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JK³~地雷系・邪神の化身・女子高生。あるいは女子高生×3。  作者: 於田縫紀
第5話 第一生徒会とシミュレーター訓練
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25 学園島の食事事情

 本日の夕食は一人増えている。

 カドちゃんが乱入したからだ。  


「明日は明日として、今日は割とあれこれやって疲れたのです。ついでに言うとそこの食堂のランチは食べ飽きたのです。だいたい夕食営業なのにランチという名称は許せないのです。というのはともかくとして、まっとうな夕食を恵んで欲しいのです」


 こんな感じで。

 訓練の帰りに買い物をしたので、材料は揃っている。

 メインは今回もあの怪しい宗教団体で購入した魚介類。

 昨日のイカもまだ冷蔵庫に残っている。  


「今日は刺身とカルパッチョ、モクズガニの味噌汁、イカの塩辛だけれど、いい」


「大歓迎なのです。刺身なんて自分では滅多に買わないのです」


 やはり学生はそれが普通なのだろう。紺音の料理が豪華過ぎるのだ、きっと。

 もちろんそんなことは口には出さない。

 料理は紺音の趣味という感じだから、制限しない方がいい気がするから。

 今日の買い物は弁当3回分よりはお安かったから、金額的な問題もないし。


 キッチンは紺音の聖域なので、私とカドちゃんはリビングで待つ。  


「カドちゃんは前からこうやってご飯を食べに来ていたの?」


「一ヶ月に六回までにしているのですよ。学食のメニュー、ほぼ一通り食べて飽きたのです。しかもそれほど美味しくないので、つい紺音ちゃんに頼ってしまうのです」


「それって、毎週一回以上のペースだよね」


「これでも遠慮しているのですよ。遠慮しなければ毎日来るのです」


 おいおい。

 しかし私は今後、毎日ご飯をここで食べる予定だ。

 だからカドちゃんを突っ込める権利は、私にはない。

 もちろんこれは、紺音から申し出てくれたことではあるのだけれど。  


「そもそもうちの学食、美味しくないのに安くないのですよ。スーパーというか購買部もお値段やや高めなのです。休日に徳山に遠征して、ザビックルとかトライエックスとか業販スーパーで買い込むのが正しいのですよ。でもそうすると生鮮が厳しいのです。ラーメンと真空パックと缶詰、冷凍パンの生活になりがちなのです」


 うん、これは何となくわかる。

 今の紺音の料理より、カドちゃんがいった内容の方が、かつての私の食生活に近いから。  


「学食が美味しくないって、どんな感じ?」


「たとえばAランチは、切れ端のような野菜屑と小指の爪くらいの肉6個程度を中華出汁で煮て、とろみをつけただけの代物をご飯にかけた代物なのです。これに具がもやしだけで味噌の風味が飛んだ味噌汁がつくのです。こんな悲しい代物に四百八十円なんてプライスがついているのです。もう部屋で袋ラーメン茹でて食べた方がましなのです」


 なるほど、私にも想像できる悲しさだ。  


「学食ってそんなのばかりなの?」


「悪くないメニューもあるのですが、お高いのです。例えばカツ丼は七百九十円するのです。学食なのにこの値段は高すぎるのです。今のテナントでなくて全国チェーンのカツ丼屋や、九州でメジャーなお安いファミレスと代わって欲しいのです。

 というのはともかくとして、奨学金での標準的な食費は朝がモーニングA、昼と夜がAランチで計算されているのです。一日の食費合計が千四百四十円なのです。なので学食オンリーの場合はAランチ以下に抑えるためにライスと納豆、味噌汁を単品で組み合わせて三百三十円の通称ビンボーセット、あるいはたぬきうどん三百五十円に頼る日が多くなるのです」


 なるほど。

 ちなみにモーニングAは、四枚切りトースト2枚にパックのバター、目玉焼き、ソーセージ1本、野菜ちょっと、味噌汁というメニュー。

 パンに味噌汁というセンスが意味不明。ちなみに四百八十円だ。  


「でもそれだと、特に夕食が足りないって人が出てこない?」


「多いのです。サークルや部活で共同で自炊している生徒が結構いるのです。探索部あたりは毎週背負子を背負って買い出しに行っているのです。駅北口の業販スーパーで安っすいスパゲティやパンを大量購入して背負って帰るのです」


