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ファンタジー・イノベーション  作者: 紫桜
第一章 傍迷惑な魔法使い
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第三話 ラビュリントス攻略 前編

 ダンジョンカードによって転移された場所は畳、四畳ぐらいの小さな部屋だった。

 部屋の周りには魔法マジックライトという魔法道具がいくつかある。

 魔法マジックライトはその名の通り明かりが灯り、ダンジョンなどの暗い部屋を明るくするもので、それのおかげで暗い部屋が明るく照らされていた。


 天井は結構低く桜の頭から約二十センチぐらいの高さしかなかった。

 これだと、剣や刀を上に持ち上げただけで簡単に当たってしまう。


「私が前に出る。トラップを発見したら教えてくれ」


 キールが自分の剣と盾を持ち部屋の扉を開ける。

 扉の奥にはこの部屋より横幅が広い通路につながっている。

 そしてここにも通路の壁に魔法マジックライトが壁に等間隔で設置してあった。


「これなら剣を振り回しても大丈夫そうだな」

罠探知トラップサーチ。左側にあるトラップは私が調べますから、右側はサクラさんお願いします」


 罠探知トラップサーチは一定時間術者が、隠れたトラップを感じ取ることができる魔法である。

 発動時間は術者の魔力が高ければ高いほど長い間使い続けることができるため、魔力量が高い俺やアイシアはこのダンジョンが終わるまでは切れることは無いだろう。

 その代わり罠探知トラップサーチはあまり広範囲を探せないため、こうして二人で分担して探す必要があるのである。


「は、はい!罠探知トラップサーチ


 罠探知トラップサーチの魔法を発動し、アイシアに頼まれた通路の右側を重点的に調べる。

 だが俺はここに来てからある違和感を覚えていた。

 このダンジョンは桜田一式だった時に攻略したことのあるダンジョンで、その時来た時はもっと天井が高かったと記憶している。

 通路も前来た時と違っている。

 どうしてだろうか……?


