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 朝の8時に凪沙ん家とうちの家族がそれぞれの車で出発した。

県外にある浜辺のコテージに一泊二日の予定だ。

コンビニでお昼用のおにぎりやサンドイッチを買ってから高速道路に乗った。

車で2時間ほど走ると、海が見えてきた。

すると、幼馴染のグループに凪沙たちから写真が送られてきた。

見てみると、凪沙と秋人と杏奈が海をバックに変顔をしていた。


「お兄ちゃん、楓真。私たちも写真撮ろ」

「そうだな」


俺たちは持ってきていたサングラスを掛けて決めポーズをして写真を撮った。

咲良が写真を送ると凪沙から咲良にビデオ通話が掛かってきた。


『私もサングラス持ってきたよ』

「ホントだ。凪沙めっちゃ似合う!」

『でしょ?海着いたら水着着てサングラスして一緒に写真撮ろうね』

「うん!」



コテージに着いて、受け付けを済ませて鍵を貰った。

1つのコテージに12人まで泊まれるため、凪沙たちと同じコテージに泊まる。

部屋割りは男子、女子、父さんと亮太さん、母さんと千花さんになった。


部屋に荷物を置いて、リビングで少し早いお昼ごはんを食べてすぐに水着に着替えた。

階段を降りた目の前が海のため、コテージで着替えてラッシュガードを羽織ってそのまま海に向かう。


凪沙たちが着替え終わるのを待とうと思っていたけど、楓真に引っ張られて俺と秋人は先に海に行くことになった。


「海だ〜!」

「思ってたほど人が多くなくて良かったな」

「兄ちゃん、ラッシュガード持っといて。俺、泳いでくる」

「俺のも持ってて」


秋人と楓真は俺にラッシュガードを預けると、ゴーグルを付けて海に走っていった。

そのうち、父さんと亮太さんがやって来てラッシュガードは持っておくから俺も泳いできていいと言われて楓真たちのところに行った。


「あ、兄ちゃん!くらえ!」


楓真が俺に向かって水を掛けてきた。

秋人も便乗して俺に水を掛けてくる。

2人に向かって思いっきり水をすくって掛けてやった。


「楓真、逃げるぞ!」

「ああ」

「逃がすか!」


2人を追いかけ回していると、背中にビーチボールが当たった。

ボールを拾って振り返ると、咲良が腕を組んで立っていた。


楓真と秋人に声を掛けて、咲良たちのいる方に行った。

ボールを投げて返すと、咲良はキャッチしたボールを後ろに隠れていた凪沙に渡した。

凪沙はおずおずと咲良の後ろから出てきた。

キャミソールとスカートの上下分かれた水着を着て、髪も少しだけ編み込んでいた。

ヤバ、可愛い。


「お兄ちゃん、もしかして凪沙に見惚れてる?」

「はいはい、そーですよ」

「当たり前だよね〜」


咲良は凪沙の腕に抱きつきながら笑った。

杏奈は不思議そうに首を傾げて俺の顔を見ている。

屈んで杏奈に目線を合わせてなに?と訊くと、杏奈は俺に耳打ちをした。


「はっくん、お姉ちゃんのこと好きなの?」


俺は少し離れて杏奈を手招きした。

まさか、小学生にまでバレるなんて。


「杏奈、なんで分かったんだ?」

「なんとなく。私、少女漫画いっぱい読むから」

「みんなには内緒だよ。凪沙にはバレてるけど」

「付き合ってるの?」

「ううん。俺の片想い」

「そうなんだ。分かった。内緒にするね」


杏奈は頷いて千花さんと母さんの方に走っていった。


4時まで休憩を挟みながら遊んで、コテージに戻るとバーベキューの準備がされていた。

私服に着替えて水着は備え付けの洗濯機を借りて明日のために洗濯した。


「咲良、スマホ鳴ってる」

「あ、ホントだ」


咲良は嬉しそうに笑いながらスマホを持ってコテージの中に入っていった。

彼氏だろうな、と思っていると、父さんが笑顔で話しかけてきた。

父さんのこういうときの笑顔って怖いんだよな。


「白斗、咲良の電話相手に会ったことある?」

「ないと思う。前の、あ」

「前の、なんて?」

「何でもない」


前の彼氏は会ったことがあるけど、今の彼氏はないんだよな。

まあ、前の彼氏って中学のバレー部の後輩だった奴だし。

今の彼氏は同じ高校の先輩らしいから、俺は会ったことがない。

咲良曰く、図書館で静かに本を読んでるタイプの眼鏡男子らしい。 


