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神に選ばれた聖者

平等を訴える聖者を護る天使との対決

 スペインに程近い、ペントスという小国が存在する。

 国連に所属していないこの国では、未だに奴隷制度が存在する。

 しかし、そんな中一人の聖者が現れた。

 天使を供にしたその聖者の名は、カリスと言った。

 彼は、奴隷の解放を訴え、現政府と対立をしていた。

 両者の争いは、熾烈を極めていた。



「カリス様に逆らうのは、天に逆らうのと同じだ! 天罰を喰らえ!」(現地語)

 その宣言と共に投げつけられる火炎瓶が政府の施設を燃やす。

「貴様ら! 全員捕らえろ!」(現地語)

 政府軍がカリス信者達の捕縛に動く。

 その中では、射殺される信者も居る。

 そんな風景を眺めながら良美が呟く。

「随分と過激にやってるね」

 較は、怯える屋台の店主が出した料理を食べながら言う。

「何処の国でも信者って輩は、怖いもの知らずだからね」

 良美も先に出された牛肉の焼き串を口にしながら言う。

「そんなもんなの?」

 較が頷く。

「信者って言うのは、神様って絶対者を信じているから、どんな事があっても大丈夫だと思い込めるからね」

 良美は、自分のよくしる神様を思い出して言う。

「あれを信じられるの?」

 苦笑する較。

「あのお方は、あんな風にしてられるけど、間違いなく最強だよ。こんな世界、一瞬で消滅させられるんだから。あの方ほどじゃなくても、神様なんて言われるのに常人は、逆らう方法は、ないよ」

「ヤヤは、何度か倒してるじゃん」

 良美の指摘に較が肩をすくめる。

「あんなのは、上手くいなしてるだけ。正面からやりあったら、八刃でも勝ち目なんてゼロだよ」

「それなのに戦ってるの?」

 良美の質問に較が頷く。

「八刃の基本理念、理不尽な事には、抗い、打ち克つ、それが神、抗えぬものであっても。その為には、人である事も棄てる」

 微かに白い光が漏れる較の右手に良美がため息を吐く。

「色々と代償を支払ってるみたいだよね」

 較は、答えずに席を立つ。

「それじゃあ、問題の聖者、カリスに会いに行きますか。どうやってイートコから天使を貰ったか聞きに」



 数日後、聖者、カリスは、多くの信者の前に立っていた。

「我は、民を救う為に神に選ばれし者。この身がどうなろうとも、全ての人々に平等な権利を手に入れて見せます!」(ここから現地語)