 第一生徒会でも夕食を作っていたなと思い出した。

 皆さん苦労しているのだなと思う。

 しかし、それなら……  


「第五生徒会では集まって自炊とかしないの?」


「忙しい時以外はやらないのです。新聞部なので情報元へ行って飯を食ってこいが基本スタンスなのです。ただ今まで情報源として紺音ちゃん以上に面白い相手が同級生にいなかったのです。結果として基本自炊、月六回までは紺音ちゃんにたかっていいという自分ルールを確立したのです」


 微妙に言い訳臭さを感じる。

 ひょっとして……  


「他に食べに行って受け入れてくれる場所がなかったりするだけじゃない、ひょっとして」


「真実は人を傷つけるのです。ついでに言うと私は人見知りするので、新規開拓なんてことはしたくないのです」


「紺音の部屋とはいえ私しかいない部屋にいきなり入ってこれるのに、人見知りというのはちょっと不思議な気がするけれど」


「紺音ちゃんの判断は絶対的に信頼出来るのですよ。だから紺音ちゃんが同居していいと判断した彩香さんなら無問題(ノープロブレム)なのです」


 なるほど。

 あれこれ理由をつけてごまかしている。

 けれど私にとっての名居か名居にとっての私かはわからないけれど、似たような関係のように感じた。  


「ならご飯代を払えば、もう少し来てもいいんじゃない?」


「おぜぜは一応払っているのです。二ヶ月に十二回で米五キロ一袋なのです。お金で払っても受け取らないし食材は紺音ちゃん自身が選んだ方がいいので、米の現物提供にしているのです」


 なるほど、正しい。

 そう思ったのだけれど……  


「それにこれからは、あまりこの部屋に来過ぎない方がいい気もするのです。この部屋は紺音ちゃんと彩香さんの愛の巣なので、お邪魔をしては申し訳ないのです。元が単為生殖生物なので、有性生殖の感覚というものが今ひとつわからないのです。だから此処はさっさと発展させて実例を見せて欲しいのです」  


 おいおい、そう続くのか。

 しかし昼間も同じようなことを言っていたし、本心ではあるのだろう。

 そもそも中高の生徒で同居なんて、普通は出来ないだろうから。  

 というか、そもそも同性なのだし、有性生殖関係ないだろう。


「ただ今日は食欲に負けたのです。なので有性生殖の観察は明日以降にするのです。ということでそろそろ夕食が出来上がるのです。運ぶのは手伝えるので一緒に行くのです」

「はいはい」


 カドちゃんに続いて、私も立ち上がってキッチンへと向かう。


 ◇◇◇  


 一口で刺身と言っても、

  ○ メバル(皮を湯引きしたもの)

  ○ アジ(昨日と同様、小さめのアジの半身をそのまま)

  ○ カレイ(肝やエンガワ付き)

  ○ イカ(昨日買ったもの)

がそれぞれ和風とカルパッチョになっている。

 カルパッチョ側はトマト、レタス、タマネギ、アスパラガスを使ったサラダ仕立てで、野菜と一緒に食べても美味しい。

 和風刺身側は醤油もいいけれど、ポン酢醤油も美味しい。

 肝はポン酢醤油だと最高。


 カニの味噌汁はカニがそのまま入っているのではなく、ふわふわのカニそぼろとカニミソが入っている。

 これが普通の味噌汁とは段違いに味にコクがあって、ご飯にあう。


 更には昨日のイカで作った塩辛や、南蛮漬けなんてのも出ている。

 塩辛は使っている肝が小さいので色は白い。

 しかしやっぱり美味しくて、ご飯に合う。


 そして南蛮漬けは甘酢が良い感じで効いていて、やはりご飯にあう。

 揚げたイカも美味しいけれど、揚げカボチャに甘酢がしみているのも無茶苦茶美味しい。  


「これだから、紺音ちゃんの部屋に来るのがやめられないのですよ」


 そう言っているカドちゃんだけ、刺身用の醤油が違う事が気になった。  


「その醤油、特別なのですか?」


「紺音ちゃんとは醤油の好みが違うのですよ。私は醤油は甘い派なのです」


 醤油は甘い派?

 何だろう、それは。

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