 通路には前列にキールとニールが横に並び、その後ろに俺とアイシアがトラップを調べながら歩いている。

 迷路のように複雑に道が入り組んでいて、何度か真っ直ぐ進んだり、角を曲がったりした。


 進んでいると次の道は二手に分かれていた。

 右側を調べていた俺は、右の道の先にトラップらしき物を感じ取れた。


「この先左に曲がったところにトラップがあるみたいです。どうします?右に行きますか?それとも解除して進みますか?」


 アイシアは反対側のトラップの存在を探知したようだ。

 しかし、右の道にもトラップがあるのでどちらの道に行ってもトラップを対処する必要がある。


「あ、あの!右の道にもトラップが……」

「え!両方の道にあるの!」


 俺の一言に驚いたアイシア。

 キールもニーナもアイシアの声に反応して後ろを振り返る。


「どうする、どちら選んでも一緒なら右でいいか?」

「どうして右なのお姉ちゃん?」

「…………感だ」


 キールの方が姉なのかと今はどうでもいいことを思った。


「……どちらに行っても同じならキールの感を頼りに、とりあえず右を調べて行けなさそうだったら左に行ってみましょう」


 リーダーであるアイシアの判断で右の道を進む。

 だが、一番後ろにいた俺が右の道に入った瞬間に……。



 ガタン



 通路が閉ざされてしまった。


「え!?」


 最初に驚いて振り返ったのは俺、次にアイシア、ニール、キールと来た道が閉ざされたことに気づき振り返る。


「どうして!?」


 事態はまだ終わらない。

 俺たちがいる直進の通路、その数メートル先も堅い扉で塞がれてしまっている。

 そして四人ほどの幅しかなかった道も左右にいきなり拡張し、天井も高く上がり始めた。

 その結果、閉じ込められた通路が広い部屋に変わった。


「こ、これは?」


 驚いてるも束の間、突然部屋が地震のように揺れ始める。


「今度は何だ!」


 俺は知っている、こういうとき起こる王道なパターンがあることを。

 一つは大量の水が入ってくる水責め。

 そしてもう一つは……。


「来る!!」


 守護者モンスターが現れることだ。


「何あれ!」


 高く上がった天井から何かの固まりが降ってくる。

 その固まりは地面に着地すると〝ぶよん〟と柔らかそうな体がうごめき、ニヤリと不気味な笑みを浮かべていた。

 その物体は象が五匹合わるったぐらいの大きさで、全身緑色のぷよぷよで出来た巨大スライムだった。


「何だあのビックスライムは!このダンジョンは中型ゴーレムしか出ないんじゃないのか!?」


 キールはこの事態に驚いて声を張り上げ、ニールも突然の巨大スライム登場に唖然としている。


「何でビックスライムが迷宮ラビュリントスに……!」


 スライムは難易度I~IIIぐらいのダンジョンで出現する。

 しかもこのビックスライムは難易度III指定のスライム王国というダンジョンのラスボスである。

 以前来たときはこんなトラップは無かった。


「いきなり出て来たのには驚いたが緒戦はスライム、私たちの敵ではない」


 キールは前に盾を構え、ビックスライムに向かって走り出す。

 ビックスライムはキールが近づいてきたことに反応し、自分の体の一部を触手のように変えて一直線にキールに伸びていく。

 キールはその攻撃を盾で防ぎ受け止め、その隙にニールが横からスライムの触手を持っている短剣で切りつける。

 その間にアイシアは魔法を発動しようとしていた。


「援護します。魔法玉マジックボール!」


 アイシアは杖を上にかざし、サッカーボールサイズの魔法玉マジックボールを六つ形成する。

 これは自身の魔力を球型に実体化し、相手にぶつけることでダメージを与えることが出来る魔法だ。

 その他にも、実体化させた魔力を途中から術式を加えることで違う魔法に変換させることが出来るのだ。

 例えば球体に炎の術式を込めれば実体化させた分だけの威力の炎をだすことが出来る。

 他にも防御の術式を込めればその魔力の分だけの強度が出る魔法の壁が出現する。

 その代わり魔法玉マッジックボールは自分の魔力を具現化して操作しなければならない、他にも具現化する魔力の量や常に具現化を維持する精神力が要求される魔法だ。

 それを六つ出せるほどの魔力とコントロールが出来る魔法使いはそうはいない。

 この子本当に十三歳か?と思うほどである。


「おっと、見てる場合じゃなかった。援護しなきゃ」


 よそ見は禁物。

 両手を前に突きだし、彼女たちに支援魔法を唱える。


防御強化ディフェンスブースト攻撃強化パワーブースト魔法強化マジックブースト!」


