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母と梅干し

作者: おくひろゆきむら

「お返しに、これ、持って行ってくれる?」


ある朝、母は風呂敷に包んだものを届けてくれた。

中身を聞くと、自家製の梅干しだった。

およそ1㎏ぐらいはあろうか。

届けるには少々弱そうな容器に思えたので、ジップロックの容器に移し替えた。

そして、冷蔵庫に保管して、しばらくたった今朝のことだ。


「梅干しは届けてくれたの?」

母の、当然の質問に、いや、まだ、と応える。

今週末に、ちょうどその予定をしているところだった。

しかし、物理的な予定が立たないことの他に、実はもう1つ、気後れする理由があった。

それは、先方には梅干しが苦手な方がいるという情報を得たからだった。

その家族全員であるなら諦めもつくのだが、半数はかなり好んで食することを確認していたから、少し二の足を踏んでいるところだった。


母が丹精こめてこしらえた梅干しを是非とも食べてもらいたいと思っていた矢先だった。

母から託されてから一週間ほど経過していたから、母も流石に不審に感じているように思えたので、正直に伝えることにした。


「それがね…梅干しが苦手らしくて。本人は大好きらしいねんけど」


そう口にして、恐る恐る母の方へ目をやる。

もしかすると気を悪くしているのかも知れないからだった。

しかし、母から出た言葉に、衝撃を受ける。


「私も苦手なんよね」


まさかの応えだった。


「酸っぱいのって、ホンマに苦手で…健康のために、と思って食べてるんよー」


てっきり、好きだからと思っていた。

だから、毎年、10㎏以上の梅を購入し、梅干しをつくっていると思い込んでいた。

しかし、そうではなかった。


健康のためとは言え、自分の食べる為だけに作るには多すぎる量であることは明白だ。


きっと、母は、周りの、世話になっている人たちへ贈るために、その殆どを作っている。


そんな母が、自分の誇りだ。

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