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記憶喪失の転生者  作者: 川咲鋏
第3章
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抗えない現実ならば

アレキサンドラから束縛宣言された後、私は絶望のあまりとにかく城の中をうろうろするしかできなくなった。結局迷子になったところを王妃の弟ドルーゼに保護されたかと思いきや、その人から軽く脅された。


『貴方は姉さんから王を遠ざけてくれる愛妾なのですから、その役割から逃げたら絶対に許しませんよ』


そんなドルーゼのシスコン発言に戦慄してその場から逃げようとしたら、その現場をたまたま通りかかったアレキサンドラに見られ、早速お仕置きされてしまった。

だから身体が怠くてまともに歩けやしない。

まだミーシャとして振る舞ってた時は壊れ物みたいに優しくしてくれたのに、急に色々としつこくなったのは解せない。


だから非常に最悪の気分だ。


朝起きた私は、ヤツを呼び出して、問い詰めることにした。


「…………"ミカエラ"、さっさと出てこい」

《あたしになんか用?》

「大ありだよ!!ミーシャの時と今の自分のことを受け入れたら死ぬって言ってたでしょうが!!今回割と自信あったのになんもなかったじゃん!!」

《あ〜、ごめんごめん。アレのこと言ってなかったか〜〜》

私がこんなに怒ってるのに、ミカエラは全然反省の色を見せず、ヘラヘラと笑っている。漆黒のスカート丈が短いドレスをひらひらさせて飛んでるのが無性に腹立つ。

「大事なことかもしれないこと普通に言い忘れてんじゃねぇよこのクソ悪魔!」

《悪魔なんて言ったら二度と教えないよ?》

どうやらミカエラは悪魔と呼ばれたくないらしい。どう考えても悪魔みたいな見た目をしてるくせに。

「ッ…………お、教えてよ…ミカエラ」

《え???何??"教えて下さい、神にも等しい美しきミカエラ"が全然聞こえないんだけど????》

この悪魔を一回ぶん殴りたい。自分のことを神に等しいとか言うなど思い上がりすぎにも程がある。

「お、教えてください…神にも等しい存在の……う、美しき……ミカエラ……様」

《聞こえな〜い、もっとはっきり言って》

「ッ〜〜!!教えて下さい!!神にも等しい存在の美しきミカエラ様!!!!」

屈辱的だ。私がこんな訳の分からん悪魔みたいな奴に頭を下げるなんて。

《よろしい、じゃあ教えてあげる。アンタが死ぬ条件は、自分の本当の気持ちを認めること》

「………………………は?」


自分の本当の気持ち??

何を言っているんだこの悪魔は。いじめっ子共を成敗したいって気持ちは本当なんだが。


《いじめっ子を成敗したいって気持ちは確かにアンタの本当の気持ちだった。けど、"ミーシャ"は本当にそう思ってたかなぁ?》

「は?いや…いじめられたら許せないって思うものでしょ?」

《…ミーシャの時のアンタは、あんなクズ共でも本当の友人だと信じようとしてたし、何を言われても受け入れてた。その気持ちを汲んだ上でアンタの気持ちを決めたら死ねるんじゃない?》

なんかめっちゃ適当な感じで言われたから、信憑性が薄い。

でも、考えてみる価値すらないわけではない。もしかして、アメリとマティルダをできるだけ穏便に許せば、アレキサンドラの愛妾を辞めると同時に死ぬことができるかもしれない。

屈昨日あれだけ成敗したこともあったから、ちょっとぐらいは許してやらんでもないかと考えてしまう。


《ていうかさぁ、まずアレキサンドラ以外の男を選ぶって選択肢はないわけ?折角ヒロインに転生したって言うのに》

「………………え?」


アレキサンドラと別れ、改めて攻略キャラを攻略し直すという考えは一切なかった。

もう王の愛妾になっちゃったから、アレキサンドラから離れることもできないとばかり思っていたから。


《ま、どうするかはアンタが決めなよ。じゃあね〜》


ミカエラが砂のように消えていくのを見届けた私は、色々考える。


攻略キャラは、四人と隠しキャラ一人がいる。グランディエとクロードはもう妻や恋人がいるので対象外だ。


(しかもクロードの場合はユリアナがいるんだよね…友達の恋人を奪うなんてクズで外道な真似できるわけないわ…)


略奪方面についても、クロードは完全に除外される。まだクロードがユリアナと付き合っていない状態ではあれば少しは検討する。しかし、恋仲になっている上にユリアナが思わず真っ青になるほど愛しているようだから、クロードだけは絶対に狙ってはいけない。


