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12 見えかけた地雷

 ひととおり紺音から話を聞いた結果。

 この学校の概要については、一通りわかったように思う。


 この学校は、神の力を研究していた米国(アメリカ)のミスカトニック大学によって、更なる研究と実践の為に作られた施設。

 日本に作ったのは、一神教の影響がほとんど無く、多様な神を集めても問題になりにくい環境だから。

 他の国、特に旧約聖書由来の一神教の国々に作ると、テロだとか抗議活動とかで面倒な事になりかねないらしい。

 それでも念には念を入れて、独立した島を敷地にしたそうだ。

 

 神の力の持つ者を集める為、奨学金制度が充実。

 更に神の力をより強く開発し発揮出来るようにする為、課外活動の制度や研究補助制度等を整備。

 その課外活動の一環として、課外活動や特採生徒のポイント付けがある。


 サークルや部活は取得ポイントによって、来月に渡される予算が決まるほか、使用出来る部室や備品のランクも上下する。

 そして特採生徒はポイントによって奨学金の金額が上下するという仕組みだそうだ。

 あとポイントの他、戦闘力ランキングなんてものもあるらしい。


「彩香は第六生徒会を倒した事で、高等部内での戦闘力ランキングが一気に上がった。学園での決闘に慣れないうちに倒してポイントを稼ごうという輩が出るのは必然。

 また戦力増強の為、彩香を仲間に引き入れようとする所も出てくる。特に第二生徒会とその傘下のサークルは彩香の確保に動く筈」


 この島でも私は、戦闘から逃れられない様だ。


「戦闘力ランキングなんてものがあるんだ」


「学内SNSで確認可能」


 今まで聞いた話や第六生徒会と戦った経験から考えるに、あっても不思議では無い気はする。

 でも待てよ。


「戦闘力って、奨学金が上下するというポイントと関係があるの?」


「戦闘力ランキングは、今までの決闘その他の実績から推測される強さの順位。ポイントは決闘やサークル対抗戦での戦績と、課外活動運営に対する協力実績その他を加味したもの。

 決闘やサークル対抗戦等の戦績で得られるポイントは、お互いの戦闘力ランキングの順位によって決まる。たとえば順位が低い者が高い者を倒した場合、得られるポイントは高くなる」


 なるほど、大体わかった気がする。

 戦闘力ランキング上位で倒しやすい相手というのは、ポイントを稼ぐ為のカモになりやすいということの模様。

 後でSNSを見て、私のランキングを確認しておこう。


 あと気になるのは、先程ナイトゴーントが私を襲った件だ。


「襲ってきたナイトゴーントは、第二生徒会か第三生徒会関連って言っていたよね」


「第二生徒会は基本的に旧神関連のサークルを統括していて、第三生徒会は地球本来の神々関連。Night-gauntsは、主にこの二つの生徒会とその傘下のサークルが使役。

 そして彩香の力の元であるGlyu-Vhoの戦士は、旧神であるOrryxの勢力で、この学園的には第二生徒会側の存在。

 だから第二生徒会とその傘下のサークルは、彩香を仲間と見做して引き入れようとする可能性が高い。それ以外の勢力なら基本的には決闘でポイント稼ぎ。

 ただ仲間でなくても戦力となればいいと思うサークルもいる。今のところは全方位の警戒が必要」


 なるほど、ようやく紺音が言っていた、危険の背景が理解できた。


「知識が足りなくて今のままでは危険というのは、そういう事なんだね」


「そう。いずれ決闘や戦闘には出くわす。だから今まで経験が無い、魔法や特殊能力を使った戦闘に慣れておくべき」


 確かにそういった必要性はあるだろう。

 でも……


「そういった戦闘方法って、授業で教えてくれるの?」


「授業は一般の普通科進学校と同じ内容。課外活動で先輩に教わるのが通常。でも今回はそれでは間に合わない。だから私が訓練の相手をする」


 授業で戦闘までやらなくて良かった。

 そう思うべきだろうか。

 ただこれでは、何というか……


「何から何までごめんね。迷惑をかけて」


「どうせ私も暇。誰かと一緒にいる方が楽しい」


 それならいいのだけれど。

 でも誰かと一緒というのなら、つるんだりする友人はいないのだろうか。

 野殿(のとの)先輩とは仲が良さそうな感じだったけれど、同級生だとどうなのだろう。


 そういえば光辺こうべ先輩が誰かの名前を出していた。

 でも聞いていいのか分からないから、今は口に出さない。


「ありがとう」

 

