転生の魔女とその代償
「彼女を生き返らせたいんだね?」
黒い衣装を身に纏い、冷たい視線でこちらを見下す。
この女性は魔女だ。
何もないこの空間で、思考はひとつだけしか定まっていない。
「彼女を生き返してほしい。お願いだ。」
「それは出来ないわ。」
強い頼みを軽く返答する魔女。
「人の命は軽くはない。お前が生きてきた17年間と彼女が歩んで来た17年間では重みが違う。」
重み。特に何もない17年間だった。勉強も運動でも特に頑張ってはいない。どちらかといえば、楽な方へ、楽な方へ生きてきた。
「・・一つじゃなかったら?」
「・・何を?かけれるのはお前自身のみ。それでは足りない、そう言っただろ?」
もしかして、と魔女はとあることに気が付いた。冷静だった、表情に曇りが見える。
こんなことは誰もやらなかった、思いつきもしなかった。やるとしても愚か者しかいない。
「俺の、これからの転生分の命をかけるよ。」
「馬鹿な・・、人は死んだとき魂はそれまでの記憶をリセットし、次に転生される。それをすると、リセットされた後、転生はされず、何年かはわからない、十年、百年もの間、暗闇を一人彷徨うことになるぞ。」
「それでも・・あいつを救えるなら、この命くれてやるよ。」
「・・・・いいだろ。お前の魂消滅が先か・・転生が先か・・見物させてもらおう。」
その数百年後・・同じ年、同じ考えを持った少年がこの魔女に会うのはまだ先の話である。