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贖罪に命を懸ける傭兵

未だにあの国には、多くの地雷が埋まっています

「平和だね」

 良美は、田園風景が広がる中誰にともなく声をだす。

「見た目は、ね……」

 歯切れの悪いことを言う較。

「何があるっていうの?」

 良美が質問した瞬間、爆発が起こった。

 音の方をみると土煙が上がり、それが消えた後、一人の男が立ち上がる。

「多分、あの人が目的の人、元傭兵の中嶋瑛太エイタさんだよ」

 較逹は、近付く。

「初めまして」

 頭を下げる較逹に瑛太が怒鳴る。

「お前らは、馬鹿か!」

「いきなり、何よ!」

 良美が反発する。

「さっきの爆発が見えただろうが、ここには、まだ地雷埋まって居るんだぞ!」

 怒声をあげる瑛太に対して、較は、小石を後方に投擲する。

 連続して爆発する地雷に瑛太が驚くが良美は、平然と言う。

「意外と多いね?」

「ここら辺は、農村地域で人が少ないから、地雷撤去の優先度が低いんだよ」

 較の説明に瑛太が舌打ちする。

「だからって被害が無いわけじゃない! 昨日も子供が爆発に巻き込まれて、背中に重障害が残る傷を負った」

「死ななかったのが不幸中の幸いだね」

 良美の言葉に較が手を横に振る。

「地雷って元々、相手を殺す物じゃないから」

「だったら何なんでめんどくさい事をするのよ?」

 聞き返す良美に答えるのは、瑛太だった。

「敵を負傷させ、脱落させた上にその仲間に余計な手間をかけさせられる。火薬の量も減らせて設置するやつには、一石二鳥なんだよ」

「後は、他の地雷が誘爆しないようにだったかな?」

 較の言葉に瑛太が頷く。

「そうやって、悪意と共に戦争後も生き残った地雷は、関係ない人間に牙を剥く」

「あちき逹は、貴方に会いに来ました。イートコの話を聞くために」

 較の言葉に瑛太が背を向ける。

「作業が終わったら話すから村で待ってろ。少しでも早く終らせたいんだ……」

 較は、瑛太を引き寄せると地面に手をつけた。

『フェニックステールダンス』

 火炎が地面を嘗めあげ、地雷を次々に爆発させた。

「今日分には、なったでしょうか?」

 較の問いかけに瑛太が渋々頷く。

「解ったよ」

 こうして瑛太と共に近くの村に戻るのであった。



「俺がイートコと会ったのは、俺が戦場で死にかけた時だ。足に大怪我をおって、動くことも出来ない状態だ。死神の顔が目の前まで迫っていた。そんな時にイートコが現れ、俺を救った。命は、助かった物の走る事が出来なくなった足で傭兵を続けられなくなった俺にイートコが言った。そんな足でも戦える戦場があるってな」

 瑛太の言葉に良美が首を傾げる。

「そんな戦場があるの?」

 瑛太が笑みを浮かべる。

「地雷原だよ。あそこには戦場の悪意と命のやり取りがある。油断すれば待っているのは、死だ」

 較が眉をひそめる。

「エイタ、コレタベル」(カタコトな日本語)

