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鉄の地球  作者: leben
第1章 始まりの章
2/6

第1話 〜彼の名は大島 大八〜

なんか開幕からいろいろとアレですが気にしないでください。

ズシン・・・ ズシン・・・



昔ながらの下町の雰囲気が残る商店街に突然響き始めた地ひびき。商店街にいる誰もがみな、その地ひびきを起こしている『人』に視線を向けていた。


2メートルはゆうに超える巨体、ガッシリとした筋肉質な身体、強靭な脚、角張った大きな顔、一般人とはとても言えないような身体を持った、スーツを着た男が商店街をゆっくりと歩いていた。


好奇、恐怖、不安。様々な感情を持った人々が彼に視線を向ける。彼にはそんな感情が入り混じった視線が刺さるのを確かに感じていた。


だが、彼がそれを気にしている様子は一切見られなかった。周りにいる人々に視線を向けることなく、ただ真っ直ぐ、ゆっくりと確実に進んでいる。


ふと、彼が一人の年を取った白髪の女性に目を向けた。老婆も彼を見ていたのか、視線が合った。彼は老婆を上から見下ろす。老婆は彼を下から見上げる。老婆から見える彼は恐怖そのものであった。老婆は腰を抜かしたのか、ヘタリと地面に座り込んでいる。すると彼は中腰になって老婆の視線に合わせた。そして、重い口を開き、低い声で彼女に言った。



「自分、道を確認したいのですがよろしいでしょうか?」



老婆は恐怖で声が出ないのか、ただ首を縦に振って彼に意志を伝えた。



「『対機人隊第8支部』の場所はこの商店街を抜けた先でよろしいのですよね?」



彼女はやはり声を出さずに、大きく首を縦に振った。



「ありがとうございます、助かりました」



彼は立ち上がり、老婆に頭を下げる。そして、いつの間にか周りに集まっていた商店街の人々の間をくぐり抜け、商店街の出口へと向かっていった。









「ここ、か」



巨大な彼の目の前にそびえ立つ、さらに巨大な塔がそこにはあった。鋼鉄の外壁、無数の迎撃兵器に囲まれた巨大な鋼の塔が、そこにはあった。入り口にある『第8支部対機人隊入隊試験会場』と書かれた白く大きな看板に彼は目を向ける。彼は息を大きく吸い、塔の中へと入っていこうとすると、入り口から何者かが走ってきた。巨大な彼の存在に気づいてなかったのか、速度を保ったまま衝突し、ぶつかった方は尻もちをついた。巨大な彼は何も無かったかのように中腰になって、ぶつかってきた者に視線を合わせる。



「だ、大丈夫ですか?」


「いや、悪いのは俺だよ?俺が前を見てなかったばっかりに・・・」



ぶつかってきた男は巨大な彼を見て驚いたのか、喋っている途中に立ち上がり、何も言わずに塔の中へと逃げるように走り去っていった。


彼には友人と呼べる人が誰一人としていない。彼の巨体を見たときに誰もが怯え、近づく事を、話す事を、関わる事をやめてしまう。それゆえにほとんど他人と会話をした事も、他人と遊んだりした事も無い。


巨大な彼はため息をつき、ゆっくりと立ち上がる。そして、塔の中へと向かうために歩き始めようとした。



「ちょっと、ただでさえデカイんだからそんなところで止まってないでよ」



彼の後ろから声が聞こえてきた。振り返るも誰もいない。気のせいかと思い、再び中へと向かおうとする。



「なに無視してんのよ。私はここにいるでしょ!このデカブツ!」



再び後ろから声が聞こえてきた。振り返るもやはり誰もいない。今度は視線を下に向けてみる。


するとそこには、赤い髪を持つショートヘアの背の低い少女が立っていた。ボロボロになったワンピースのみを身にまとった彼女は、細い脚で彼の足を踏みつけた。



「ボーッと突っ立ってないでさっさと行きなさいよ!デカブツ!」


「・・・自分の名前は『デカブツ』ではありません。自分にはしっかりとした名前があります」


「うるさいわね!アンタなんか『デカブツ』で十分よ!デカブツ!」



小さな彼女は執拗に脚を踏みつける。だが、大きな彼には何一つ効果が無い。そうとも知らずに彼女は何度も脚を踏みつける。



「あなたも、自分と同じようにこの塔に入隊試験を受けにきたのでしょう?」


「そうよ、こんな文字通りの小娘が入隊試験受けて悪い、って言うの!?」



小さな彼女は顔を上げ、大きな彼を鋭く睨みつける。彼女から見える大きな彼はどんな風に見えるのか。彼から見える小さな彼女はどんな風に見えるのか。



「私だって戦える!このままあの動く鉄の塊にやられっぱなしなのはもう嫌なのよ!あいつらを一機残さず壊す!これが私のやるべき事なのよ!!私の!私のやるべき事なのよ!」



声を荒げ、大声で怒鳴りつけるように彼に言った。彼もまた、口を開いた。



「・・・自分は、あなたを素晴らしいと思います」


「出会ったばっかりのアンタにそんな事言われても嬉しくないわよ」


「・・・自分には、あなたがどんな人生を歩んできたのかは分かりませんが、あなたの覚悟からその必死な表情で伝わってきます」



大きな彼は小さな彼女の目をじっと見つめながら、彼女の小さな肩を掴む。急に肩を掴まれた小さな彼女はビクリと肩を震わせた。



「・・・入隊試験、合格する事を祈っています」


「・・・ありがとう、デカブツ」



大きな彼は彼女の肩から手を離し、立ち上がる。小さな彼女もまた、踏みつけていた小さな脚を彼の大きな脚から離す。



「・・・小梅。私の名前は『小林こばやし 小梅こうめ』。それだけ覚えておいて」



小さな彼女が小さくつぶやく。それを聞いた大きな彼は振り向き、彼女に大きく叫んだ。



「自分は大八!『大島おおしま 大八だいはち』と申します!」



彼は嬉しかったのだ。第一声が悪口で、さらに自分の規格外の身体を見て驚きはしたものの、恐れず臆する事無く話しかけてきた事が何よりも嬉しかったのだ。誰ともマトモに会話を交わした事が無かった彼は、話しかけてきた事、というのが何よりも嬉しかったのだ。


小さな彼女は大きな彼の大きな声に驚きながらも、大きな彼に近づき、手を差し出す。



「改めて、入隊試験に合格する事を祈っていますよ、小梅さん」


「ありがとう、大八」



大きな彼、大島 大八と小さな彼女、小林 小梅は握手を交わした。大きな彼の大きな手が小さな彼女の小さな手を包み込んでしまっているので握手と言えるかと言われたらなんとも言えないが。



「さ、いきましょうか」


「えぇ、いきましょう」



対照的な二人は同じ目標を目指すため、塔の中へと二人で入っていった。

出来る限り週一で投稿するように頑張ります。

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