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正義の改造人間

正義の改造人間

「何にも無いね」

 周りを見回して何も無い事を確認する良美。

 較が目の前に立つ研究施設を向いて言う。

「そんだけ、人に言えない研究をしているって事だよ。後は、逃亡者を発見しやすいようにする為もある」

「こんだけ視界が開けていたら逃げにくいからね」

 頷く良美に対して較が上空を指差して言う。

「そんなレベルじゃないよ。人工衛星での監視システムがある。高速で移動する手段が無い限り、その監視から逃れるすべは、無いね」

 呆れた顔をする良美。

「それで、そんな奴らは、何者なの?」

 較があっさり答える。

「アメリカ合衆国が管轄する極秘兵器開発部門だよ。何のジョークかショッカーなんて名前だよ」

「それが何でジョークなの?」

 良美が首を傾げると較が言う。

「ほら数年前に仮面ライダーの映画に大ショッカーって出てきたでしょ。昭和仮面ライダーの一号や二号と戦った悪の組織の名前がショッカーなんだよ」

 良美が手を叩く。

「意外と科学者の中にもジョークが解る連中がいるじゃないか」

「ジョークなだけだったらね」

 較は、他者を拒絶するような白い建物を見上げる。



「本来なら部外者は、立ち入り禁止な所を特別な許可があって許可している事を理解して欲しい」(英語)

 そう言ってきたのは、軍服の男だった。

「解っています」(英語)

 較が作り笑顔で返す。

 不機嫌そうな顔で前を歩く軍人。

「ここに軍人が居て問題じゃないの?」

 良美の鋭い指摘に較が失笑する。

「ここの中に入れる部外者が居ないって事になってるから、良いんでしょ。どうせ、この人だって正式には、どこか他所の場所で仕事してる事になってるだろうからね」

 眉を寄せる良美。

「漫画みたいな事を本気でやってるんだね」

 そんな会話をしている間に目的の場所に到着する。

「これが我が研究施設で実験している内容だ」(英語)

 軍人が指し示した場所には、肉体を改造された人間が居た。

 掴みかかろうとした良美を抑えて較が言う。

「随分と非人道的な実験をしておられるのですね?」(英語)

「彼らには、正当な報酬を支払っている。何の力も持たない貧民には、こうでもしないと生きる事もできないからな」(英語)

 軍人の回答に較が引きつった笑顔で告げる。

「襲われる理由があるって事ですね。問題の襲撃者は?」(英語)

 軍人が近くのディスプレイに一人の男の情報を映す。

「コードネームは、アシュラ、アジアの三面六臂の神の名前からとった。彼は、六本の腕を持ち、高度な戦闘能力を有していたが、外での戦闘実験中に脱走し、この施設を襲うようになった。捕獲を試みたが、成功していないのが現状だ」(英語)

 映し出された資料を見て、較がため息を吐く。

「まだ研究対象としてみてるって所ですか?」(英語)

「そうだ、貴重な成功例だからな」(英語)

 軍人の一片の迷いの無い言葉に較が拳を握り締めながらも笑顔で提案する。

「それでは、次の襲撃の時にあちきにやらせてもらえませんか?」(英語)

「軍が動いて駄目だった物を小娘二人が加わったくらいでどうにか成るわけなかろう」(英語)

 軍人の言葉を較が訂正する。

「勘違いしてます。実際に動くのは、あちき一人です」(英語)

「馬鹿な! 相手は、重装備の兵士が相手と互角に戦える奴だぞ!」(英語)

 どなる軍人に較が封筒を渡す。

「ここに命令書がありますよ」(英語)

 中身を確認して愕然とする軍人。

「馬鹿な、大統領のサインがされているだと……」(英語)

 良美が問題の封筒を指差して言う。

「あれって大統領の前で、鉄の塊を素手で自由の女神を作る脅しで書かせた奴だよね?」

「今回の大統領は、物分りがいい人で良かったよ」

 較のしみじみ言う中、軍人が悔しそうに言う。

「大統領の命令なら仕方ない。好きにするが良い」(英語)

