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エインシェントボールド・サーガ  作者: いしいちゃん


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第1話 お酒はほどほどに。裸で転移させられます

 楽しみなんてお酒くらいしかない。同僚と安酒を呑み上野駅に向かう道中、小便をもよおし一人別れ、公園入口のトイレへ駆け込む。トイレから出ると心地よい風が火照った顔面を触る。一人でまたお金もないのに『秋津勝男(あきつかつお)』は、再び夜の街に繰り出した。

その夜いつのまにか公園で寝ていた俺は、美しい七色のトンボをみた。

それは神々しい羽化の最中。

それは昔手に入れなかった夢たちのようで、追いかけ手を伸ばせば遠くなる。

それでも吸い寄せられるように俺は静かにすり足でそーっと近づい……


 池に落ちた。命の危険を感じ慌てて全力全身でもがく。足のかかとで池の底をみつけ、それを支点に上半身を跳ね上げる。池の深さはひざの高さまでくらいしかなくひとまず死ぬリスクは回避したようだ。ただ酒は抜けておらず頭がくらくらする、気持ちも悪い。泥まみれの閉じていた瞼の泥をこすりとり目を開ける。

「…まぶしっ」池で寝てしまっていたのかもう日が明るい時刻になっているようだ。

水面はキラキラ輝き、俺の頭上をせわしく数多の七色のトンボが不規則に飛び回る。

対岸は緑豊かで街だろうか建物のようなものがいくつか見える。そしてその先には小山のようなものが鎮座して、この世のものとは思えないどのに美しい。ん?あの世か?

対岸に向かい七色のトンボに案内されながら浅い湖を歩き始めた。どうやら対岸までこの深さが続くようだ。

暖かく美しい湖、小さな川魚が水草を揺らし、水草を踏むたびに川海老やイモリなど小さな生き物が足元から散る。きっとトンボのヤゴなど水生昆虫もいるのだろう。

足元から声が聞こえる?

「おい!久しぶりじゃないか!?たまには顔出せ、こっちは何千年とひましてるんだ」

足元には1匹のアカハライモリ。ん?あの世ではアカハライモリもおしゃべりするの?

俺の想像力のなさだな。

地獄にでも誘われちゃうのかな?とりあえず無視するか。

「いくなよ。あいつらのことは気にするな。おい!」

気持ちよく美しいあの世を散歩していると、、、いや「薄情者!」「意気地なし!」「じいさんのじいさんのずーとじいさんから聞いてないのか?」ほど罵声や意味不明な言葉を背に感じながら、俺は対岸の街に上陸した。

途中まで俺についてきていたイモリの罵声も、七色のトンボももうついてこないらしい。

町並みは小山の周りを囲むように建てられ、雰囲気はバリ島のような南国リゾート、いや地中海を思わせる。

どちらもいったことないけどっ。

そして遠くのお山の頂上には、ん?大仏?

俺は目を細め遠くの山頂にピントを合わせる。

ん?でっかい『ドラゴン像』が鎮座していた!

(俺は異世界に転生してしまったのか!?)

「…猿人がなんでここにいる。しかも」

ドラゴン、のようなものをみて現実感を失った俺が声のする方に振り向くと、そこには転生もの定番の金髪ご令嬢!姫?これはあの世じゃなくいよいよ転生ものか?

「汚いものをだすんじゃないっ!どこから入ってきた?」

お年頃のお姫様はごみを見るような目で俺に問う。正対するとこのお姫様中学生くらいか、ちっちゃかわいい。なぜだかヒョウ柄のワンピースを着ている。

「いや酔いつぶれて、起きて池に落ちて、、こんにちは(o^―^o)ニコ。お名前は?」俺は満面の笑みで取り繕う。

「、、、それは?」俺の下半身を指さすパツキンヒョウ柄ボディコン美少女。

「え?」「は?」

最近この界隈で外国人の女に変な安酒飲まされ最後は裸で路上に捨てられる、そんな怖い犯行が横行していると聞いてはいたが、自分がその追いはぎの被害者になるとは。

それからすぐに古代兵士風の雄どもが駆けつけてきた。

服は腰に獣の皮のスカート的なものをつけ上半身は裸、その雄どもに取り囲まれ、ボコボコに殴られ気持ちよく酒まみれのゲロを吐き、気絶していたのか気づいた時には、薄暗い洞窟で手足縛られ吊るされてた。

ほぼイノシシのあつかい。

このままでは丸焼きにされてしまうのではないかと怯えてみるも、本気では実感がわかない俺は現代人なんだろう。

ほどなくして下され、みはり(兵士♂Aとしておく)の片手には俺の手綱、片手には槍。槍でマジで小突かれながら牢屋の外に出された。俺、手足しびれて歩くのしんどいんだけど。。。

「どこにいくんだ?」

「・・・」兵士♂無言

「・・・名前は?」

「・・・」兵士♂無言

ひとががんばって和まそうと声かけてるのに嫌な奴だなっ

兵士♂Aは、屈強でアングロサクソン系の目鼻立ちがはっきりしたGood Looking Guyだ。こんなやつら俺の人生で一度も関わったことない。

ただ、古代設定かな?この世界の特徴か兵士♂Aも130㎝くらいか。

150㎝の俺よりさらに小さいから、だいぶ許せる。小さくて悪かったな。


どこに連れていかれるのか、手綱を引かれ悪路を歩かされながら、俺はうれしかった。

どうせなら中世ヨーロッパがよかったなあなどと思ってみたりとニヤニヤがとまらない。

何も得られず社会から見放され、身寄りもなく親友と呼べる友もなく彼女なんかいたこともない。そんな現実から地獄か夢だか転生だか知らないけど、逃避できたのかもしれない。

そしてぬかるんだ小道を裸足で踏みしめるたびそれは確信になっていく。

50歳になってもうだつの上がらないサラリーマンは、現実逃避には成功したのだ。

低身長、薄毛、肥満、初老、貧乏、非モテ要因コンプリートの現実で滞っていた()()()()()()()がついに動き出す。

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