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4話 夢見る少年の別れの時間

「水の魔剣使いが現れたのは1ヶ月ほど前です。現れてすぐはメラ王国が周りの国から物資の支援を受けながら討伐を目指していました」

 先生の声はルードたちに向ける優しい声ではなかった。

「ですが、魔剣使いによってメラ王国は壊滅状態、被害が他国にも伸びようとしているのです」

 ルードとリドは不安そうな顔をしていた。

 先生はそれを見て、優しい表情で2人の頭を撫でた。

「もし、聞くのが嫌なのでしたら外で他の子達と遊んできていいですよ」

 先生は2人に優しく言った。

「いえ、最後まで聞きます」

 ルードはそう言って真剣な表情をした。

「僕は…外に行ってきます…」

 リドは俯きながらそう言った。

 先生はそれを聞いて、リドを外に連れていった。

 その後、先生が部屋に戻ってきて、話を再開した。


「今回のことで聖王国は軍を編成することになりました。その軍にザリ君とローレン君は参加するようにと国から通達がありました」

 先生がザリとローレンの方を見ながら言った。

「なんで、師範と師匠が参加するのですか?」

 ルードは先生に聞いた。

「ザリ君とローレン君は聖王国内で相当な実力者なのです。2人はここに来る前は軍の中でも偉い人だったんですよ」

 ルードは2人の方を見た。

「師匠はわかるけど、師範は…」

 ルードは小声で言った。

「おい、ルード、どういう意味だ」

 ザリが起こり気味にルードに言った。

「だって、師範は馬鹿だから…」

 ルードはさらに小声で言った。

 それを聞いて、ローレンが笑った。

 周りもつられるように笑った。

「ルード君、ダメですよ、そんなことを言っては」

 先生はそう言って、ルードを窘めた。

「はい、ごめんなさい先生、師範」

 ルードはすぐに謝罪をした。


「ルード、俺らは軍に参加する。剣術はここにいる後輩のランスに任せてあるから、サボるなよ」

 ザリがルードと目線を合わせながら話した。

「ルード、俺もこいつと一緒に軍に参加する。まだお前に教えたいことはあるが俺もここにいるレイナに任せるから強くなれよ」

 ローレンがそう言って、ルードの頭を撫でた。

「…なんで2人とも最後みたいな感じなの」

 ルードは涙目になりながら言った。

「ルード、そこまで気にするな」

「そうだぞ、ルード。今だけはこいつみたいに馬鹿になっていてくれ」

 2人はそう言って、順番にルードを抱きしめた。

「ルード、強くなってくれ。それが俺たちの願いだ」

 2人はそれを言い残して、そのまま孤児院を後にした。


 それから約1年後、一通の手紙が届いた。

 その手紙には聖王国軍が水の魔剣使いと戦って全滅したと書いてあった。

 そしてもう一つ、水の魔剣使いは肉体の限界を迎えたようで体が崩壊して死亡が確認されたそうだ。

 ルードは言い得ぬ気持ちになった。

 ルードは剣術と魔法に今まで以上にのめり込んだ。

 2人に言われた「強くなれ」という言葉だけがルードを動かした。


 そこから、さらに4年の月日が経った。

 ルードは15歳、この世界での成人となった。

 ルードは剣術ではランスを圧倒できるだけ強くなった。

 魔法に関しては剣術ほど強くはなっていなかったが戦闘に組み込めるまでに成長した。

 ルードはランスとレイナのコンビと2対1で戦っても勝てるだけ強くなった。

 でも、ルードは満足していなかった。

 剣術は昔、本気で戦った師範であるザリに勝てるイメージが湧いていなかった。

 魔法を使ってやっと対等になるレベルだ。

 魔法に関しても師匠であるローレンほどの強さには程遠い実力であった。

 ルードは成人を機に旅に出ることを心に決めていた。


 ルードは旅の準備をしていた。

 そんな時に先生に呼ばれた。

「先生、僕はここを出て、旅に出ます」

 先生との話が始まってすぐ、ルードは言った。

「そうですか、それはルード君の自由なので私は止めるつもりはありませんよ。それになんとなくわかってました」

 先生はルードを見て、少し寂しそうに優しく言った。

「ルード君には成人したら話そうと思っていたことを話そうかと思って、呼んだんです」

「先生…なんの話ですか?」

 ルードは先生に聞いた。

「話というのはルード君、君の出自に関してです」

「僕は戦争孤児ではないのですか?」

 ルードは驚きながら聞いた。

「はい、ルード君は聖王国の侯爵の子です」

 先生の話は続いた。

 侯爵に支えていた、侍女の子であること。

 侍女である母親は侯爵の正妻になろうとして、殺されたこと。

 ルードが孤児院にきた理由は侍女の親戚が引き取りを拒否したからであること。

 ルードはそれらの話を先生から聞いた。

 ルードは旅の準備を忘れ、ベッドで横になった。

 先生の話を聞いて、ルードは言い得ぬ気持ちが心に渦巻いた。

 ルードはその日、そのまま眠りについた。


 次の日、ルードは旅に出ることにした。

 準備はほとんど終わっていた。

「先生、今までありがとうございました」

「ルード君、いつでも帰ってきてくださいね。行ってらっしゃい」

 ルードは先生に挨拶をした。

 先生はルードを暖かく見送った。


 ルードは昔の夢であった『魔法騎士』になるために聖王国の王都へと向かった。

 王都へのルートは2つ。

 近道である、ゴウロ山脈を越えるルート。

 遠回りである、フロウ森林を抜けていくルート。

 どっちかのルートを通って、ルードは王都を目指すことになる。

ゴウロ山脈ルート

 →六対の聖魔剣〜闇の導き〜

フロウ森林ルート

 →六対の聖魔剣〜光の道標〜

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