 こうして、較は、ショッカーに改造された改造人間と戦う事になったのだ。



 深夜の研究所、施設以外には、星の輝きしか見えない屋上で、星を観察する較。

「星だけは、綺麗だね」

 呟く較に良美が言う。

「あいつらをほおっておくの?」

 較は、辛そうに言う。

「いくらあちきだって、アメリカが本格的に動かしている実験を台無しにする真似は、出来ないよ」

「だけど……」

 何か言いたげな良美に較が真剣な顔で言う。

「あちきだって出来る事の限界がある。よく世界を敵に回してもヒロインを護るって主役が言うけど、あれって駄目な例なんだよ。ヒロインを護りたかったら、どうやったら世界を敵に回さないで済むかを考えないといけない。あちきは、家族と友達を護りたい。だから、その他の事まで手が回らないよ」

 良美が天の星を観ながら言う。

「星は、こんなに綺麗なのにどうして、人の世界は、醜いんだろ」

「隣の芝生だよ。あの星、恒星の周りの惑星に住む人達も苦しんで、醜く争っている。そして、太陽の光を見て、美しいと思いながら自分達の醜さを悲嘆しているのかもよ」

 較の言葉に良美が苦笑する。

「そうだね。汚いと思ったら出来るところか綺麗にしていかないとね」

「そういう事、出来ることからね」

 較が頷いた時、サイレンが鳴り、サーチライトが激しく動く中、較が問題の改造人間、アシュラを視認する。

「それじゃあ、行ってくる」

 建物の屋上から飛び降りる較。

『イカロス』

 空中を蹴りスピードアップして、一気にアシュラの前に着地する。

「貴様は、何者だ!」(英語)

「八刃が一つ、白風の次期長、較。貴方は、元オーフェンの幹部イートコと接触したという情報を手にしたから捕まえに来た」(英語)

 較の答えにアシュラが鋭い目をする。

「貴様が、騒乱の子か。脱出の際に死にかけた私を救ってくれたイートコ殿から何度か話は、聞いた事がある」(英語)

 問答無用で殴りかかるのは、較。

「イートコ殿は、もはやオーフェンと関係ないと言われていた。それでも八刃は、無視出来ないというのか!」(英語)

 二本の腕で受け止め、二本の腕で攻撃するアシュラ。

「本人に確認しないうちは、無理だよ!」(英語)

 飛びのき、手を振り下ろす。

『ヘルコンドル』

 カマイタチがアシュラに襲い掛かる。

 四本の腕で受け止めるアシュラ。

「イートコ殿の事は、後で話そう。だから、ここは、通してくれ!」(英語)

 較は、接近して耳元で呟く。

「その程度の覚悟で、救えると思ったの。改造された人々を救いたかったら、あちきを殺す気できなよ」(英語)

 アシュラは、一気に闘志を燃やす。

 すると、アシュラの装備していた鎧が激しく燃え上がる。

「私には、どうしてもやらねばならない事があるのだ!」(英語)

 鎧から立ち昇る炎は、剣となり、六本の腕に握られる。

「こっからが本番だね」

 一気に加速する較を六本の腕で迎え撃とうとするアシュラ。

 しかし、剣が届く直前で較が慣性を無視して止まる。

『フェニックスウイング』

 両手を振り上げ、強烈の炎でアシュラの剣を弾きあげる。

「まだだ!」(英語)

 弾きあげられたのと違う腕で、較に斬りかかるアシュラ。

『ナーガ』

 較は、大地から土の大蛇に変化させてアシュラの道を塞ぐ。

「俺は、止まるわけには、いかないのだ!」(英語)

 必死に大蛇を打ち潰しながらも進む阿修羅。

『ナーガナイアガラ』

 次々と土の大蛇が生み出されて、アシュラを押し戻していく。

「どうしたの。貴方の覚悟は、その程度?」(英語)

「この程度では、止まらぬ!」(英語)

 突き進もうとしたアシュラだったが、その背後に較が立っていた。

「残念だけど、人一人の思いだけでは、現実は、変わらないんだよ『インドラ』」(英語)

