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ファンタジー・イノベーション  作者: 紫桜
第一章 傍迷惑な魔法使い
6/6

第五話 未来が変わった記憶

第四話の内容が改変されました。

中編だったのを無理やり後編にしたので一度読んだ人は一つ前に戻って読み直してくれると幸いです。

改変の連続をしてしまって本当に申し訳なく思います。

 私は白い空間にいた


 この白い空間が何か私は知っている


 私が寝ている時にたまに見るあの日の記憶


 私の見ていた世界が根本的に変わった日の記憶

 

 最近見なかったのに今になってどうしてこの夢を見るのか


 きっと彼女を見たからだろう


 髪も目も、そして制服も黒い彼女を


 あの人と同じ色の彼女を


 あの人と同じ強さを持つ彼女を


 そして微かに残る意識の中で見たもの


 あの人がいつも持ち歩いていた刀だ


 夜のような暗さと月のような明るさを持つ刀


 《月光》


 ああ、彼女が


 もしかしたら彼女が


 私の世界を変えてくれた彼なのだろう

 

 この夢が終わったら聞いてみよう


 もし彼女が本当に彼なら私は……










  † † †


 私が初めて彼、桜田一式という人物を知ったのは自分の部屋のベットの上。

 私は昔から身体が弱く、魔力の状態が時おり不安定になる時があった。

 魔力は魔法や魔法道具マジックアイテムを使ったりするだけでなく、魔力自体がその人の精神に依存しているので少なくなれば貧血と似た症状が現れるが、不安定になっていると最悪の場合死につながる恐れがある。

 私はそんな状態に何度もなりながら、ずっとこの部屋に籠もっていた。

 最後に外の世界に足を踏み入れたのはいったい何時のことだっただろう。

 子供の頃のことはよく覚えていない。

 もしかしたら私は一度も外の世界を見たことが無いのかもしれない。

 そんな私の日課は窓外の景色を眺めたりして外の世界のことを考えること。


「今日も天気がいい……」


 ベットに寝た状態から少し起きあがり、窓から見える世界を楽しむ。

 毎日窓から見える景色とその先にある世界を想像して楽しんでいた。

 そして、私が生まれてから十三年目になる三ヶ月ほど前に彼女はやってきた。


「……そんなに窓ばかり見て楽しいのですか?」


 どこからか声が聞こえた。

 この屋敷には数人の使用人と私しか暮らしていない。

 聞こえた声は使用人の声のどれにも当てはまらなかった。

 お客様だろうか。

 そう思ってこの部屋の扉に顔を向けるが誰もいない。

 空耳か風の精霊が私に囁いたのかは分からない。

 もし後者なら会ってみたいと思った。

 精霊は物語にしか登場しない架空上の生き物なのだから。

 

「こっちよ、こっち」


 今度は窓の方から声がした。

 振り向くとそこには小柄な少女が窓枠に腰掛けてこちらを見ていた。


「……精霊さん、ですか?」


 彼女に話しかけた最初の言葉がこれだ。

 小柄で人形のような顔立ち、短い黒のショートヘアで初めて見る水色の花の様な布の服を着ていた。


「なんで私が精霊ってことになるのよ……」


 どうやら彼女は精霊でなく人間のようだ。

 獣人みたいな耳や尻尾もないし、魔人みたいな禍々しい魔力を感じない。

 それでも初めて見るタイプの魔力だ。

 だから私は精霊なのかと思ったのだが違うみたいだ。

 でもどうしてここにいるのだろう?

 ここにいるってことは使用人が通したってことだし、新しい治癒術師なのかな?


「ふ~ん、魔力バランスが酷いわね。もってあと三ヶ月っていったところかな~」


 彼女の言葉から聞き捨てならない言葉が聞こえた。

 もってあと三ヶ月。

 それって私が生きていられる期間を指しているのだろうか?


「貴女が思っている通りよ。貴女はあと三ヶ月以内に死ぬ」


 彼女の言葉を聞いて私の頭が理解するよりも先に身体の震えが止まらなかった。

 そして理解した時、それが恐怖なのだと知った。

 その日が来るのはまだ当分先のことだろうと思っていたからだ。

 死に対する恐怖。


「し、死にたくなぃ……」


 私の目には水の塊が溢れていた。

 そしてこれは悲しみなのだと知った。

 その日があと三ヶ月もしないで訪れると分かったからだ。

 長く生きられないという悲しみ。

 

 そして私は泣いていた。

 恐怖と悲しみ。

 どちらも十三年生きて初めて知った。


「もし、まだ貴女に生きるチャンスがあるなら試してみたいと思わない?」


 彼女の言葉に涙が止まった。

 生きるチャンスがある。

 それを聞いただけで心に何かが芽生えた。

 