咲良はニコニコで戻って来て、また肉を食べている。

父さんはというと、母さんに怒られて大人しく野菜や肉を焼いてくれている。


「姉ちゃん、さっきの電話彼氏から?」


空気は吸うものだタイプの楓真は躊躇なく質問した。

咲良も同じタイプのため普通にそうだよ、と答える。


「兄ちゃんの後輩だっけ?」

「そっちは別れてから半年以上経ってるよ」

「え、マジで?じゃあ、彼氏って誰?」

「同じ高校で1個上の京ちゃん」

「京ちゃんって誰だよ」

「京平だから京ちゃん」


咲良はヘヘっ、と笑いながら楓真や俺たちに写真を見せてくれた。

身長は咲良と少ししか変わらないくらいで、落ち着いた雰囲気をしていた。

これなら、父さんも安心だろうな。


バーベキューを終えて、買ってきた手持ち花火を浜辺ですることになった。

まだ少し明るいけど、花火をしてから風呂に入るため早めに始めることにした。

持っていた花火が燃え尽きて、バケツに手持ち花火をつけて凪沙のところに行った。


「ちょっと散歩しないか?」

「あ、うん」


父さんに凪沙と散歩してくるとメッセージを入れて花火をしている皆から少しずつ離れていった。

凪沙は俺の隣に並んで、時々俺の顔を見上げる。


日が完全に落ちても、満天の星空が広がっていてあまり暗くはない。

俺は立ち止まって、凪沙の顔を見た。

凪沙も少し緊張した様子で俺の顔を見上げた。


「凪沙、今日着てた水着似合ってた。髪も編み込んでたのめちゃくちゃ可愛かった。」


そう言って凪沙の顔を見ると、照れくさそうに笑っていた。


「ありがとう。白斗、全然見てくれなかったから似合ってなかったかなって不安だったけど、可愛いって思ってもらえてたなら良かった」


凪沙って本当にズルい。

可愛いと思ってもらえて良かった、とか。好きな人以外に言っちゃダメなやつ普通に言うし。

俺は俺でどんどん凪沙のこと好きになってくし。


俺は凪沙の手を引いて抱き寄せた。

いっそ、拒絶してくれたらいいのに。

そう思いながらも、凪沙を強く抱きしめた。


「暑いよ」

「ごめん」


笑って凪沙から離れた。

そして、もう一度凪沙の目を見て顔を近付けた。

鼻と鼻が当たる距離まで近付けると、凪沙は俺の口を手でふさいだ。


「ちょっと、待って」


凪沙の声は少し焦っていた。

これが答えだろう。

頑張って俺の気持ちに応えようとしてくれていても、凪沙の本心は違う。

俺は凪沙から離れてなるべく自然な作り笑いを浮かべた。


「凪沙、お試し付き合いやめよっか」

「え、」

「普通の幼馴染に戻ろう。俺は、元々幼馴染のままの関係も好きだったし」

「そ、か。………分かった。幼馴染に、戻ろっか」


夏休み終わりまでって期限を決めたのは俺なのに。

好きにさせるって宣言したのに。

でも、お試しで付き合い続けてたら、いつか本当に凪沙に手を出しそうで怖くなる。

今、キスしようとしたのだってフリのつもりだったのに、途中からは無意識だったし。

好きでもない相手から、急にキスされるとか凪沙からとったらトラウマになるだろう。

嫌われたくはない。

それならいっそ、ずっと大好きな幼馴染でいい。

そっちの方がずっと楽だ。


みんなのところに戻って、コテージから少し歩いたところにある温泉に行った。


俺はすぐにサウナに入った。

すると、父さんも一緒に入って来た。


「今日は疲れたね」

「ああ」


そこからは無言で水風呂に浸かってまたサウナに戻ってのセットを何回かして脱衣場で着替えて髪を乾かしてロビーに行った。

自販機でいちごミルクを父さんが買って俺に手渡した。


俺に飲めっていう意味で渡したわけじゃねえんだよな。


楓真と秋人は父さんと亮太さんに背中を押されながら先に帰っていった。

俺は凪沙たちがあがってくるのを待って、千花さんは杏奈が眠たいと言っているからと咲良と母さんと一緒に先に帰った。


「いちごミルク、飲む?」

「ありがと」

「飲み終わるまで、話訊いてくれるか?」

「いいよ」


ベンチに座って凪沙の顔を見た。


「めちゃくちゃ凪沙のこと振り回してごめん。俺、凪沙に嫌われたくなくて、お試しだとしても付き合ってるってことに浮かれて、いつか凪沙が嫌だって思うことを、するかもしれないって。それで嫌われるくらいなら、幼馴染のままでいた方がいいなって思った」