 放たれた電撃がアシュラの体を痺れさせて自由を奪うのであった。

 そして、軍人達に拘束されて施設に連れ戻されるアシュラ。

「そいつの持ってる装備は、こっちに貰うよ」(英語)

 較の言葉に軍人達は、嫌そうな顔をするが、今さっきの戦闘を見ては、逆らえなかった。

 その後、較は、何度かアシュラを尋問し、イートコの事を聞き出すのであった。



 小さな喫茶店、そこは、アシュラの尋問であがったイートコがよく利用していたと言う喫茶店であった。

「ここで張ってて現れるのかな?」

 良美の問い掛けに較が答える。

「さあ、解らない。駄目もと、他に情報が見つかったらそっちに行くよ」

 そんな時、一人の人のよさそうな青年が入ってきた。

 そして、較達の席に座る。

「見事の手際でしたね」

 その言葉に較が苦笑する。

「何の事だかわかりませんが?」

 その青年が言う。

「とぼけないで下さい。あの研究所から改造された人々が一斉に脱出に成功したのは、貴女が裏で手引きしていたのでしょう?」

「あの作戦を考えたのは、シシってオーフェンハンター見習いの子だよ。あちきは、アシュラにいくつか伝言しただけ」

 較の答えに青年が苦笑する。

「それでは、アシュラとの戦いの最中に作っておいたトンネルは?」

 較が笑顔で告げる。

「あれは、偶然です。それを脱出に使われたからって、あちきの責任じゃないですよ」

 較の答えに笑みを浮かべながら青年が言う。

「一人の思いでは、現実は、変えられない。だったら、多くの思いを束ねれば良いって事ですよね」

 較は、答えないで居ると良美が言う。

「あんた何者? 軍の関係者?」

 青年が手を叩く。

「そうでした。自己紹介がまだでした」

 袖を捲り、腕についた目を見せて告げる。

「元オーフェンの幹部、異邪の父と人の母から生まれたハーフ、百目のイートコです」

 良美が驚いた顔をするが、較は、平然としている。

「取り敢えず、本体じゃないみたいだけど、何をしに来たの?」

 イートコが肩をすくめる。

「もう気付かれましたか。確かにこれは、事前に仕込んでおいた私の目の一つを使った分身です。貴女に会いに来たのは、今回のことで感謝を述べようと思いました。私では、こうは、上手くいかなかった。ここら辺がハーフの限界ですね」

 苦笑するイートコに較が問いかける。

「何で、オーフェンを抜けたの?」

 遠い目をするイートコ。

「異界門封鎖大戦で崇拝する父親から離された私は、ただ、再び父親に会うことしか考えていませんでした。それからの時、私の百の目で、この世界の多くの物を見てきました。醜いもの、酷い不幸、様々な負の感情を見てきましたが、それに負けないこの世界の住人を見て、気付いたのです。この世界は、この世界の住人の物だと。どんな理由があろうと異界の者が立ち入るべきじゃ無かった。私がいまやっているのは、罪の償いです。この命がある限り、少しでも苦しんでる人を救おうと思います」

「その言葉を信じろって?」

 較の鋭い言葉に困った顔をするイートコ。

「信じて貰えませんか?」

 較があっさり頷く。

「分身で言われてもね。本当に信じて欲しかったら本体でそれを語ることだね」

 イートコがため息を吐く。

「そんな事をしたら、貴方達に捕まります。私は、まだまだ罪を償わなければいけないのです」

 較が睨む中、イートコが立ち上がる。

「それでは、失礼します」

 そのまま消失した。

「食えない奴」

 較が吐き棄てると良美が言う。

「嘘を言っているって事?」

 較が眉を寄せる。

「嘘は、吐いていない。しかし、全部も語ってないと思う。追跡は、止められないね」

「了解。何か面白いことになりそうだね」

 良美の言葉に較がため息を吐く。

「ヨシの楽しそうな事ってたいてい、後始末が大変なんだよ」

「それをするのは、ヤヤだけどね」

 皮肉に皮肉を返す良美であった。

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