「この病気を治せるんですか!?」 


 私に芽生えたのは希望。

 最後の道、最後の可能性。

 

「えぇ、治せるわ。その代わり私が提示するの条件を呑めたらの話よ。私としては出来れば呑んで欲しいわ、貴女を死なすわけにはいかないの。その代わり、貴女にはこれから多くの不幸や難関が待っているわ。今更言うのも可笑しいけど、このままの方が死んで楽になった方が幸せかもしれない。貴女は新しい世界のために自分の人生を棒に振る、その覚悟がありますか?」



 最後の言葉の意味は分からない。

 でも条件が呑めれば私は生きていけることは分かった。


「どんな条件でもいい、私の病気を治してくれるなら何でもします。お願いします!!」


 ベットに寝た状態だけど頭を深く下げる。

 生きて外の世界が見れるなら何でもする。

 そんな気持ちで頭を下げた。

 それは願い。

 自分や誰かの為に祈りを捧げること。


その言葉をいただくわ・・・・・・・・・・。これであなたは、その言葉を覆す行いをしたら死ぬことになるから気をつけてね」


 彼女はそう言うと、懐から青い小さな珠を取り出して私の目の前まで持ってきた。


「この珠を飲みなさい。それで貴女の病は治るわ」

「この玉を……」


 私はそれを手に取って見た。

 青く透き通る様な色をしていた。

 自分の瞳と同じ色の珠。

 私は一気に珠を飲み込んだ。

 水無で飲むのは苦しかったが、なんとか飲むことが出来た。

 でも自分の手や足、胸など見える範囲を見渡したが、これといって変化はなかった。

 

 私は少し不安だった。

 こんなんで長年苦しみ続けた病気が治ったのかと。


「あ、あの……」

「大丈夫、これで貴女はもう苦しまなくて済むわ」


 彼女はそう言い、魔法を使ってみましょうと言ってきた。

 魔法。

 昔から使って見たいと思い、出来なかった物の一つだ。

 そして思い浮かべた。

 お母様が昔、私の前で見せてくれたあの魔法。

 そしてお母様の真似をして魔法を使い、この病気にかかってしまった時の魔法。

 青くて綺麗で先ほどの珠みたいに透き通っている魔法。

 確か魔法は……


「《魔法玉マジックボール》……」


 そうつぶやくと、私の手のひらから一個の玉が出現した。

 お母様が使った魔法には劣るが、今の自分ではこれ以上の輝きは無いと思えるぐらい綺麗な魔法だった。


「その魔法は本来、杖無しじゃ作るのも操るのも困難な魔法と言われてる。それでも出来てしまうなんて貴女達・・・は本当に優秀ね」

「これが、私の魔法……」


 魔法を使った後も苦しくない。

 それはつまり病気が治ったという事だ。 

 私は嬉しさのあまり、目から涙が流れ出ているのにも気づいていないほど心の中で喜んだ。

 それと同じくらいに彼女に感謝した。


「本当に、ありがとぅ、ござぃますう。私に生きる道を選ばせてくれて……」


 涙お流しながら私は何度もお礼を言った。

 

「お礼は私に言うことじゃ無いわ。貴女に与えた珠を手に入れた人に言わないと」

「……その人は誰なんですか?教えてください、私その人にもお礼が言いたいんです」


 私は彼女にそう言った。

 彼女はクスッっと笑い、その人のことを教えてくれた。

 

「貴女がこれから通うことになる学園の生徒よ。名前は桜田一式、ここフォルティナ王国にある魔装学園最強の人物よ」

「桜田、一式……」


 私のそのつぶやきに、彼女は笑みを浮かべながらこう言った。


「貴女のお父様にはすぐにここに来るように言ってあるから、もうじき来るでしょう。その時に貴女の病気が治った事とこの手紙を渡しなさい。貴女の病気を治した条件は次に会った時に話をするわ。それじゃあまたね」


 そう言って彼女は去っていった。


「お名前聞きそびれてしまいました……」


 その後すぐにお父様が駆けつけて来た。

 お父様に先ほどまでのことを話し、魔法を使って見せ、手紙を渡した。


「お父様。私、魔装学園に行ってみたいです」


 初めてお父様に我が儘を言った。

 手紙を読んだお父様は、その我が儘を許してくれた。



 そして私は魔装学園中等部に編入し、一年で魔法の勉強をした私は次の年にあの人と同じ高等科への飛び級が決定した。



 これは私の、アイシア・F・アルウェンの未来が変わった時の記憶である。








  

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