 次々と出された支援魔法がキール、ニール、アイシアに向かって包まれる。

 強化された攻撃力でニールとキールはビックスライムの体を剣で刻んでいく。

 だがビックスライムの体は切られたところから直ぐに再生していってしまった。


「ビックスライムってこんなに再生スピード早かったっけ?そもそも再生なんか、しなかったよね」

「速さもパワーもIIIとは桁違いだ…」


 そんな時、ニールの背後からスライムの触手が襲いかかろうとしていた。


「ニール危ない!!」


 アイシアはその触手に気づき、魔法玉マジックボールに防御の術式を加えてニールの触手との間に設置し、発動させる。

 アイシアが発動させた防御魔法はニールの背中を覆うように展開し、ビックスライムの攻撃から守ろうとした。

 ビックスライムの触手とアイシアの防御魔法が激突し、ニールを守る。

 守ったと思いきや防御魔法の壁を乗り越え、防御魔法ごとニールを包み込んでしまった。


「きゃぁぁぁぁぁーーーーーー!」


 ビックスライムの触手に捕まったニールは大声で叫ぶ。

 身動きが取れないんだろうか。

 短剣で切ろうとしたり、身体を動かしたりして脱出を試みているようだ。

 だがビックスライムの触手は切られても直ぐに再生し、逆に触手が捕まえた獲物ニールを吸収しようと本体に戻っていく。


「まずい、本体に吸収される前に助け出さないと!」


 アイシアは魔法玉マジックボールを風魔法に変換し触手の根元にぶつける。

 しかし切られた所から直ぐに再生してしまう為、切り落とすことができない。

 流石にここで見捨てると心が痛い、俺がやるしかないんだろう。


 両手を左右に伸ばし、風魔法を発動。

 指先から手首あたりまでが風で覆われる。

 それだけではない。

 その風に白桜の加護で使うことのできる桜の花びらを合わせ、白桃色の風が出来上がる。


「《楓花》」


 両手を前に突き出し、楓花を触手の根本めがけて放つ。

 放った風が狙っていた触手の根元に当たり、簡単に切り落とすことが出来た。


「「え……!?」」


 キールとアイシアが驚きを隠せずに声が漏れる。

 彼女らが剣や魔法で何度切っても切り落とせなかった触手が簡単に切り落とされてしまったのだから驚きもするだろう。

 俺が使った春風は回復能力が高いモンスターに対してかなり有効な技だ。

 その能力は風で相手を切り裂き、回復する前に桜を切り口に張り付けるという簡単なもの。

 そうする事で桜の花弁の動きを鈍くさせる効果により、傷の治る速度が鈍くなって治る前に切り落とす事ができる。


「ニール!!」


 アイシアは切られた触手に包まれて落下するニールに重力魔法を込めた魔法玉マジックボールをぶつけて落下するスピードを落とした。


「あ、ありがとう。サクラ、アイシア」

「お礼は後だよ、次の攻撃が……」


 来るよ!とアイシアが言う前に言葉が途切れた。

 なぜなら次の攻撃が直ぐに来ると思っていたのに、全然攻撃が来なかったからだ。

 それもそのはず、攻撃手段である触手が全部切り落とされてしまったのだから。

 床にはスライムの触手が桜に巻かれて散らばっている。


「な、なんで……?」


 アイシアが辺りに散らばるスライムの残骸を見渡す。

 そして、その中心に俺がいることに気がついたようだ。


「サクラさん……?」


 ビックスライムの触手を一掃した俺は左手に白桜を持って立ってる。

 目線の先にはビックスライムの中心。

 心臓コアと言うべき場所を見ている。

 心臓コアが普通のビックスライムと少し違うような形に見える。  

 こいつも俺がやるしかないか。

 左手に持っている白桜をしっかり握り、ビックスライムに向かって走り出す。

 ビックスライムも体から新たな触手を伸ばして攻撃してくる。

 俺はその攻撃を素早く回避し、ビックスライムの懐までやって来ることが出来た。


「《桜障壁》」


 高坂先生の時と同じようビックスライムと俺との周りに桜の花弁の壁が出来あがる。

 白桜を抜刀し、心臓コアを一閃する。

 もちろんその結果、ビックスライムの中心にあった心臓コアを白桜で断ち切ることが出来た。


 ビックスライムはコアが断ち切られるとブヨブヨした体が形を保てなくなりどろりと崩れ落ちてしまった。

 それはまるで季節が冬から春に変わった時の雪だるまを早送りで見ているように。


 そして、入ってきた扉と奥にあった扉がゆっくりと開く音が室内に響いた。








「う~、身体中ベタベタする。気持ち悪い~」


 ニールは身体中に付着したスライムを手で払い落としながら言った。