 村の少女が料理を差し出す。

「ありがとよ」

 簡単な礼をして受けとる瑛太。

「村では、慕われてるみたいですね?」

 較の問い掛けに瑛太は、苦笑する。

「迷惑な地雷を撤去してくれてる奇特な人間が居るって嫌われては、居ないさ」

 そのあとも多少話をしたが、較逹にとって、収穫があるものじゃなかった。



 村の外れの広場にキャンピングカーを停めて較逹は、すごしていた。

「何か微妙な奴だった」

 良美の感想に較が頷く。

「理由は、明確だけどね」

「あいつの話から何か解ったのか?」

 良美の問いに、較は、報告書を見せる。

「瑛太さんの仲間は、瑛太さんが負傷した戦場で全滅。瑛太さんは、唯一の生き残り。生き残ってしまった自分が許せなかった。だから戦場を求めるんだよ」

 報告書に付けられた仲間との笑顔で写る瑛太を見て良美が言う。

「過去の思い出に生きてるのか。これの決着ってなに? 地雷で爆死する事?」

 較が苦虫を噛んだ様な顔をする。

「あの人、個人には、それで満足なんだろうけどあちきは、そんなバッドエンド嫌だな」

 良美も頷く。

「あたしもだ」



 瑛太の普段の朝は、遅い。

 しかし、その朝は、胸騒ぎを感じ、寝起きに使ってる小屋から出ると村人逹が空を見上げて騒いでいた。

 それを見たとき、瑛太は、本当に心臓が止まった。

 直ぐ様動き出したが、冷や汗が止まらない。

 強張る口を無理に動かして叫ぶ。

「空襲だ、逃げろ!」

 叫びながらも逃場がない現実に苛立ちを覚える瑛太。

「クウシュウとは、なんだ?」

 多少の日本語が出来る若村長に瑛太が怒鳴る。

「あれは、爆撃機だ。空から爆弾を落とす! あんな数、初めてみたぞ……」

 汗を拭う瑛太の視界には、十を越す爆撃機が映っていた。

 流石に状況が理解できた若村長が戸惑う。

「この村、襲われる理由ない」

「地雷を埋められる理由があったか?」

 瑛太の問い掛けに沈黙するしかない若村長。

「ここを狙っていないならそれで良い。万が一にも狙われてたらおしまいだ」

 その言葉に合わせる様に爆弾が投下された。

 村から離れた場所、較達のキャンピングカーに落下し、爆音は、村まで届く。

 叫び家やあさっての方向に駆け出す者が居るなか、瑛太は、絶望していた。

 最初は、余所者と敵意を向けられていたが徐々に溶け込み、酒を飲み交わす相手も居た。

 そんな村人逹が理不尽な死にさらされようとしているのに何も出来ない自分がはらただしかった。

「なんでだよ、死ぬのは、俺一人で良いんだよ!」

「解ってるじゃん」

 いつの間にかに村に来ていた良美が気楽な一言に瑛太が怒鳴る。

「お前ら何時から居たんだ? とにかく危険だ。逃げろ!」

 良美は、普通に手を横に振る。

「関係ない。どうせあれってヤヤを狙ってるんだから」

 少しの沈黙の後、瑛太が質問する。

「狙われる心当たりがあるのか?」

 較が腕を組んで言う。

「そんなにアメリカとは、敵対した覚えは、ないんだけどな」

 瑛太が信じられないおもいで聞き返す。

「いま、アメリカって言ったか?」

 良美が頷く。

「さっき連絡あったから間違いないみたいだよ。ここにヤヤが居るって聞きつけて、駐留軍が適当な理由をつけて空爆を仕掛けてきたみたい」

「昨日の地雷爆破がテロリストの仕業で、この村は、その支援をしてるって嘘八百を並び立てたみたい」

 較のフォローに瑛太が怒鳴る。

「全部貴様らの所為か! だいたい、何をやったら、米軍がそんな事をしてくるんだ?」

 較が頬をかきながら言う。

「だから、そんなに強い恨みを買う覚えなんてないんだけどな」

 そんな時、良美が手を叩く。

「もしかして、ホワイトハウスを半壊させたのをまだ根に持ってるんじゃない?」

「そんな数年前の事を今更?」

 信じられ無そうな較の言葉に瑛太が怒鳴る。

「十分に理由になるわ! どうするつもりだ?」

 較が淡々と言う。

「どうするって、貴方にとっては、都合いいことでしょ? ここは、本当の戦場になるんだから?」

 それを聞いて、瑛太が戸惑う。

「何を言っているんだ?」

「だって、戦場で死にたかったんじゃないの?」

 良美の指摘に瑛太が言葉に詰まる中、戦車の大軍まで現れた。

「あんなもんまで居るんだ?」

 良美の平然と呟くと瑛太が睨む。

「お前たちは、死ぬのは、怖くないのか? 空爆だけでも最悪だというのに、戦車隊まで出てきたら、逃げる事も不可能だぞ」

 それに対して較が告げる。

「戦えばいい話だもん。あちきは、あちきを護りたい存在の為に戦い、生き抜く覚悟があるからね」

 較の目には、一片の絶望も無かった。

 その言葉を示すように、村から出て戦車達に向かって駆け出す。

 主砲が較に向かって放たれる。

『ナーガ』

 土壁が戦車の砲弾を防ぐ間に、一気に近づいた較が手刀を振り下ろす。

『オーディーン』

 真二つになり、中から軍人達が飛び出て爆発。

「怪我したくなければ、逃げな!」(英語)

 戦車隊は、一気に後退する。

「以外と諦めがいいね」

 感心する良美だったが、瑛太が怒鳴る。

「違う。空爆するつもりだ!」

 その言葉通り、較に向かって次々と爆弾が投下される。

 その爆風が村に、瑛太達まで届く。

「何なんだよ! こんな非常識な事があっていいのかよ!」

「何を慌ててるの?」

 良美が普通の様子で聞くと瑛太が悔しそうに言う。

「あいつが死んだ後は、この村だ。米軍の奴らは、自分達の誇りと建前のためならこんな村の一つ潰すくらいなんとも思わない!」

「さっきから気になってたんだけど、どうしてこの村の事を気にかけるの?」

 良美の質問に瑛太が苛立ちながら答える。

「当然だろうが! お前は、平気なのか!」

 良美が真剣な顔で告げる。

「死んだ後の事なんて気にならないよ。特に自分に関係ない人達の事なんて」

 その言葉には、口先だけじゃない重みがあった。

「お前、今までもこんな命懸けの事があったのか?」

 瑛太の質問に良美が強く頷く。

「命懸けなんて生易しいもんじゃない。何度も死に掛けて、何度も病院送りになった、その度に家族や友達に怒られる。もっと自分を大切にしろって。それでもあたしは、ここに居る。死ぬ為でなく、自分の信じる生き方を貫く為に」