凪沙はズーッといちごミルクを飲み終えて、紙パックをゴミ箱に捨てた。

呆れられたよな。

そんな自分勝手な理由で凪沙のこと振り回してたとか。

情けなくて、下を向いていると、凪沙は俺の耳に口を近付けた。


「私、白斗のこと嫌いにならないよ」

「そんなの言いきれねえし。いつか嫌いになるかもしれないだろ」

「なんでモテるのにそんなに自信ないの?」

「顔しか褒められないし」

「ふ〜ん。ま、私は白斗のいいところ他にもいっぱい知ってるから。自信持ってよ」


凪沙は笑って俺の手を引いて立ち上がらせた。

コテージに戻ってそれぞれ部屋に帰った。

はぁ〜、と息を吐きながら布団にダイブして寝ようとしていると、秋人と楓真が俺の体を揺さぶって起こしてきた。


体を起こすと、2人ともニヤッと笑って名前の書かれたルーレットの画面を俺に見せて回した。

ちょうど、俺の名前のところで止まった。


「はくから恋バナ開始な」

「なんでだよ」

「てか、兄ちゃんって好きな人とかいんの?」

「いるけど」

「え!誰!?」

「凪沙」

「マジで!?」


楓真は驚いたように目を見開いた。

けど、秋人はやっぱりと言いたそうな顔をしている。

俺ってそんなに分かりやすいのかな。


「マジか。兄ちゃんが、凪沙を」

「なんだよ」

「いや、意外すぎて。俺は応援するぜ」

「そりゃどうも。てか、楓真こそ好きな子とかいねえの?」

「モナりん以上に可愛い子じゃなきゃ好きになんねえからな」


モナりんとは楓真の推しで、アニメの中のアイドルだ。

まあ、楓真に訊くこともなくなったため秋人に視線を向けた。

秋人は平然と答えた。


「咲良。俺が好きな子」

「え、秋人、マジか?」

「別に彼氏から略奪しようとか思ってないしいいだろ」

「いや、けど、姉ちゃんって。なんで?」

「気付いたら好きだったんだよ」

「姉ちゃんを?」


楓真は眉間にシワを寄せて首を傾げた。

俺も楓真と同じで秋人が咲良を好きになる意味は全く分からないように、秋人からしたら俺が凪沙を好きになる意味は分かんねえんだろうな。


話しているうちに、楓真が眠くなったのかあくびをして体が揺れていた。

そろそろ寝ようかと電気を消して布団に入った。



翌朝、いつも通り5時に目が覚めて海に散歩にでも行こうと思って着替えてリビングに行くと凪沙も起きていた。


「おはよう」

「おはよ」

「俺、散歩行くけど凪沙も行く?」

「うん」


ビーチサンダルに履き替えて、コテージを出て階段を降りた。


ちょうど、日が昇るところで水平線と太陽が重なって綺麗だった。

凪沙が太陽に見惚れている横顔を1枚撮って、水平線と昇りかけの太陽の写真も撮った。

さざ波に足が浸からないように少し離れて歩いた。


「白斗、来週誕生日だね」

「凪沙も来週誕生日だろ?3日違いだし。何か欲しいのあるか?」

「リストバンド。白斗は?誕プレ何がいい?」

「凪沙とデート」

「プレゼントが?」

