グラス転移~召喚されし至高の食器~
グラスすっごーーい。
ここは何処だ?私は春山様の至高の食器。その私が一体どうしてこのような場所に……?
「おお、勇者よ………」
「………」
春山様が毎日のように仰っておられた勇者召喚?と言う物に出くわしたという事ですか?魔方陣の上にポツリと私が佇み、私を囲むように何人もの魔法使い?がおり、その中に一人だけ煌びやかな……ぬ!だが!!私の方が至高の食器!!そのような宝石などに後れは取らぬ!!………オッホン。という事で、私に遥かに劣る底辺も底辺の美しい宝石を纏った中年男が腕を広げて困惑しておるな。
「勇者が居ないぞ……」
「まさか……失敗してしまったのか!?」
「我が王国もお終いだ………」
にしても……私には意識という名の概念は存在してはおらぬはずなのだが……?何故か『私』という名の意識が確かに今は存在する。……これは!?まさか!!召喚の恩恵という事か!?有難い!これで春山様とお話をしながら私をお使いいただける!!………私!!感激!!
「いや、待て!!あそこにグラスがあるぞ!!」
「な、何だって!?食器だと!?」
「勇『者』召喚なのに何故!?」
「落ち着くのだ、まだスキルの恩恵があるかもしれない!!」
「「「「「確かに!!!」」」」」
何やら、私が嬉しさのあまり神に心から感謝している内に、目の前まで中年男が歩いて来ました。
「【スキル鑑定】!!!」
おや?私の目の前に透明なガラスの様な物が現れました。………やんのかごらぁ!?あああ!!??私の方が透明で美しいグラスだぞ!?ガン飛ばしてんじゃねぇぇぇ!!!???……オッホン。少々はしたない真似をお許しを。
さてさて、このガラスに何か書かれていますが、一体なにですかね?
【紳士の魂:魔力神:森羅万象:自動翻訳】
おや、春山様が仰っていた中二病心?とやらが引かれるような言葉が書かれていますね。………さて、このガラスは何時まで私の前に現れるのでしょうか?………粉々のバラバラになりませんかね?
「なんという……スキ───のわ!?」
「ま、まさか……。神より与えられし【スキル鑑定】が破壊された!?」
「なんという魔力!?お、恐ろしい!!」
「勇者だ……正しく!!!勇器グラス様だ!!!」
「「「「「「おおお~~~~~」」」」」」
何やら、私が願った通りに目の前にあったピ────!が粉々になりましたね、いい気味で。やはり、私が至高のグラス。私より上に存在する美しい物はない!!そう!私が!!!最高級グラスなのだ!!ハッハッハ!!
「早く!!王の元へ!!」
「「「「「「っは!!」」」」」」
何をする!!!私に触ろうとするではない!!!!私は春山様だけの至高の食器っっっだ!!!!!
「ぐわあああああ!?」
「こ、これは、最上級魔法【神疾風】!?」
「しかも、私達を吹き飛ばすだけに抑えられた神的な操作力!!」
「何て無駄のない無駄な操作力なんだ!!」
このままでは、いずれ……私があの石鹸で洗われてもいないとされる、細菌・手垢塗れの手で触られる……!?背筋がゾクゾクする!?止めておくれ!!私は至高の食器なのだ!!
『わたしに触れるでない』
「こ、この声は!?一体……!?」
おおお、これが春山様仰られたテレパシー?と言う物か?もしや、あれも出来るのでは?
「ぐ、グラスが!?」
「食器が空を飛んでやがる!?」
「か、神だ!!!」
「ひいいいいいいい!?」
成功です。まさか宙に浮ける事も出来るとは……。これで春山様が必要な時に手元まで行ける事も出来る!!更に!!お飲物が必要な時はテレパシーで二十四時間行動が可能だ!!素晴らしい!!!
……さて、私に触ろうとした無粋な男達のお話を聞いて、今すぐにこの場所から春山様の居場所まで行かなければ!!!
