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エインシェントボールド・サーガ  作者: いしいちゃん


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第2話 大男、ボールド族に歓迎される

水の楽園レイクのある島を浮かべる湖。

湖北側には山脈がひかえ、複数の小川が湖に豊かな水をレイクにそそいでいる。

湖西側には、湿地帯がひろがり、東は深い森、そして南側には乾いた土に中木がまばらに点々としている貧しい土地が広がり、その一角にホールド族の集落はあった。


「また追放されてきたのかい」

集落の境界を示す木柵の外に乱暴に捨て置かれた俺の手綱を外しながら、貧相にやせ細ったホールド族の長老は優しく寄り添ってくれた。

集落に招き入れられ集落に入ると、広場に通され、世話役のおじさんが、一番気にしていた下半身を隠すように葉っぱの紐パンのようなものを手渡ししてくれた。

俺は自信のない下半身をすぐに葉っぱで隠した。

この世界にやってきて、初めて生きた心地がする。

座るように促され出してくれたお茶も日本の緑茶のようでほっとする、おいしい。

ほどなくして周りに小さなおじさんたちが人懐っこい笑顔で集まってた。

皆、俺と同じ薄毛だな…

彼らの下半身は、俺と同じく葉っぱのふんどし?紐パンで隠されていた。獣の皮で下半身を隠していたレイクの兵士よりは劣るものの、文明はあるようだ。

「大男名前は?」「強そうだな」「お腹すごいな」などと興味持ってくれているのか俺の腕や腹をぺちぺち触りながら聞いてくる。

人生で初めて大男といわれた。転生して周りが小さくなったのか、俺だけ大きくなったのか。

見渡す限り痩せてて1メートルに足りない身長の小さい禿げたおじさんばかり、イケメンの兵士♂Aも少し高くても130cmくらいなので身長150cmは彼らからするとかなりの巨漢なのだろう。

すっかり気を許した俺は大層に名乗った。

「名前は勝男」

「ん?」長老の顔がはてなマークに支配される。

「カツボ?」「ボツオ?」周りが騒ぎ立て始める。

「(俺ボツオ?)……」

「人に名前を尋ねるときは自分から名乗らねば、か」皆に聞こえるよう得意げに長老が言い出した。

「私は長老ボス」

長老の名前ボスって。夢の中ならば俺の脳みそが知れている。

「ボックス」「ボール」「ボタン」「ギーボ」「イーボ」「ボーボー」「ターボ」…などなど続く。

俺が名乗らないから、自己紹介ラッシュが始まってしまった。

「おれはボーリング」「ぼくはボク」

ぼくはボクって。ん?ボがつかないといけないルール?

「おれは…(ビックボーイ)」小声でいってみた。

「ん?ビックボーイ?」隣にいたボスに聞き取られていた。今まで大きかったことないのに小さい人に囲まれてビックボーイなんてっおじさんの中2病は恥ずかしすぎるっ

やばいやばいやばいいそげいそげいそげっ

「いや、おれは『トンボ』です」

とっさについたこの世の源氏名は『トンボ』。そう俺はトンボに誘われてきた異邦人。


人懐っこいおじさんたち(禿げているだけで若い男もいるようなので、以下男たちとする)に囲まれながらも一通りあいさつを終えると、広場の焚き火が灯され、女性も子供も交じり宴の準備をしてくれているようだ。

子供たちは巨体に興味津々なのかおもむろにこちらに丸い目をまっすぐ向けてかわいいし、若い女性もいて可憐でちっさくてカワイイ。でもキモいっていわれたくないので、横目でちらっと1秒見ただけですっ

そのあとは焚火を囲み干した果実と炙ったホド芋みたいなものが出され、現代人からすると質素な慎まやかな歓迎の儀が行われた。

食事を終えると、子供と女性たちは各家(藁ぶきの簡易テントのようなもの、以下『テント』)に帰り、男だけの盆踊り大会が始まった。女子残らないんだ…残念じゃないし。

楽器も踊りも和風に近い。すぐに馴染み、パラパラのような盆踊りのような踊りを踊る。

ふと考える。転生なのかあの世なのかと考えていたが、やはりここが現実なのは実感としてある。

でも、ずっと一貫して世界観に既視感がある。

たとえば俺の夢ではないだろうか。

いま俺は病室にいて意識不明の植物人間状態、五感からの情報が途絶えたとき、俺の小さな脳は、小さな独自の世界を創り出し、俺を放り込んだのではないだろうか。

俺のコンプレックスの薄毛の人たちに囲まれているし、みんなの背は小さい俺より小さいし、踊りはほぼほぼ日本の盆踊りだし、言葉も日本語だし…

俺の陳腐な脳で創りし異世界。いつか突然たたき起こされるかもしれない。もしくはあの世に行くかもしれない。

でも、それまでは。

頭一つ抜けた大男の俺は、小さな禿山の群れを高いところから眺めながら踊り、「トンボ」の名で生きていくことを決意した。

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