「あと今日の夕食、アジとイカの刺身、南蛮漬けがメインで味噌汁とサラダという感じでいい?」


 一気に話が変わったけれど、これはこれで重要だと思う。

 しかし揚げ物って結構手数がかかる料理だ。

 魚をさばくのも大変というか面倒な作業という気がする。

 少なくとも私には出来ない。

 

「充分以上だけれど、揚げ物と刺身両方作るって、大変じゃない?」


「問題ない。それに料理は得意」


 いいのだろうか。ちょっと申し訳なく感じるのだけれど。


「手伝おうか?」


「大丈夫」


 やはり申し訳ないけれど、そう言われたら待っているしかない。


「わかった。何かあったら言って」


 本当は疲れたから、自分の部屋で一眠りしたい。

 しかし紺音に料理をさせて自分は寝るというのは、申し訳ない気がした。 

 だからこちらのリビングで時間つぶし。


 学内SNSを設定して、ランキングを確認しておこう。

 あと事務手続きの際に貰った書類を、まだ確認していない。

 学校が始まるまで見ておけと言われていたから、そちらを先に手を付けておこう。


 ◇◇◇


 学園内SNSの設定をしたり、提出用の書類を書いたり。

 なお私の戦闘力ランキングは二十七位だった。

 ちなみに紺音は六位。

 高三まで含めてだから無茶苦茶強い。一年ではダントツだ。


 第一生徒会会長の光辺こうべ先輩は堂々の一位。

 昼間戦った三人組では、佐藤黎久というのが二十二位だ。

 あれこれ順位を確認した後、何となく紺音の方を意識してみる。

 何かよくわからない鼻歌と、揚げ物の音が聞こえてきた。


「Hail Pharaoh of Darkness, Hail Nyarlathotep, Cthulhu fhtagn, Nyarlathotep th'ga,shamesh shamesh, Nyarlathotep th'ga,Cthulhu fhtagn♪」

 

 鼻歌は英語らしく、歌詞はよくわからない。

 けれど、間違いなく楽しそうだ。


 どんな感じで作っているのだろう。

 気になって、立ち上がってキッチン側へ。

 揚げ物をしているからあまり近づかず、キッチンカウンターの反対側から見てみる。


 今揚げているのは、イカゲソと頭を取った小アジ、ニンジン、カボチャ、タマネギ。

 何というか、手慣れた感じだ。

 揚げた物を並べる網付きバットや、更にその後つけ込むらしい茶色い液が入った大きいガラス容器など、道具も揃っている。


「美味しそうだね」


 おせじではなく本心だ。


「良かった。基本的にこれは揚げた後、こっちの液に浸けるけれど、もし食べたいなら浸けずに揚げた状態のもとっておく」


 確かにそれも美味しそう。


「ありがとう。料理が得意と聞いたけれど、確かに上手だね。昼食の卵焼きもふんわり綺麗に焼けていて美味しかったし。夕食もまだ食べていないけれど、キッチンに必要な物しか出ていないし余分な物は洗ってしまってあるし、相当慣れている感じだよね」


 普通にやれば、使用済みの食器とか鍋とかが洗い場にたまる。

 揚げ物とかで小麦粉を使えば、その辺に粉が飛んだり落ちたりするもの。

 少なくとも私の母の場合はそうだ。

 しかし今のこのキッチン、散らかった様子が全くない。

 

「練習の成果。一人が多かったからあまり凝った料理を作る意味は無かった。でもいつか誰かと一緒に食べる日を考えて、レシピを集めたし練習もした。だからさっきも今も、料理するのが楽しい」


 一人が多かったというのが気になった。

 それって中学受験をして此処に来たからで、小学校時代は親がいた筈。

 そう聞きたかったけれど、思い切り危険な感じがして聞けなかった。


 あと何というか、愛が重い感じも。

 いつか誰かと一緒に食べるのは、同性の女の子でもいいのだろうか。

 今のところ百合な感じは、紺音からはしないのだけれど。


 実際、私が危なっかしいから成り行き上面倒をみているだけなのだろう。

 それに紺音さんは、喋り方は独特だし外出時の格好は地雷系だけれど、間違いなく親切だ。

 だからきっと、問題は無い。


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