『私は、今すぐに春山様のお元へ行きたいのだ。帰してはくれぬかね?』
「おおお………ゴッド・グラス様……度々の無礼をお許しを……」
『よかろう、許してつかわす』
「ははーーー」
何故か私がゴッドになっておられるが、今はそのような事はどうでもよい。すぐにでも春山様の元へ……!!平伏するこの中年共に早く聞くとしましょう。
『さて、私はどうすれば帰れるのかな?』
「貴方様にはこの世界の魔王を討伐して頂きたい所存です」
『魔王……?魔族を統べるというあの、魔王か?』
「流石はゴッド・グラス様。既に御知りとは……」
魔王……。春山様のが仰られた異世界定番ラスボス?と、言う物で御座いますね。このパターンでは……。
『では、私が魔王とやらを討伐すれば………という事かね?』
「ははーーー。その通りでございます!!」
『ふむ』
春山様の言葉を思い出す限り。このまま、修行パート?とやらを行いながら旅を進め。次第に王国騎士団長と何処かの隠者の魔女、さらには教会の聖女?という名の者を仲間にして、激戦の末、魔王討伐……という事でしたね……。
待てるかぁぁぁぁぁ!!!一体何年この世界に居れというのかね!?舐めているのか!?ふざけんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!!!この世界を吹き飛ばすぞ!?ああああ!!!??………オッホン、失礼しました。という事なので、待つなど却下の選択肢しかありません。
『論外。私を舐めているのか?』
「ひ!?っひぃぃぃ!?そ、そのような事は御座いません!!」
「こ、殺される……」
「司祭様!!ゴッド・グラス様を怒らせるなど!!アホか!!」
「「「「そーだ、そーだ!!」」」」
「黙らんかい!!……………お見苦しい所をお許しおおぉぉぉぉ……」
これは困りましたね。本当に魔王!討伐の旅!!というコーナが数年まで続くように長々と旅をさせられます……。いや?……この名案なら……。
『………一つ問おう』
「っは!!以下な質問でもお答え致します!!」
『魔王とやらの居場所の方向は……分かるのか?』
「ま、魔王の居場所……ですか?」
『ああ』
どこら辺にお住まいか分れば……そのまま直行出来るのですが……。
「あちらの……北方向にある魔族が住む大陸。デーモン・アースで御座います!!」
『そうか』
「ゴッド・グラス様!?」
中年男が部屋の外を示し、その方向から見える窓ガラ……っか!?きたねぇ!!底辺もいいところもんよ!!……オッホン、失礼いたしました。あまりの汚さに吐き気が出たもので。
私は、平伏している中年男達の横を通り抜けて、そのまま廊下に出て。窓ガラスを私が浮く応用でどうにか開く。
「一体何を……」
『これでどうだ?』
私は、春山様が仰られたエターナルフォースブリザード?やらをデーモン・アースの大陸目掛けて思い描き、解き放った。
「何だ!?この膨大かつ、複雑な魔方陣は!?」
「あああ………デーモン・アースの方向の上空が真っ白に………」
私がエターナルフォースブリザードを使用した後、少しの間を置いてから、デーモン・アースが氷漬けになったのが目視?出来た。
「まさか……神級魔法【絶対零度】………」
「ま、魔王が……」
「や、やったぞ!!これで!!世界は平和だ!!」
「「「やったあああああ!!!」」」
ふむ、これで魔王とやらは抹殺完了ですかね。……おや?私の足元が……光っている?
「あああ……ゴッド・グラス様がお帰りになられるぞ!!」
「ありがとうございます!!ゴッド・グラス様!!」
「「「「「ゴッド・グラス様ばんざーーーい!!!」」」」」
『では、さらば────』
これで、愛しき春山様の元へ─────。
「なぁ。勇者殿はまだか?」
「来ませんね………」
「私は胸のドキドキが……」
「魔王が!!討伐されました!!」
「「「え?」」」
〉〉〉〉
ここは……。
「おお!探した探した!!マイグラス!!」
お、おお……春山様……。おや、私の意識が……。
「これがなきゃワインが美味くないからなぁ……」
そうなのですか……。私の意識も……お終いなのですね。
「さて!!何故かこの二時間程見つからなかったが……飲むか!!」
ああ……。例え意識がなくとも……。私は、私は……。貴方様に出会え、使われて嬉しい御座います……。私の、愛しき────
『春山様……』
「ん?何か聞こえた気が……お前が俺を探してたのか?っはっはっは!グラスが喋る訳ないか。ほんじゃ!いだきます!!!」
お読みいただきありがとうございました!!