 見た感じ、多少粘着力が残っているだけで特に害がないようだ。


「ありがとうサクラちゃん、助けてくれて」


 ニールは助けてくれた俺の顔を真っ直ぐ見つめていた。

 もちろん、そんなに真っ直ぐ見つめられて動揺しない俺ではない。


「え、えっと、その……」


 俺は目線を反らす。

 絶対顔は真っ赤だろう。

 そんな様子をキールとアイシアには難しそうな顔で見ていた。

 おそらくキールはビックスライムに再生能力あることを何度か切ったときに気づき、剣に回復封じの魔法をかけていたのだろう。

 それで普通は切ったところが再生しなくなるはずだった。

 なのに、それでもビックスライムは再生した。

 アイシアもニールを助けるときに放った風魔法には回復封じの魔法を合わせていたと思われる。

 魔法と魔法の合成、合成魔法ユニゾンマジックを使っていたはずだ。

 それなのに、それでもあの触手を切断できなかった。

 それを俺はいとも簡単に風魔法で切断した。

 威力はアイシアの方が勝っていたにも関わらずだ。


「サクラさんあなたは…」


 とアイシアが聞こうとしたが途中で言葉が止まる。

 その後少し考え込んでしまった。

 アイシアが考えていると、キールが急に頭を下げ始めた。

 流石の俺もいきなりでびっくりした。


「すまない、私はサクラのことを疑っていた。私が右だと言ったのは、サクラ殿の魔法を信じていなかったからだ。アイシアの方が優れていると思い左ではなく右と選んだ。結果もう少しで大事な妹を失うところだった。本当にすまなかった」


 いきなり頭を下げたキールに、俺だけでなくその場にいたニールやアイシアも驚いていた。


「そ、そんな!頭を上げてください。別に私は気にしてなんか……」

「それでも、私はサクラに謝罪したい。そして妹を、ニールを助けてくれてありがとう……」

「お姉ちゃん……」


 キールの想いがとても強く伝わってくる感じがする。

 今まで人と関わってこなかったからか、こういった感覚を感じたことが無かった。

 誰かにお礼を言われたのは初めてかもしれない……。

 悪い気はしないなかった。


「チームメンバーとして仲間を信用していなかった私が言うのも何だが、改めて私とチームを組んでほしい」


 握手のつもりだろうか?手を前へ出してくる。

 その手を握るかどうか流石に迷う。

 女性が苦手と言うが、こういった真っ直ぐな人は嫌いじゃない。

 だが俺はチームメンバーではなく、監視が出来るということでチームを組むことを承諾した人間だ。

 チーム、仲間として手を握ることが出来るだろうか。

 それ以前に、任務や自分の正体さえでも彼女たちに偽って接している。

 それは仲間と言えるのだろうか。

 だが仲間と言うものがいない俺にとって、たとえ女子でも仲間と言う存在はとてもうれしい。

 俺は彼女らを騙している。 

 それでも俺、いや私は……。


「私もいくつか隠していることがあります。今は事情で話すことは出来ないですが、いつかきっと話します。そんな私で良ければ仲間になってくれますか?」


 俺はキールの手を握る。

 その上に左右からニールとアイシアが手を合わせてきた。


「チーム再結成だね。サクラさん改めてよろしくお願いしますね」


 最初は緊張して言うことが出来なかった。

 だけどもう違う。

 ごく普通に喋るように、アイシアに自分の言葉を伝えた。


「うん、これからよろしくお願いします。アイシアさん」


 異性と話すということに緊張していた俺だが、彼女らを他人とではなく仲間として見ることで何故だか緊張がほぐれる感じがした。

 女性になったことで色々と進歩したのか、前より楽な気持ちでいられる。

 少しではあるが、あの時冷蔵庫に入っていたコーラを飲んだ俺に感謝したくなってきた。

 

「そういえば、さっきからサクラちゃんが持ってるそれってなに?」


 ニールは俺が持っているビックスライムの心臓コアを指さしながら質問してきた。


「これはビックスライムもどきのコアです」

『もどき!?』


 三人同時に驚きの声を上げた。


「もっ、もどきってどういうことですか!?」


 他の二人に変わってアイシアがその言葉を代弁した。


「スライムは中心に肉体を形成する心臓コアが有るのだけど、この心臓コアは誰かによって作られた物みたいです。このコアは魔力を注ぐことによって搭載された魔法が発動する仕組みになってるみたいです。搭載された魔法は再生魔法が使われています。再生魔法は回復魔法と違って元に戻る魔法なので、回復阻害関連の魔法が効かなくなっているみたいです。しかもこれは遠距離からでも魔力を注げるみたいです」

