心霊スポット巡り⑤
微かに雑草が折れ曲がった道無き道を私達は一列になって進んで行く。
そうして暫く歩いて行くと突然開けた場所に出て来る事が出来、そして私達の眼前には探し求めていた観覧車が姿を現していた。
「意外に小さいな」
懐中電灯で照らし出された観覧車を見つめて透が呟く。
確かにその観覧車には大人二人が乗れる程のゴンドラが五つついただけの小さな物だった。
だが雑草が生い茂る暗闇にそびえ立つそれは見た目以上に威圧感を感じさせた。
「なんかちょっと不気味だな……」
「そうだね、なんか五つのゴンドラが五芒星みたいにも思えるよね」
私の問い掛けに二人は苦笑いを浮かべながら頷いていた。私達のようなオカルトマニアは、些細な事でもついオカルトチックな事に結び付けてしまう傾向にある。
少し遠目で観覧車を眺めえていた私達だったが暫くして祐司君が近付いて行く。
その後を私と透がゆっくりと歩いてついて行った。
「さすがに誰かが乗ってるとかはないよな」
祐司君が少し笑みを浮かべながら呟く。
噂では観覧車が動いていたりゴンドラに誰かが乗っていると言われていたが、こんな廃墟みたいな場所で観覧車が動いている筈もなく、もし誰かが乗っていたら私達は驚いて卒倒してしまうだろう。
よくオカルトが好きじゃない人達からは「霊とか怖くないんだね」と言われるが、そんな訳がない。
もし私達が霊や心霊現象に何も感じないのなら心霊スポット等を巡っても何も楽しくは感じない筈だ。
怖いからこそ、心霊スポットを巡るのが楽しいのだ。
その楽しさがわからないと言われる事も多いけど、私はその楽しさを共感できる恋人や友人を手に入れる事が出来た。
私はそんな喜びも噛み締めつつゴンドラの一つを覗き込んだ。
何もいないのはわかっていたが、『もし何かがいたら』なんて事が頭をよぎり、恐怖と僅かな期待感で私の鼓動は高鳴っていた。
だがやはりゴンドラ内には誰もおらず、もう誰も座る事もない錆びて朽ち果てた座席が虚しくそこにあるだけだった。
「さすがに何もないね」
「そうだな」
少しホッとして私が話し掛けると、透も安心したように笑顔を見せていた。
「そろそろ戻るか」
一通り観覧車の周りを探索した所で祐司君が声を掛けてきたので私達もゆっくりと頷いた。
そうして私達が来た道を戻ろうと観覧車に背を向けた時だった。突然後方から〝ギギギギ……〟と不気味な金属音が響いたのだ。
私達三人が慌てて振り返ると、観覧車のゴンドラの一つがゆっくりと右に左にと、揺れていた。
突風が吹いた訳でもない。なのにゴンドラが一つだけ不自然に揺れている。
突然私達の間に妙な緊張感が張り詰めていくのがわかった。