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[The magic bibles]  作者: マポリー
第一章
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第四話「合図」

「今言った通り、武器はここの牢獄の人数分程度はある。あとは……」


 俺が続けようとすると、俺のものではない別の声が、遮った。


「そんな話を信じろって言うの?」


 アリスだ。声は抑えているが、怒りのようなものがこもっている気がする。


「確かに、信じるのは難しいと思う。でも、あの時俺は確かに、温度を感じて、匂いを嗅いで、物を触った。そんな感覚は、夢に無いだろう?」


 アリスが口をつぐむ。俺は続けた。


「もちろん、信じられないなら信じなくていい。俺だって証拠と言えば、感覚があった、くらいしかないからな」


 一度口を閉じて、皆の返事を待った。しかし、予想に反して返事が返ってこなかったので、また口を開いた。


「地図と衝撃弾は、そこの衛兵から盗れるな。なら……脱獄は明後日決行する」


「少し早すぎやしないか?」


 これはラックだ。


「作戦は早いほうがいい。帝国に気付かれたら、それこそ、ここから出られなくなる。……明日、ここの人達に『明日決行する』と、できるだけ多くの人に伝えてくれ。俺は予想外のことがあった時の指示を考えておく」


 口を閉じ、一度深呼吸する。


 全員の顔を見た。真剣そうだったり、うつむいていたりと様々だ。


「じゃあもう寝よう。明日の為に……」






 昼から、大体の事態への対策は考えておいた。と言っても、完璧と言われるには程遠い、浅はかなものだが。


 俺は、目の前に置いている、突起が幾つも付いている球体、衝撃弾を見て、言った。


「そこの衛兵が持っているのは、これだけだった。とりあえず、衛兵に捕まった時の為に、ここにいる全員分欲しかったんだが……」


 衝撃弾とは、衛兵が持つ飛び道具のことだ。衝撃弾に強い衝撃を与えることで、殺傷能力のある衝撃を放つ。だから帝国では、重宝されているのだ。


 ここにいるのは、俺と、友達四人、そして年配の男。


「そういえばさ……」


 突然、レオンが口を開いた。とっさにそちらを向く。


「なんで僕達の分だけなの?衛兵に捕まった時の為なら、ここの牢獄に捕まってる全員分用意しなくちゃいけないよ?」


「俺達は、今回の脱獄の主謀者だ。衛兵に捕まって、そのことがバレたら、酷い……それこそ死にたくなるくらいの拷問を受けるだろう。そうなることを防ぐ為に、自ら死を選ぶんだ」


 少し口を閉じ、一呼吸置くと、また口を開いた。


「ネガティブな気もするが、仕方ないんだ……」


「そういうことなら、わしはいらんよ」


 年配の男の言葉に、顔を上げる。


「こんな老いぼれには、衝撃弾を投げる隙すら与えてくれんじゃろうよ」


 そして、弱々しく微笑んだ。


「ありがとうございます」


 俺は、男に一礼すると、傍らから地図を取る。


「次は……」


 衝撃弾を、左手でそっと横によけると、地図を地面に開いた。


「いいか?作戦はこうだ――」






 今日は朝から調子がいい。頭は冴えてるし、体はよく動く。


 労働部屋に設置されている、大時計を見た。


 短針が十を差している。もうそろそろだな……


 俺は、岩に縛っている縄からゆっくりと手を離すと、大きく手を叩いた。


 パァンという澄んだ音が、辺りにこだまする。


 一斉に、衛兵の目がこちらを向いた。


 昨日、俺が言った言葉が頭をよぎる。


『手を三回叩いたら、脱獄の合図だ』


 二回目を打ち鳴らした。


 今度は、空気が変わった感じがする。


 そして……


「行くぞ!!」


 そう言うと同時に、手を叩いた。

 用語解説に、「ルーガル王国」「帝国」「衝撃弾」を追加しました。

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