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第1章 その4

他のDJに言わせると、アタシは「使い勝手のいい存在」みたいだ。

確かに、アタシはロックの中でもこれはダメ!というジャンルがあまりない。パンクを基本としているけど、それ以外にも(ミーハーに)いろいろなジャンルに手を出してきたのが今になって役に立っていた。

アタシはどんなイヴェントに誘われても対応できる。縛りイヴェント(特定のジャンルに選曲を絞って行うイヴェント)も大得意。

その分、「好きにやっていい」と言われると何を回そうか往々にして悩んでしまうのが短所といえば短所。

自分のジャンルに誇りをもって専念してるDJから見れば、アタシみたいなのはどっちつかずの半端者に見えるかもしれない。確かにアタシに突き抜けた特徴はないと思う。そういうDJのことは心から尊敬しているし、マネしたくてもアタシにはとてもできない。

だけど、アタシが絶対に他のDJに負けない…負けたくないもの。選曲よりジャンルよりも一番大事だと思うもの。それは「気持ち」。これだけは譲れない。

DJの中でもロックDJは、単にプレイするだけならとても簡単だ。他のジャンルみたいにループ(曲の同じ部分を繰り返す)もスクラッチ(レコードを擦って独特の音とリズムを出す)も使わないし、必要以上に曲に手を加えない。

曲と曲の繋ぎだって、カット・イン(曲終わりで次の曲に一気に切り替えること)にしてもミックス(前の曲から次の曲に徐々に切り替えること)にしても難しくない。

ロックやポップスは原曲を崩さないことが基本だから、ピッチ(曲のテンポ。ハウスやテクノといったジャンルでは曲の繋ぎを一定にするためにピッチを合わせることが多い)に気を遣う必要もほとんどない。

要は曲をかけて次の曲をスタンバイして適当に繋ぐだけ。クロスフェイダーとヴォリュームをいじくれば、ぶっちゃけ初心者だってロックDJはできる。

「バンドやるより楽だから」という理由でDJになる人もけっこういる。でも、それじゃダメだとアタシは思うのだ。

アタシはDJを始めて以来、毎晩のように守田屋に入り浸っては他のDJのプレイを観察し続けていた。本当にたくさんのDJがいて、みんな特徴がありクセがあって本当に面白く、ずっと観て聴いていても飽きなかった。

そしてそのうち、「DJのまねごとをしてる人」と「本物のDJ」の違いが分かってきた。

彼らは時に同じ曲を回すこともある。ジャンルが同じなら選曲も被りやすいし、その中にはいわゆる「キラー・チューン」と言われる盛り上がりやすい定番曲なんかも含まれている。使う曲に大きな差があるわけじゃない。

それで何が違うかといえば、ちゃんとしたDJは選曲に「物語」があるんだ。

彼らは単に“自分が回したい”という理由だけで選曲をしない。1曲1曲には、ちゃんとその場面で使う意味合いがあり必然性がある。

その上で優れたDJは、フロアのお客さんの反応をうかがいながら即座に次の曲に何を使うか判断している。だから彼らが回せば回すほど場は盛り上がる。

単にDJのまねごとをしている人には、それが分からない。だから自己満足のDJで終わるし、当然盛り上がらない。

たまにウケても、よく見ると周りがみんな酔っ払ってて曲なんか何でもいい状態だったりする。そんなのはDJイヴェントじゃない、ただの飲み会だ。

ちゃんとしたDJは常にお客さんの反応を見ながら、それを自分のプレイしたい物語に重ね合わせている。アタシはそれが「気持ち」であり「愛情」だと思っている。

愛のないDJなんて、愛のないカップルくらい空虚でつまらないもの。そう、アタシはDJに恋してる。

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