「そう」


凪沙は頷いて俺の顔を見上げた。

よくやった、俺。

心の中でガッツポーズをして凪沙の顔を見て笑った。

凪沙が良ければだけど、と前置きをして凪沙の目を見つめた。


「デートの内容は俺で決めてもいいか?」

「いいよ」

「花火大会、凪沙と一緒に行きたい」

「花火大会!?私も行きたい!夏休み最終日だよね?午前中は部活だけど午後は空いてるよ」

「じゃあ、決まりな」


小指を絡めて軽く上下に手を振った。


コテージに戻ると母さんと千花さんが起きていた。

まだ、5時40分だから誰も起きていないと思って帰ってきたから少し気まずい。


「ただいま」

「おかえり」

「朝散歩?」

「うん。ちょうど日の出だったんだ。白斗、写真撮ってたよね?」

「ああ」


海と日の出の写真を見せると、母さんと千花さんはいいな〜と目を輝かせた。

7時を過ぎると、咲良も杏奈も父さんと亮太さんも起きてきた。


けど、楓真と秋人がなかなか起きてこない。

俺が起こしに行こうと腰を上げると咲良と凪沙と杏奈もついてきた。


部屋に入ると、秋人と楓真は爆睡だった。

それにしても、2人とも意外と寝相いいんだよな。

蹴り合ったりしてねえし。


「せーの」

「「楓真!秋人!起きろ!」」


2人は眩しそうに目を開けると、ゆっくり伸びをして起きた。


朝食はコテージの施設にあるカフェでデリバリーを頼んだ。

もう一度、海に入ってシャワーを浴びて着替えてコテージの鍵を返して荷物を持って車に向かった。

昼飯は、高速道路の途中にあるサービスエリアのフードコートで各自好きなものを食べた。

帰りの車は楓真も咲良も疲れていたのかぐっすり眠っていた。

俺も窓にもたれるようにしてそっと目を閉じた。


目が覚めると、もう近所まで帰ってきていた。

家に着くと、凪沙たちに手を振って荷物を家に運んでもう一度シャワーに入った。


リビングに行くと、母さんがそうめんを茹でてくれていた。

茹でたそうめんは冷蔵庫に入れて冷やしていた。


夕飯には早いため、俺は自室に行ってクーラーをつけて勉強をした。

受験生のため、2日も勉強をサボるわけにはいかない。


7時まで勉強をして夕飯を食べてまた部屋に戻って勉強をした。

1時を回って、そろそろ寝ようかとか思ってスマホのタイマーを止めてなんとなくカメラロールを見た。

凪沙と俺のツーショットがパッと映った。

あ、そういえばツーショット撮ったんだっけ。

そのまま横にスクロールしていくと、日の出を見ている凪沙の横顔が映った。


「綺麗だな、」


ほんの数秒の出来事だったのに、今も鮮明に思い出す。

いつもは可愛いと思うことが多いのに、今日はすごく綺麗に見えた。

表情のせいか?


まあ、いいや。


スマホの画面を消して、勉強机のライトも消してベッドに入った。

疲れたし、さっさと寝よう。

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