 圧倒される瑛太。

「お前は、生きる目標があるんだな? 俺には、そんな物は、ない……」

 力なく呟く瑛太に昨日の少女が駆け寄ってきてカタコトの日本語で話し開けた。

「エイタ、ニゲル、イッショ!」

 必死に手を引っ張る少女、他にも何人もの子供が瑛太の周りに寄ってきた。

「随分と慕われてるじゃん」

 良美の言葉に瑛太が答える。

「この村に世話になってる代わりに少し勉強を教えてやってるだけだ」

「この子達は、貴方にこれからも勉強を教えて貰いたいんだよ。それって生きる理由にならない?」

 良美の言葉に瑛太が子供たちの顔を見る。

「なるかもしれない。しかし、もう駄目だ。俺一人の力じゃ、空爆も防げないし、戦車隊の追跡から逃れる事も出来ない」

 悔しそうな顔をする瑛太に良美が笑顔で答える。

「そっちは、心配無用。あんなのは、ヤヤが直ぐに蹴散らすから」

『アポロンビーム』

 熱線が次々に爆撃機の翼に命中していく。

 瑛太が爆撃のあった場所をみると無傷の較が立っていた。

『タイタン』

 較が地面を連続で踏みつけると地震が起き、展開をしていた戦車隊の動きを止める。

『ヘルコンドル』

 次々に放たれたカマイタチが、戦車のキャタピラと砲身を切り裂き、無力化していく。

 較は、動けない戦車隊のゆっくりと近づくと奥の一台を蹴り飛ばす。

『タイタンキック』

 ひっくり返った戦車から這い出てくる指揮官に近づきたずねる。

「まだやる?」(英語)

「やりません! どうか、命だけは助けて下さい!」(英語)

 命乞いをする指揮官に較が告げる。

「無論、それなりの償いは、覚悟してるよね?」(英語)

「勿論です!」(英語)

 即答する指揮官だった。



「まさか米軍が地雷撤去をしてくれるなんてな」

 苦笑する瑛太に較が説明する。

「誤報で余計な被害を出してしまった、賠償行為って事になってますよ」

「どう考えてもお前に脅されてやらされてる様にしか見えないがな」

 瑛太の指摘通り、作業に当たっている米軍兵士達は、全員生身で爆撃機と戦車隊を壊滅させた較に恐怖しながら働いていた。

「それで、地雷原は、米軍が責任もって処理してくれる事になったけど、これからどうするの?」

 良美の質問に瑛太が手に持った本で肩を叩き言う。

「この村で子供たちに勉強でも教えるさ」

 そのまま、昔の写真よりいい笑顔で村に戻っていく瑛太を見送る較と良美。

「今回は、全てハッピーエンドですね?」

 突如現れたイートコに較が苦笑する。

「村に被害が出ないように努力したからね」

「それでは、やっぱりホワイトハウス半壊時のとばっちりで飛ばされた指揮官に情報リークしたのは、貴女達だったのですね?」

 イートコの言葉に良美が頷く。

「その通り。あいつに自分でも気付いてなかった思いを実感させる為にね」

 較が続ける。

「地雷被害者の事で、悔やんでいたから、脈ありだって思ったんだよ」

「私は、誤魔化しの目標しか与えられませんでした。立派ですよ」

 ため息を吐くイートコに較が指摘する。

「こうやって、縁を作らせるのは、異邪を召喚し、定着させる礎にする為でしょ?」

 イートコが顔を逸らす。

「そうだとしたら、もう私の言葉を無視しますか?」

 良美が睨みつける。

「あたし達を馬鹿にしないで! そんな消極的な事は、しない。正面からあんたの計画を潰してあげる!」

「あちき達が無視しても別の誰かにやらせるだけでしょ? それだったら、自分達から関わって、事態を把握する道を選ぶよ」

 較の言葉にイートコが複雑な顔をする。

「助かります。次の場所は、サウジアラビアです」

「まためんどくさい場所を」

 較がクレームを上げるが、その時には、イートコの姿は、見えなくなっていた。

「あいつを出し抜ける?」

 良美の言葉に、頬をかく較。

「異邪の計画だったら、なんとか防げる気がするけど」

 微妙な表現をする較であった。

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