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20 解説担当カドちゃん⑴

 決闘で、おしおき!?

 ここはちょっと、説明が欲しい。

 でもその前に、まずはこっちから。


「カドちゃん、前に教えてくれた注意、めっちゃ役に立ったよ。ありがとう」


 カドちゃんのアドバイスがなかったら、紺音への攻撃なんて絶対避けられなかった。

 あの場面、本当にピンチだったから。ちゃんと感謝しておかないと。


「どういたしまして、なのですよ。あの時のアドバイスがちょっと曖昧だったのは、未来を変えないための工夫だったのです。とりあえず万事OKって感じで、まずは良かったのです」


 カドちゃんの言葉にちょっとホッとして、頭を軽く下げる。

 さて今度こそ、本題の質問。


「ところで決闘でおしおきって話は分かったけど、どうしてそうなったのか、もう少し詳しく教えてほしいな。あと決闘がおしおきとして本当に適切かどうか、もし適切ならどんな効果があるのかも」


「了解なのですよ。ちょうどここに、資料のパワポが入ったパソコンがあるので、画像付きで解説するのです。その辺の椅子に適当に座ってくださいなのです。パワポは前のモニターに映すので、どこに座っても大丈夫なのです」


 そんな資料、ほんとにちょうどパソコンに入ってるものなのだろうか?

  しかもモニターに映るように準備されてるなんて、ちょっと怪しい。


  でもそういえば、前にカドちゃんが言っていた。


『これでもイス人なので、時間軸なんてちょっと無視できるのですよ。何日後とか何年後とかに紺音ちゃんに聞いて知ったことを、今ここで把握するなんて簡単なのです』


 ってことは、きっと事前に知ってて準備してたんだろう。

 そう考えるとカドちゃん、意外とマメで親切かもって思う。


「それではまず、この事案の背景、第二生徒会の実態からなのです」


 50インチくらいのデカいモニターに、『第二生徒会の概要』ってタイトルが表示された。

 内容は、

 ○ 会長を筆頭とする役員5名の名前、学年、学級

 ○ 所属団体名と団体数、所属団体に属してる生徒の総数

って感じの情報だ。


「第二生徒会はいわゆる『旧神』カテゴリの神の力を使える生徒がメインなのです。ただ、旧神の中でもノーデンスは学園管理のために第一生徒会に属してるので、それ以外の旧神の力を持つ生徒が、役員をやってるのです」


 画面に表示されてるデータの中で、所属団体数と総生徒数に赤い線が引かれる。

 更に青文字と黄色文字で括弧書きの数字が出てきた。


「今出た青字の括弧書きは第一生徒会所属の団体数と生徒数、黄色文字は第三生徒会所属の数値なのです。第二生徒会は、第一生徒会の三割以下の勢力で、第三生徒会にほぼ並ばれそうな状態なのですよ」


 数字を見て、なんか引っかかったので聞いてみた。


「生徒数の話なんだけど、三つの生徒会の数を足したら、中高の総生徒数超えてない? 気のせい?」


「重複してる生徒がいるから、これで合ってるのですよ。例えば私は第五生徒会の役員だけど、第一生徒会傘下の漫画研究会第一にも属してるのです。囲碁部も、第一から第三までそれぞれの生徒会に所属してるけど、実際は同じ部でメンバーも同じなのです。宗教絡み以外の団体はだいたいそんな感じで、実質的に複数の生徒会に所属してるのです」


 なるほどね。

 なかなかに適当な感じだけど、これがこの学園島のリアルってことのようだ。


「あと、第二生徒会の勢力がそんなに強くないのは、旧神ってカテゴリの位置づけ上、仕方ないのです。そもそも外なる神、旧支配者、旧神ってカテゴリ分けは、人間の勝手な都合や思い込みで作られたものなのです。

 この辺、地球上に広まってるクトゥルー神話には、結構誤解があるのですよ。ここで補足説明するのです」


 画面が切り替わって、新しいタイトルが表示された。


『いわゆるクトゥルー神話の間違いについて』


 カドちゃんがマウスをクリックすると、タイトルの下に文字が浮かんだ。


『ダーレス神話による悪影響』


「クトゥルー神話とは、元々ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが、宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)って概念で書いた小説がベースなのです。

 本人は気づいてなかったみたいですが、ラヴクラフトは外なる神の一柱から啓示を受けてたようなのです。だからこの時点では、神についての記述はわりと正確だったのです」


 私は、SFとか怪奇小説ってほとんど読まない。

 だからどんな誤解があるのかは、全然知らない。

 カドちゃんの説明は、更に続く。


「でも、この宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)、一般の人には分かりにくいし、物語として面白くない設定だったのです。そこでオーガスト・ダーレスが、この神話の世界に、もっと分かりやすいけど通俗的な概念を持ち込んだのです。具体的には、正義と悪の対立とか、四大霊(火、水、大地、大気)による派閥とか。

 そのせいで、善の旧神、悪の旧支配者や外なる神なんて概念が生まれてしまったのです。さらに、悪の神が栄えてないのは、旧神に封印されたから、なんて、力関係を考えたら笑えるような設定まで出てきたのです」


 画面上の『ダーレス神話による悪影響』の下に、

 ○ 善である旧神と、悪である旧支配者や外なる神の対立構造

 ○ 旧支配者や外なる神が封印されたという設定

 ○ 四大霊(火、水、大地、大気)による派閥

という表示が出て、更にその上にデカい×印が描かれた。


「これは全部、実情に合わない設定なのです。外なる神も旧支配者も旧神も、実際はほとんど違いがないのです。あと、アザトースが白痴に見えるのだって、知性が違いすぎて人間が理解できないだけなのです。

 世間に広まってる情報と実情のギャップは、結構多いのですよ。でもここでは、旧神ってカテゴリ分けが実情と違うってことだけ分かってもらえればいいのです」

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