魔法の難しさだ」
魔法を解除し、今度は青い玉と緑の玉を1つずつ出す。
「それを含めたこの魔法の欠点だが、出力のコントロールが非常に難しい。ちょっとでも出力が異なると累乗魔法にはならず、ただの乗法魔法になる。そうなると魔力を余計に消費することになるし、威力も累乗魔法に比べてかなり落ちる」
そう言いながら2つの玉を混ぜる。直前に出したものよりも形は歪で感じられる出力も、掛け合わせた数を踏まえた上でも、かなり小さい。
「これが通常の乗法魔法。ユウイが撃った魔法よりも弱々しいのが、これだけでもわかるだろ?」
言葉を出さず、軽く頷くことで返事をしている。身長の低さもあり、なんだか小動物に見えるが、言えば話が拗れるだけだろうな。
「ちなみに、さっきやったのは、同じ出力の魔法を4回掛け合わせた四乗魔法だが、これが出来るのは俺の世界では数える程しかいなかった。それにもう1度掛け合わせる『五乗魔法』は、世界では俺1人しか出来ない、と言われてる」
長々と説明をするが、ユウイは嫌な顔ひとつせずに真剣に聞いている。そうだとは思ってはいたが、かなり勤勉な性格みたいだな。
「……私でも、出来るかな……?」
なるほど。そうきたか。だが、
「ハッキリ言うと無理だな。単発の出力が高いと、それだけコントロールが難しくなる。俺の世界だと、二乗魔法が使えるだけで優秀だと言われるくらいだからな」
表情に変化はないが、明らかに残念がっている。中々わかりやすいやつだ。
「俺も五乗魔法が使えるからといって、戦いながらポンポンと出せるわけじゃない。しっかり地に足をつけて、十分な心と時間の余裕がなければ成功しないからな」
出力のコントロールは、それほどまでに難しいんだ、と付け加える。
「……で、確かめた結果、俺は合格なのか?ユウイ=アイスアーデル」