(よく考えたらゲームではグランディエのこともルイーズから略奪したようなもんだよね…?ヒロインが救われて良かったってことばかり考えてたし、ルイーズは別に友人でも身近な人間でもないからその辺を全然気にしてなかった…まあ、あの男も除外されてるからもう気にしちゃ負けだ)


グランディエとクロード以外だと、身近なところだと元執事のグレイが対象に入っている。しかし、ゲーム通りに公爵子息に戻って改めてヒロインに結婚を申し込むという展開も、現在では本人が父親からしばらく執事として鍛え直されているため、望み薄だ。

それ以上に、グレイはサラとくっつきそうな気配が匂っている。侍女の恋路を邪魔することはしたくないので、ここでグレイも除外された。


残りは隠しキャラ含め二人いる。隠しキャラはアレキサンドラと形だけ敵対するレイヴァン・ルベウスだ。

このキャラもかなり可哀想な境遇にありながら、人のために涙を流せる優しい性格なので、かなり人気だった。私も隠しキャラルートを攻略するために、アレキサンドラ側にいる通常の攻略対象達の好感度をわざと上げないどころか、むしろ嫌われる選択をしまくったのは良い思い出だ。

しかし、こうして国王アレキサンドラの側で過ごしている時点で、王位争いに破れた敵方のルベウスと関わってるのがバレれば、物理的に首が飛ぶ可能性がある。

非常に残念なことだが、レイヴァンは諦めるしかない。


(こうなったら、あのキャラに望みをかけるしかない)


婚約者や想いを寄せられている人もおらず、関わって首が飛ぶ心配のないキャラが一人だけいる。


それが、騎士候補のライヤ・ラズライトだ。

唯一ヒロインと同い年の人である。青みがかった黒髪と、青紫色の瞳が特徴的だ。

ライヤは他のキャラに比べると、あまり人当たりが良いタイプではない。クールで誰とも関わろうとしないため、周りからは『冷酷の騎士』なんて言われている。

ライヤとの出会いは、ヒロインが粗暴な男性に絡まれているところを助けるシーンである。その後、ライヤが時々宮廷の宴を抜け出すのを見つけて、最初はお礼のつもりだったが、何度も会っているうちにお互い惹かれていくというものだ。

ライヤルートの結末は、ハッピーエンドはトニーから助け出した後、自分の家で結婚を誓うというものである。

バッドエンドは、ヒロインを助けようとした攻略キャラ全員を人質にしたトニーを倒す代わりに全員巻き添えで殺した罪を償うために、ヒロインの元から去るというものだ。

それでも他のキャラのルートより断然クセがなく平和なので、ライヤルートは初心者向けと言われている。


「………もうライヤに賭けよう」


そう思った私は、ライヤに出会うために宮廷内をうろうろすることにした。


一回ぐらいは会えるだろうと思って。



      ーーーーーーーー


ライヤを探し続けて、一週間後。



(………………なんでライヤと全然会えないの!!??)


いくら宮廷の賑やかしい空間が苦手なライヤでも、こんなにも会えないなんておかしすぎる。騎士団で忙しいせいだとしても、毎日宮廷に行って隈なく探したにも関わらず、ライヤの姿を見かけることは一度もなかった。


ライヤ以外の騎士団の人たちは数人見かけることができたのに、肝心の本人とは全く会えなかったのは釈然としない。

加えて最悪なことに、宮廷をうろうろしていたせいでまたアレキサンドラに逃げようとしたと誤解され、またしてもお仕置きされた。


(あの変態男マジで覚えてろよ…っ…ていうかマジでどうすれば…ライヤと会えないままバッドエンドを迎えたら…)


私は、このままアレキサンドラと共に過ごさなければならないのだろうか。

バッドエンドを回避する手立ては、死ぬ以外なくなってしまった。否、最早ミカエラの言う方法で死んだ方がマシかもしれない。


(我ながら本当に暗い考えだな…いよいよ来世に期待するか…)


この世界にも言うほど未練はないため、リセマラ的に死んでも後悔はしないだろう。この場所には絶対愛着を持たないように過ごしながら、ミカエラの言った死ぬ方法を早く探っていこうと思った。


「お嬢様、陛下がお呼びです」

「……………嘘でしょ」


決意を固めたところで地獄の知らせがやってきて、私は絶句した。

アレキサンドラは鬼か悪魔なのかと思いながら、渋々宮廷に向かう準備を始めることにした。


「あ、そうだ…サラ。化粧とか服、自分で選んで良い?」

「?は、はい…お好きにお選び頂ければ…」


宮廷の人達からは"本性を出してしまった記念"のように思われるだろうが、折角なら死ぬ前に"ミーシャ"らしくない自分の好きな格好でもしたい。

そう思い、この身体では恐らく初めての我儘をサラに言った。


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