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ドリアンとなっちゃん

作者: 幻想売りの十夢

「なっちゃん、遠いところまでよく来たねぇ」

おばあちゃんが言いました

なっちゃんは夏休みに一人でおばあちゃんの家に遊びにきました

「怖かったたろう?ほら早く中にお入り」

空は真っ暗、雷の轟音が響き渡り、強い雨と風がトタンの屋根に叩きつけられています

ずぶ濡れのなっちゃんは暗く狭い土間に座り、体をタオルで拭います

家の中はジメジメ、吹き抜ける風が生ぬるい

「さぞかし疲れたろう?」

「うん、疲れた」

「まぁまぁこれでもおあがり」

おばあちゃんは黄色い凸凹した物をまな板に乗せて持ってきました。

「これは何?」

「おや?ドリアンは初めてかい?」

おばあちゃんは包丁でドリアンを切り分けました

くっさ〜!強烈な臭いがあたりに広がります

「食べてごらん」

なっちゃんは恐る恐る一口食べました

!!

ヌルッとした食感!腐ったタマネギのような、ガス漏れした部屋で真夏に数日放置され、糸を引いた生ゴミを鼻にねじ込まれたような臭い!

「お酒と一緒に食べると死ぬらしいよ」

おばあちゃんは悪魔の形相で言いました

「ドリアン、見たくもない」

なっちゃんはドリアンが大嫌いになりました



「おかえり、なっちゃん。おばあちゃんの家はどうだった?」

駅までお母さんが車で迎えにきました

「あんまり楽しくなかった。おばあちゃんちで食べたドリ…ドリア…あれっ?なんだっけ?名前忘れちゃった。家に帰ったら絵に描いてあげる。絶対食べさせないでね」

なっちゃんは家に帰ると早速絵を描き始めました

ところが描こうにも鉛筆を持つ手が震えて描けません

思い出すだけで身の毛がよだち、体中がガタガタ震えます

「ダメだ!どうしても描けない」

なっちゃんは悔しくて泣きました

わんわん泣きました

「そんなに泣かないで。これでも食べて元気を出してね」

お母さんは台所から星型の物をまな板に乗せて持ってきました

「それは何?」

「これはスターフルーツってゆうの。とっても美味しいわよ。あっ、スプーンがないわね」

お母さんはスプーンを取りに行きました

なっちゃんは言いました

「私、いらない。怪しげなものは食べない。たとえ親であろうと信用しない」

「あらっ、親ですら信用しないだなんて。なっちゃん、すっかりヒネて疑心暗鬼になっちゃって。少し見ない間に大人になったわね」

ちょっぴり大人に近づいたなっちゃんの夏でした


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