第一話「牢獄」
ゆっくりと体を起こす。
まだ体の節々が痛む……。俺は周りを見渡した。
ほとんど何もない。あるのはコンクリートでガッチリ固められた壁と鉄格子、そして倒れている友達五人と……老人が一人。
俺は倒れている一人に近付いた。
「おい……」
揺すっても起きない……。
「おいパレス!」
パレスがゆっくり上半身を起こした。眠そうに目を擦っている。
「ここ……どこだ?」
俺が鉄格子の方を顎でしゃくる。
パレスもそちらを見た。
「まさか……」
「そのまさかだ」
ここは平和"だった"ルーガル王国。その平和が破れたのは、約16年前……
その日、帝国が責めてきた。しかし王国の大臣達はすぐに動かなかった。なぜなら今までに何回か帝国は、ルーガル王国へ責めてきていたからだ。勿論、毎回帝国を追い返した。そうしている内に、帝国に恐怖を感じなくなっていた。しかし、それがそもそもの間違い。今回の兵力は前回とは比べ物にならないほどだった。そのまま、王国は為す術も無く、侵略されていった。帝国は数々の村が破壊し、北の大地を拠点とした。そして、今までに色んな人を帝国の奴隷として捕まえ、酷い労働をさせてきた。
実は、俺が生まれたのは丁度帝国に攻め込まれた日。
そのせいか、昔から帝国には他の人の何倍も恨みを持っていた。
「俺達は……捕まったのか?」
「そういうことだな」
パレスがうつむく。
「そんな落ち込むな」
俺がパレスの肩をポンポンとたたく。
「よくタクトはそんな呑気でいられるな!」
パレスが俺の手を払いのける。
「ま、まぁ落ち着け。今叫んだってどうにもならない」
俺はパレスを説得するように言った。
「……今まで帝国に捕まって帰ってきた人は……?」
パレスがゆっくりと顔を上げる。目が赤く染まっていた。
「い、いないけど……」
「そうだろ!捕まったらもう終わりなんだ!」
そう言って、パレスがまたうつむく。
「でも……帰れる可能性がない訳じゃない。ほら、かの有名な三代目国王も言ったじゃないか、『諦めた時が負けだ』ってさ」
パレスはまだうつむいたままだ。
「とりあえず……パレスは寝ときな。うつむいてたってどうにもならないしさ……」
「……そうするよ」
パレスはうつむいた顔を一度上げ、俺に微笑みかけると、身を横にした。
あれから約一時間……
俺はこの少ない人生で得た知識をフル活用して考えていた。
自分の為、親友の為に……
ここから逃げる術を