乗法魔法式、その強さのひとかけら
単発でこの威力。恐らく二乗魔法と同等の強さだろう。
しかし、乗法魔法式と比べると、どうしても魔力の消費量は多いな。
となると、考えられる結論はただ1つ。
「どうした?そんな程度の魔法では、俺には傷一つ付けられないぞ」
わかりやすい程の挑発。結論を確信に変えるために、もっと強い魔法を引き出させよう。……そう思っていたのだが、ユウイはあっさりと手を下ろした。
「……そう、みたいね」
「なんだ、もう終わりか?」
これだと情報を引き出せない。もう一度挑発してみるが、これ以上ユウイが俺に向かって魔法を放つことはなかった。
「……身のこなしでわかる……。貴方、私より強い……。避けながら考え事をする余裕があるくらい、私と貴方には差がある……」
どうやら魔法を抜きにして、俺の方が強いと感じ取ったのだろう。そこまでわかるとは、洞察力は非常に良いみたいだな。
「……ただ、どうしても気になる……。……どうしてノアは起動したの……?」
そうなると当然、そこが気になるか。逆の立場だとしたら、俺も真っ先にそれを聞くだろうしな。
「さっきの俺の言葉がヒントだ」
少し悪戯心が芽生えた。感情表現が得意ではなさそうだが、雰囲気がころころ変わる。今まで生きてきた中でこのような相手はいなかったしな。
「……魔法を、複数回使う……?」
やはり洞察力は良い。わかり良いのは嫌いではないが、からかいがいがないな。
「正解だ。正しく言うなら『乗法魔法式』と言うんだが、これは見てもらった方が早いな」
そう言って、指先に魔力を集中させる。アルフに見せようとした魔法と同じものだが、今の状態ではユウイが放った魔法に比べると、その出力は非常に弱々しくも感じる。
「……なにそれ、貴方こそ巫山戯てるの……?」
気にしていたのか、意趣返しのようにユウイが呟いた。「まあ見てろ」とだけ返し、出来た4つの玉を手のひらの中心に寄せ、まとめていく。場所と出力、ノアのこともあり、今回は四乗に抑えておく。
まとまった魔法の玉はその出力をどんどん増していき、大きな塊となった。
「これが乗法魔法式のひとつ、累乗魔法だ」
淡々と説明する横で、ユウイは「信じられない」と呟き、目を見開いている。やはり乗法魔法式は、この世界にはなさそうだ。
「乗法魔法式というのは、簡単に言えば『魔法を掛け合わせる』技術のことだ。その中でも同じ属性の魔法を同じ力だけ掛け合わせるものを『累乗魔法』と言ってな、他の乗法魔法に比べて威力も魔力の消費量の少なさも群を抜いている」
(多分)今日の更新はここまで。
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