 信者達の中から、歓声があがる。

 その時、政府軍が現れる。

「国民を謀り、政府を蔑ろにする、犯罪者、カリス! 今日こそ、お前の命日だ!」

 数台の戦車と戦闘ヘリがカリスに向かって攻撃を開始した。

 しかし、そのどれもがカリスに当たる前に、突如現れた天使の翼で弾かれる。

「カリス様の天使だ! やはり、カリス様は、神様に選ばれたお方なのだ!」

 信者達が歓喜する中、政府軍は、執拗なまでに攻撃を繰り返すが、天使の翼の前には、無力であった。

 そして、カリスが悲しそうに告げる。

「これではっきりしたでしょう。貴方達の力では、私に傷つける事も出来ません。大人しく帰ってください」

 怯む政府軍の中から、較が出てくる。

「はいはい、茶番は、そこまで。それは、天使って言っても本当の神様の使いじゃないよ。正確には、神様の使いの道具として作られた、戦闘兵器だよ」

「貴方は、何者ですか?」

 カリスの問いに較が答える。

「八刃が一つ、白風の次期長、白風較。貴方の使っている天使を破壊に来た」

「何故ですか?」

 カリスが問いかけると、較が即答する。

「それが、あちき達と敵対する勢力に関わっている可能性があるからよ」

「可能性ですって! その様な曖昧な事で、この国の苦しんでいる人々の希望を奪おうというのですか!」

 カリスが訴えるが較は、平然と答える。

「この国の人間が苦しんでるなんてあちきには、関係ないこと。関係有るのは、そこの天使があちき達に危害を及ぼす存在であるかどうかなんだよ」

「なんと、神の意志を蔑ろにする人間がこの様な所にいるなんて!」

 カリスが嘆くと信者達が騒ぎ出す。

「その愚か者に天罰を!」

「小娘だからって容赦するな!」

「カリス様に逆らうものに生きる資格は、ない!」

 その様子を見て較がカリスと視線を合わせた。

 そしてカリスが頷く。

「天使よ、あの者に天罰を与えよ!」

 天使の羽根は、まるで銃弾のように放たれ、較に襲い掛かる。

『カーバンクルパラソル』

 較は、防御の術でそれを受け流しながら、天使に接近する。

『オーディーン』

 振り上げられた較の手刀が天使の腕を切り裂く。

 しかし、天使の腕は、直ぐに復活する。

「流石は、神の使徒の戦闘兵器だね」

 間合いをあける較だったが、天使は、すぐさま目の前までやってくる。

 その手が剣と化して、較を斬った。

「外れ!」

 天使が斬ったのは、較の残像だった。

『トールサークル!』

 雷撃の篭った回転蹴りを放つ較。

 天使は、それをまともに喰らうが、そのまま攻撃を続行する。

 腕を大きく切り裂かれる較だったが、攻撃が当たった所を支点に更に体を回転させる。

『オーディーンハルバート』

 天使の胸を大きく抉り、よろけさせる。

 天使は、すぐさま羽根を打ち出して、牽制してくる。

『カーバンクルパラソル』

 再び攻撃を受け流す較。

 そして、受け流された羽根は、信者達を襲った。

「キャー!」

 慌ててカリスが叫ぶ。

「信者達には、傷を負わせては、いけません!」

 天使が、羽根を打ち出すのを止める。

「チャンス到来!」

 一気に間合いを詰める較。

『バハムートブレス』

 気が篭った掌打が天使に打ち付けられる。

 大きく弾かれた天使だったが、その目から強烈な光を放つ。

 咄嗟に避けた較の後ろにあった戦車が光線の直撃を受けて爆発する。

「そんな技まであるわけね」

 冷や汗をかく較。

 そうしている間にも、その光は、較に近づいてくる。

 較は、近くの信者を掴むと光線への盾にした。

 カリスの命令に従う為、光線をとめるしかなかった天使に較が、近づき微笑む。

「所詮は、戦闘兵器、ただの道具だね!」

 較の手が翼を掴み、毟り取る。

 天使の超音波の様な悲鳴が上がる中、較の両手が交差した。

『オーディーンクロス』

 十字に切り裂かれ、消滅していく天使。

「終わりだよ」

 較の一言で、信者達が絶望し、政府軍が一斉にカリスを捕まえに動いた。

 信者達は、激しく抵抗したが、圧倒的な兵力差の前には、無駄だった。

 それでもカリスは、最後まで訴え続けるのであった。

「例え、私が死ぬ事になっても、私の思い、平等を願う思いは、決して消えたりしません!」



 政府の監獄、その中でも一番厳重な場所にカリスが居た。

 功績を認められて、単独で尋問を許された較がそこに来ていた。

「約束は、通りにあの天使を信者の前で倒したよ。これで、話をしてくれるね?」

 カリスが頭を下げる。

「危険な事を頼んでしまって申し訳ありませんでした」

「別に良いけど、本当にこれで良かったの? 貴方の目的は、まだ達成されていないのに、天使を手放しても?」

 強く頷くカリス。

「天使の力では、駄目なのです。自らの力で、一歩ずつ確実に手に入れなければ意味がありません。それなのに、天使の力を自分達の力と勘違いする信者が居て、その暴走で多くの無駄な血が流れました」

 その目には、後悔の色があった。

「それで、これからどうするの? 話を聞かせてくれるんだったら、ここから脱出する手引きくらいしてあげるよ?」

 較の言葉にカリスは、首を横に振る。

「私は、政府の手で公開処刑されます。それが、天使という力に頼ろうとした愚かな私への罰なのですから」

 困った顔をする較にカリスが釘をさす。

「それと、ここから先の手助けは、要りません。ここで貴方の力を借りたら天使の力を借りるのとかわりませんから」

 そして、較は、イートコの話を聞いて、その場を後にした。



 スペインのホテルで、新聞を読んでいる較に良美が話しかける。

「その記事って、この間のカリスって人の?」(ここから日本語)

 較が頷く。

「やっぱり公開処刑されたって。でも、死ぬ直前まで平等を訴え続けたみたい」

 良美が少し考えてから言う。

「ヤヤの所為じゃないよ。きっと、ヤヤが行ってなくても、別の方法で天使を処分して、同じ様な事になっていたよ」

「ありがと」

 お礼を言う較の携帯が鳴る。

『色々ありまして、そこには、分身がないので、電話で失礼します』

 イートコの声だった。

「あちきの携帯番号の入手経路は、聞かないことにするけど、何の用?」

『言い訳をさせて欲しかったのです。あの人だったら正しく天使を使えると思っていたのです』

 イートコの言い訳に較が言う。

「力を持つと言う事は、それだけで罪なんだよ。例え、どんなに正しく使われようと、その罪を償わなければいけない時が来るもんだよ」

 自戒を込めて答える較にイートコがしみじみと返す。

『その通りですね。今後は、気をつけさせてもらいます』

「まだ続けるんだ?」

 較の質問にイートコが何かを躊躇したような間をおいて答えた。

『はい。この命があるかぎり』

 その答えに、較が何かを確信するが口にしない。

『次に会う時は、こんな言い訳が必要ないようにします』

 携帯が切れた後、良美が言う。

「なんというか律儀な性格だね?」

 較が複雑な顔をする。

「それだけだったら良いけど?」

 較が自分の携帯に残った通話記録に作為的な物を感じずには、居られなかった。

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