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訪れる異変


 透に抱き締められ、少し落ち着いた私が時計に目をやると時刻はまだ午前四時を回ったぐらいだった。


「ありがとう、ちょっと落ち着いた。すっきりしたいから一回顔洗ってくるね」


 一息ついた後、透に礼を伝え、私は洗面所へと歩いて行く。

 洗面所で顔を洗い鏡を見つめると、そこには酷く疲れた顔をしている自分が映っていた。


「……はは、酷いな。なんか一気に年取った気分……」


 鏡を見つめ自虐的に笑っている時、ふと廃村にあった鏡を思い出してしまった。

 途端に恐怖心が沸き上がり、私は慌てて透のいるベッドに戻ると静かに体を滑り込ませる。

 透は既に寝息を立てていたが、私は体を密着させてそっと目を瞑った。


 しかしその後私は眠る事が出来ずにそのまま朝を迎えてしまった。


 窓から射し込む陽の光が目にしみる。だが明るくなっていく部屋を見て安心感は広がっていった。


 私はこのままベッドにいても眠れる気がしなかった為、ゆっくりとベッドを抜け出した。

 そのまま朝食の支度をしようかとも思ったが、寝不足のせいかどうにも体が言う事を聞かない。

 仕方なく私はそのままソファに体を預けて横になる。


 そのまま特に何も出来ずに時間だけが過ぎて行き、そのうち透も目を覚まし起き上がる。


「どうした?何処か体調悪いのか?」


 普段あまりだらけた姿を見せない私を見て、起きてきた透は少し驚き、ソファで横になる私に声を掛けてきた。


「うん、ちょっとなんだろ……疲れたのかな?」


 笑顔を作って返したが恐らくぎこちなかったのだろう。透は苦笑いを浮かべて心配そうに私の顔を覗き込み、そっと私の頭を撫でた。


「今日はゆっくりしようか」


 そう言って私の頭を撫でながら透は微笑んでいた。


 結局私達はその日一日、特に何かをする訳でもなく、透の言う通りゆっくりとした休日を過ごし、そして早めに就寝する事になった。


「おやすみ」


 簡単な言葉を交わし、ベッドで横になる。時計の針は十時を回った辺りだったが倦怠感と寝不足のせいか、私はすぐに眠りについた。


 だが気が付くと私は再び霧がかった山中に佇んでいた。

 私の数メートル先には例の黒ずんだ小さな廃屋があり、私は恐怖心から二、三歩後退りする。


 逃げなきゃ――。


 理由なんかなかった。絶対に良くない事が起こると直感し、私が身を翻し走り出そうとした時だった。


 〝ギィィィィィィ……〟


 軋む様な不気味な音が後方で響いた。


 走り出そうとした私の足は止まり、思わず息を呑む。静かな山中に、私の荒れた呼吸だけが聞こえている様だった。


 何かがいる――。


 後ろから何かの気配を感じ、恐怖から私の鼓動は早まり呼吸も荒れていく。

 私は例えそこに何かがいたとしても、後ろから感じる気配が何なのか確認せずにはいられなかった。


 私は覚悟を決めゆっくりと振り向く。


 すると、そこにあった廃屋の扉は開き、傍らには笑みを浮かべた祐司君とえんじ色の着物に身を包んだ例の女の子が不気味な眼差しで私を見つめて立っていたのだ。

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