「それはつまり、誰かがそのビックスライムもどきを造ってこのダンジョンにトラップとして設置したってことですか?」

「おそらく、そしてこの先も……」

「似たようなトラップがあるということか……」


 その答えに一瞬静まりかえる。


「ど、どうする?攻略諦めて帰る?」


 ニールが狼狽えながら諦めることを提案した。


「確かに、このまま進むのは危険ですね。この際、単位とポイントが減るのはしょうがないです。戻りましょう」


 リーダーであるアイシアはダンジョン攻略を断念することを決断し、ダンジョンカードを取り出した。

 俺やキールとニールも同じくダンジョンカードを取り出し、転移魔法を発動させる。


「「「「転移フォルティナ!!!!」」」」


 カードから魔力が溢れ出て四人の身体を包み込む。

 だが包み込む途中で魔力四方八方に弾け、消えてしまった。


「ど、どうして!?転移が出来ない!」


 転移が出来ないことにニールだけでなく、キールやアイシアもそして俺も驚いた。


「おそらく、何者かによって転移魔法が妨害されているんだと思います。先ほどのサクラさんが言うとうり遠隔でスライムに常時魔力を注げるほどの魔力を持っているなら、転移魔法ぐらいなら妨害できる腕前なのかもしれません」

「と言うことは、この先に術者が……」

「そいつ倒さないとここから出れないってことだよね……」

「進むしかないようですね」


 ビックスライムもどきを倒した先の開いた扉。

 俺達の目線はその開いた先の空間に向けられていた。


「行こう。このままこうしていても、どうにかなる方法はない」

「お姉ちゃんの言うとおりだね」

「サクラさん行きましょう」

「そうだね。行こう学園に帰るために……」


 俺達は歩き出す。

 学園に帰るために……。






   


 そんな光景を理事長である紫さんは、学園の理事長室から水晶玉を通して見ていた。


「覗き見とは、あまり趣味が良いとは言えないですよ紫堂さん」


 水晶玉を見ている紫さんに黒髪の少年は声をかけた。

 見た目十六、七ぐらいの少年だ。

 その少年は黒いスーツを着用し、髪をワックスで立たせている。

 右の頬に鋭い傷跡が有り、しかも黒いサングラスまでかけていた。

 端から見ると何処かのマフィアの人間ではないかというようなのを感じさせる恰好をしている。


「これは覗きじゃないわ。ただの監視、サクラがうまくやっているかどうか見てるだけよ。それよりも早く報告して頂戴クロノ」


 クロノと呼ばれた少年は小さく溜め息を吐き、手に持っていたタブレットのデータを読み上げる。


「最近学園を騒がしている吸血鬼ヴァンパイアの件ですが、どうやら高坂和真に化けて潜伏していたのが分かりました。本物の高坂和真は学園の教師寮で遺体となって発見され、死後二週間ほど経過していたもようです。周囲の人間に今まで気づかれなかったことから吸血鬼ヴァンパイアは、かなり凄腕の魔法使いでもあると考えられます。現在は俺の部隊を総動員して探していますが午後の授業にてA組の生徒にダンジョンカードを配布後、行方をくらましています」

「……そう、分かったわ。クロノ、吸血鬼ヴァンパイアの狙いってなんだと思う?」

「狙い、ですか?俺は魔物の狙いなんてどうでもいいです。魔物はダンジョンに出るモンスターと同じ、殲滅すべき化け物なんですから」


 紫の質問に対し、まるでゴミか何かを見下すような感じで言い放つ。


「化け物、ね……。吸血鬼ヴァンパイアはクロノたちがそんなに頑張らなくても、もうじき捕まるわ。彼女達の手によってね」


 紫は目線を水晶玉に戻して答える。

 クロノも紫の目線に合わせて水晶玉を見る。


「彼女達……紫堂さんが覗き見ていた生徒ですか?いくら高等部だからと言って、実戦を少ししか行っていない生徒が魔物に勝てるわけがない」

「普通ならね、でもあそこにはサクラがいる」

「……紫堂さんがそこまで言う人なんて珍しいですね。そんなに強いなら今度俺と手合わせでもしましょうかね」


 クロノの言葉に、紫は小さく微笑む。


「彼女が帰って来たらね……」












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