一瞬
「またそんな冗談を…」
お酒を一気に飲み干し追加注文した来宮
その様子をみて流石だなと笑う神崎さん
「俺もずっと彼女いないからさ、付き合うのが面倒に感じてしまっているからダメなんだろうな」
「神崎さんモテるから疲れちゃうんじゃないですか」
「だから言うほどモテないから」
「言っときますけど私の友達来店した時神崎さんみて紹介して!って言われたんですからね」
「ほんとか?」
「それに他の部署に人にも色々聞かれるんですからね」
「来宮が聞かれやすいだけなんじゃないのか?」
「そんなバカな!!」
そんなお互いの恋愛トークに花咲かせながらお肉を食べると
自然と酒は進むもので
「来宮、大丈夫かそんなに飲んで」
「大丈夫です私強いんで!」
酔うと笑ったり急に冷静になったりする来宮
その様子をほほえましく眺める神崎さん
いつも飲み会でも一切取り乱さない神崎さんは恐らく酒が強いのだろう
「わたし…」
そういうと一気にガクンとなる来宮
「大丈夫か?」
「……」
「おい、来宮…寝たのか?」
来宮の生存を確認するべく席を立ち
顔を覗き込み神崎
「私、誰かに愛されたことなく、て…いっつも自分が大好きな人には振られてばっかり」
「だから…告白された人と付き合ってみたりしたのか」
「はい、でも…絶対うまくいかないんです」
私の事を好きって言ってくれる人はいない
大体が体目当てで女であればいいみたいな
性格なんて知らない顔がまあ良ければ妥協点
一緒にいてやってもいいかなっていう感覚
私はそこまでにしか結局なれない
「なんで、だろうな」
「お前は悪くないよ」
「いけない子なんです、私」
そうだ、だから神様が罰を与えてるんだ
私が幸せになるにはまだまだ早いって
私たちの未来のことは聞けなくて
いつも茶化されて誤魔化されてて
でもきっと私を愛してくれてるって信じてた
「来宮」
名前を呼ばれ神崎さんの方を見ると
一瞬だけ
唇が触れた
それは一瞬の出来事
周りの人は気づかない
酔っぱらいを介抱してるくらいにしか見えないだろう
でも、確かに神崎さんの唇が優しく触れた