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記憶喪失の転生者  作者: 川咲鋏
第4章
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思わぬ出会いと追憶


(頭が痛い…やっぱり飲みすぎたかな…)


昨日の夜はグランディエに付き合わされたとはいえ、思いの外たくさん酒を飲み過ぎてしまったようだ。

頭はガンガンするし、気分が一向に良くならない。もう吐くものすらないため、休む以外どうすることもできない状態だ。

それだけでなく、朝起きた時にはアレキサンドラに抱きついたままだった。その記憶は全くないのに、やっと素直になったのかという勘違いをされてしまった。

段々とアレキサンドラといるのが楽しいと思えるようになったとは言え、ちょっと抱きついただけで素直になったと勘違いするのは、勘弁して欲しい。


(はぁ…もう当分酒は飲みたくない…)


そう心に決めながら、ふらふら歩いていると、ドンッ!!と誰かに勢いよくぶつかってしまった。


「うわッ…!!」

「いってぇな!!なんだよぶつかってくんなよ!!」


最悪だ。乱暴な言葉遣いで私にキレてきたこの男は、確かトニーの友達だった気がする。本当に類は友を呼ぶというのはこのことを指すと思う。


「も、申し訳ございません!!以後気をつけます…!」


どこの世界にいても絶対に関わりたくない奴ランキングベスト5に入るタイプの男に無駄に絡まれる前に、謝罪してとっとと逃げようとした。


「っておいおい、こりゃミーシャ・グレイスじゃねぇか」

「えっ!?」

すれ違い様に腕を掴まれ、顔を覗き込まれる。そばかすだらけな上に、人のこと言えないかもしれないが死ぬほど酒臭い。トニーが普通に見えるレベルの不細工が迫ってきて、酒臭さも相まってまた吐きそうになる。

「折角トニーが可愛がってくれたのに陛下の愛妾になるなんてよぉ…俺の大事な友人を傷つけやがって…悪い子ちゃんだなぁ…へへ」

「ひっ…!!」

何故朝からこんな奴に絡まれなきゃならんのだ。腕掴んで顔を近づけるだけでなく、頬を撫でてくるのが気持ち悪い。そのせいで肌荒れしたらどうしてくれようか。

すぐさま顎蹴りとか腹パンをお見舞いしてやりたいが、こんな時に限って身体が動いてくれない。ここまで気持ち悪い絡み方をされたのは、前世での中学時代以来だったせいかもしれない。

「大丈夫だ、お前は可愛いからぶつかったことも特別に身体で許してやるよ…あの陛下より満足させてやるからさ…ひひっ…」

ごそごそとドレスの中に手を入れられた瞬間、一気にぞわぞわっと鳥肌が立った。


(ぎにゃあああぁああああ!!!!触るなこの酒カスの○○カス野郎がぁああああああ!!!)



「おい、その令嬢に何をするつもりだ?」


その声と共に、酒臭男の首元には太陽光でキラッと光らせる鋭利なモノが据えられた。

「ひぇえッ…!?な、何をする!?今良い所で…」

「良い所?どう見ても婦女暴行罪を犯そうとしているようにしか見えないが?」

下衆男に剣を向けている黒髪の男性は、青みのある紫色の瞳を鋭くさせ、男を睨みつけている。

恐らく、装いからして騎士団所属の人間だろう。

「って…お前は騎士団のッ…!?ぎゃぁあああ!!すみません!!すみませんでしたぁあああ!!」

剣を向けている人が誰かを知るや否や、クソ野郎は泣きながらあっさり尻尾を巻いて逃げていった。


「大丈夫ですか?それにしても、随分顔色が悪いようですが…」

寝癖は所々あるものの、サラサラした透明感のある黒髪のその人は、心配してくれるのか私に話しかけてきた。よく見たら顔が驚くほど綺麗で、そこに気づいたせいで謎の緊張を覚えた。

「え…あ、その…二日酔いで…本当に貴族令嬢失格ですよね…」

「……俺の姉と比べれば、そんな二日酔いぐらいでは失格にはならないと思いますよ」

そんなことないよというフォローは全く期待しておらず、なんなら失格だとはっきり言われる覚悟はあった。だが、姉と比較した上で思いの外真面目に返されてしまった。

姉は酒浸り系なのか、飲むたびに暴力的になるのか、それともキス魔とかにでもなるのだろうかのいずれかに該当しそうだ。

「……なんか…その、お姉さんのことを引き合いに出させてすみません…」

「いえ、姉のことは本当のことですし…あの人のだらしなさを見てきた俺からすれば、貴女は貴族令嬢として強い気質をお持ちだと思います。だから失格などと言わないで下さい」

この世界に来て以来、男性からここまで下心もなく真面目に褒められたりのは初めてだ。このドロドロな貴族社会でこんな身も心も綺麗な男がいるなんて信じられない。

「今日は少し休まれた方が良いですよ。先程の男のこともありますし…」

「っ!!そ、そうですね…ご心配いただきありがとうございます。えっと…」

「…私はディアナ王国騎士団所属のライヤ・ラズライトと申します」

「……ライヤ様、本当にありがとうございました」


ライヤ・ラズライトと別れると、私は自然と自分の部屋に向かって歩みを進めていた。

あることを思い出してしまったせいで昂り始めた神経と心を、どうにか落ち着かせたくなっていた。


(ちょっと待って…!!ライヤ・ラズライトって…まさに『花天』の攻略対象として探してたキャラじゃん!!なんであっさり帰っちゃったんだ私は!!)


まだアレキサンドラに出会って間もない頃に探していたが、なかなか見つからなかった攻略対象のライヤ・ラズライトに突然出会うことになるのは、想定外だった。顔を見てすぐ気づかなかった私も私で、本当に間抜けすぎる。

しかも、時期は違えど出会い方はゲーム通りだった。これがまだ記憶が戻ったばかりの頃だったら、素直に喜んでいられた。

しかし、アレキサンドラと思いの外仲良くなってしまった上に、ライヤを見た時に感じたもののせいで、出会えたことを素直に喜べない。

特に後者のことを考えているうちに、何故か段々と顔が熱くなってるのを感じた。


(何で…ライヤが真佑にそっくりだと思ったの…!?真佑のことなんてもう断ち切ったと思ってたのに…そもそも二人は全く似てないのに訳わかんないんだけど…!?)


ライヤ・ラズライトの顔に、どことなく真佑の面影を感じてしまった。もう真佑のことなんて忘れたいのに、先ほどのやり取りが余計に真佑を思い出してしまう。


一番幸せだったあの頃を。


水瀬真佑は、最後には浮気しやがった最低野郎だった。しかし、最初に出会った頃は違った。

ライヤ・ラズライトと同じくクールでありつつも、人の気持ちを静かに感じ取れる優しい人だった。


ライヤがついに再登場したので、攻略対象としてはこれで出尽くしました。

次回は水瀬真佑とどういう経緯で出会ったかの話です。

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