表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/58

「最強」であるが故の弊害

「ただいま」

家に着いてドアを開けるが、返事がない。両親が共働きだから当然といえば当然であるが。

父は元騎士団の参謀で、現在は指導官をしていて、母は騎士団直属の病院の婦長。初等教育を終えるまでは良く休みを取って一緒に過ごしていたが、手がかからなくなってからは再び職務に精を出すようになっている。

……仮にも年頃の男子生徒なんだが、と思うことはあるが、そうも言ってられない事情を結果的に作り出したのも俺だからな。

もうすぐ16になる俺が世界最強と言われるようになったのは、およそ1年前からだ。

当時の俺は、魔法使いにとって習得が最も難しいとされる『累乗魔法』を練習している傍らで、父から戦術指南を受けていた。俺が騎士団に入ろうが別の道に進もうが、今の世界情勢から覚えていた方が役立つことも多かろう、という父の考えもあったが、息子と一緒にいる時間を増やしたかった、とも考えていたに違いない。時折見せる参謀としての顔より、息子の成長を願う親の顔をしていたのだから、まず間違いないだろう。息子の俺が言うのもなんだが、子煩悩である。

そんな父の教えもあり、ある程度柔軟な対応が出来るくらいにまで参謀としてのノウハウを受けた後、乗法魔法式で逆の属性の魔法を、全く同じ力で掛け合わせた所、掛け合わされずに消滅することを発見した。これはただの偶然の産物なのだが、これが結果として累乗魔法を習得するきっかけになった。それから半年もしない内に五乗魔法の習得に至ったのだが、この有り得ない習得速度が父の立場を苦しめることになった。

「息子贔屓」

「化け物の親」

「力の独り占め」

父が騎士団内でそう言われるようになったのだ。

それに合わせるように、俺も学園で孤立し、話しかけてくるのは先程のように告白してくるような女子生徒か、気に入らないと喧嘩を吹っかけてくる不良だけである。

幸いなのは、騎士団長も学園長も良識的で、俺や父に度々フォローを入れたり窘めたりはしてくれるが、それが逆効果になることも少なくない。

実際に、父の指導を真面目に聞く団員の数は目に見えるように少なくなっているらしく、俺の方も

「学園長に贔屓されている」と曲解され、嫌がらせを受けることも増えた。五乗魔法を習得しなければ良かった、とは思っていないが、もしまだ習得していなければ、と考えたことはある。俺自身はともかく、父の立場は今よりずっとマシだっただろう。

そんなこともあったのか、父は昔以上に仕事に熱を入れ、懇意にしてくれる団長に報いろうとしているが、中々成果は上がっていないようだ。

幸いなのは、母がそのような問題に合っていないことだろうか。

団直属の看護師や医者は、傷を癒す魔法に長けた者しか所属することが出来ない。こればかりは、訓練して習得することは不可能に近く、元々素質がないといけないからだ。いわゆる、才能ありきの職であるため、息子が五乗魔法を習得したからといって、立場が悪くなるということは無かった。

最近、母の同僚に「貴方が治癒魔法の使い手だったとしたら、2つの意味で修羅場になってるところよ」と言われたことがある。詳しく聞くと、元々人員が足りず、引っ張りだこになるだろうということと、どうも俺は母の職場の同僚たちに人気があるらしく、最悪争奪戦が行われるかもしれない、ということらしい。

少なからず居場所が無くなるということはなさそうだが、別の意味で肩身が狭い。

そんな両親を、俺は尊敬している。1人の子の親としても、自分の仕事に対して真剣な仕事人としても。

「あ、お兄ちゃん、こんにちは」

……普通なら聞こえてくるはずのない、幼さの残る声。なんでお前がいるんだ、近所の子よ。親のことを考えていて、入る家を間違えたか?

「お母さんがね、これをお隣さんに渡して来てって。それでここに来たらね、おばさんに、

『息子がもうすぐ帰ってくるから、家の中で待っててくれる?』って言われたの!」

訪ねようとしたら自分で言ってくれた。まだ初等教育も受けていないような歳なのに、この察しの良さ。前に「人を殺しそうな目」と言われたが、許せる。

「おすそ分けか。助かるよ、ありがとう」

この子は、非常に育ちが良い。お隣さんは幼い頃から俺を知っていることもあって、今になっても昔と変わらず接してくれている。両親が忙しくしているのもあって、こうやって時折おすそ分けしてくれることもある。それでも、そこの子がこうやって家に来るのは初めてのことだ。

「初めてのおつかいか?よく出来てるぞ。アルフは偉いな」

頭を撫でてやる。初対面の時は俺の目に怯えていたが、今ではそんなことはなく、1人の『近所のお兄ちゃん』として見てくれているようだ。頭を撫でてやると、嬉しそうに笑いながら頭を押さえている。

「この後はどうするんだ?」

夕食までまだそこそこ時間はある。用事を済ませたから帰る、と言うのであればそれでもいいし、遊びたいと言うのなら応えてあげよう。そう思っていたのだが、

「あのね、僕、お兄ちゃんの魔法が見てみたい!」

返ってきた言葉は、意外なものだった。

早速読んでいただいた方がいるようで、わかりやすくモチベーションが上がっています。

可能な限り、1日1~3ページ位を目安に書いて行きますので、お付き合いのほど、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