工藤桜子 慟哭
「「北斗センセー1時間寝かせてー」
最近桜子が保健室を利用するようになった。寝てはダルそうに帰っていく。
「どうしたんでしょう工藤さん。あんなに元気だったのに」
「どうもこうも卒業式ですよ、3年生が卒業しますからね。工藤は彼と離れますから。
本人も付き合うときから分かっていたことでしょうに」
淡々と誠史郎が話す。
「保健室登校も視野に入っていた子だっただけにバランスが気になります」
心配そうに北斗が言う。
「別れるわけではないですからね。ただ向こうの環境が変わりますのでどうなることか・・・」
ある日桜子のベットの脇に立ち誠史郎が言う。
「学校の出待ちをしない」
「彼女と公言してもらう」
「一日、決めた時間にだけ連絡を取る」
ガバッとベットから飛び出した桜子に、
「彼女と公言してもらえないなら彼と別れなさい」
「1年弱交際してきたんだろう?彼が公言できないのなら別れなさい」
突き放すように誠史郎は桜子に言い聞かせる。
桜子は誠史郎の白衣をつかみ、
「あたしさあ、かわいいよね?」
「よく笑うし」
「胸だって大きいし」
「一緒にいて楽しいよね」
「きっと一緒に・・」
うわああああああぁぁぁぁぁ
桜子が保健室中にひびく声で泣き出した。
誠史郎はは桜子の頭をポンポンと叩いていた。
これは北斗にも頼んでおいた事だった。
桜子が泣き出したらそのまま大声で泣かせるようにと。
無理に溜め込ませると大人になったときに上手く感情の表現ができなくなる。
声がかれるまで桜子は泣いた。
「う・・うぅ・・」
ずいぶん時間が経っただろう。
「さ、もう大丈夫。落ち着いて帰りなさい」
桜子の背中をさすりながら誠史郎が諭す。
目を赤くしたまま桜子は帰っていった。
・・・・・・
翌日桜子は元気よく保健室に来て、
「う~卒業式の予行練習なんてめんどくさいよ~」
言ってる割には本人はかなり機嫌がいい。
「面倒ならここで寝てればいいのに」
「桜井先生!!」
また誠史郎は北斗から怒られた。
「だめです~大事な先輩の晴れ姿を見送るの~」
そういうとまた元気よく出て行った。
「桜井さん。落ち着きましたね」
「もうサボりには来ませんよ。たぶんね」
「きっと安心できる何かを手に入れられたんでしょう」
「大好きな大好きな先輩からね」