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告白


 12月。

受験生である俺たちにとって追い込みが始まる時期だ。

俺は咲良と同じ高校を志望校に受験勉強をしている。

県外の私立のバスケの強豪校から声を掛けてもらってはいるけど、俺はバスケ一筋って言うほどバスケと向き合えていない。

だから、バスケは中学までで高校は部活に入らないつもりだ。


今は部活を引退して受験勉強に専念している。

でも、塾に通わず母さんと幼馴染の咲良とはくに家庭教師代わりに勉強を教えてもらっている。

楓真は結構ヤバいため、個別指導の塾に通っている。


リビングで参考書を開いて待っていると、チャイムが鳴って家に咲良が入ってきた。


「はくは今日バイト?」

「うん」

「咲良は最近はデートしないの?」

「あ、アキには言ってなかったね。私、京ちゃんと別れたから」


咲良は笑って勉強するよ〜、と参考書のページを開いた。

あんまり、気にしてないのかな?


「いつ、別れたの?」

「9月の頭の方だから、もう3ヶ月ちょっと経ったね」


咲良はそんなことより勉強!と俺の顔の前に参考書を突きつけた。

平気そうに見えたけど、まだちょっと引きずってるな。

5ページくらい問題を解いて、少し休憩をした。


「咲良、無理して元気なフリしなくてもいいよ」

「え、なんで、」

「無理してるように見えたから。違ったらごめん」

「………すごいね、秋人。私、友達にも凪沙にもお兄ちゃんにもバレなかったのに」


別にすごくなんてない。

咲良のことはよく見てるから分かるだけ。

なんて言ったら、咲良はキモいって思うかな。


「みんな、咲良はもっといい人がいるから大丈夫って言うけど、それだと京ちゃんがいい人じゃないみたいに聞こえて嫌なんだ。嫌いになったわけじゃないから」

「そっか」

「アキ、愚痴聞いてくれてありがとね。ちょっと元気出たよ」


勉強を再開して、7時前に咲良は帰っていった。

俺は軽くご飯を食べて、家の隣にある体育館でバスケの練習をした。

途中で姉貴も加わって1on1をしてから家に戻ってもう一度ご飯を食べた。



翌日、楓真と一緒に学校に向かった。


「そういえばさ、昨日姉ちゃんがちょっと浮かれて帰ってきたんだけど、秋人なんか知ってるか?」


昨日のことか。

少し元気になったのは本当だったんだ。良かった。


「さあ、知らない」


楓真はそうか〜?、と首を傾げていた。


学校に着いて鞄を置いて、楓真と一緒に職員室に課題を提出しに行った。

金曜日までの課題だけど、終わり次第提出してもよいためさっさと終わらせた。



給食を食べ終わって、昼休みになった。

5時間目が体育のため急いで着替えて、体育館で先にボールを出してバスケをすることにした。

クラスの男子の大半は次が体育の日の昼休みはバスケかバレーをすることが多い。

グラウンドのときはキャッチボールとかサッカーをしている。


「そういえば楓真、佐川(さがわ)さんに告白されたんだってな」

「あ〜、まあ。でも、あんま話したことねえし断った」

「可愛いって人気なのに?」

溝口(みぞぐち)(楓真のオタ友)のことバカにしてたし」

「それは断る」


楓真は男の俺から見てもイケメンだ。

楓真は自分より俺の方がイケメンなんて言ってるけど、正直、レベルが違う。

幼馴染じゃなかったら芸能人と間違えるレベル。

というか、仁科家全員、美形が揃いすぎている。

ただ、それ故の苦労もあるらしい。

告白されるにしても、一目惚れしましたとかずっとカッコいい(可愛い)って思ってましたって言うのが、ほとんどらしく本人たちは嫌らしい。



放課後、楓真はそのまま塾に行くらしく1人で帰ることになった。

校門を出ると、去年同じクラスでわりと近所に住んでいる汐谷(しおや)さんに会って流れで一緒に帰ることになった。

けど、正直苦手なんだよな。


「秋人くんって背ぇ高いよねぇ。何cmなの?」

「確か183だった気がする」

「え〜、やっぱ高いね。私より30cmも高いよ」

「そうなんだ」

「私って小さいから、男子の見て話そうとしたら上目遣いになっちゃってぶりっ子って言われるんだぁ」


それは、話し方のせいなんじゃ。

やっぱり、汐谷さんと話してると疲れる。

少し歩く速さを速めると、汐谷さんは速いよ〜と走って追ってきた。

もういいやと思って、足を止めると汐谷さんが背中にぶつかった。


「秋人くん、私、」


「咲良!」


汐谷さんが何かを言いかけたとき、咲良が自転車で前を通った。

声を掛けると、咲良はブレーキをかけて俺の方を振り返った。


「アキ!今帰り?」

「うん。咲良も?」

「そうだよ。今日も私が勉強見るね」

「ありがとう」

「隣の子は?お友達?」

「去年同じクラスだった汐谷さん」


咲良に紹介して汐谷さんの方を向いた。

汐谷さんは咲良のことを見て少し驚いたような顔をしている。


「お姉さん、似てないんだね」

「咲良は俺の姉貴じゃないよ。楓真の姉ちゃん。汐谷さん、家この辺だよな?またな」

「う、うん」


汐谷さんは頷いて走って帰っていった。

急ぎの用があるなら、先に帰れば良かったのに。

咲良の自転車を押して隣に並んだ。

家に帰るまでの少しくらいの時間なら彼氏面しても許されるかな。

車道側に行って少しカッコつけると、咲良はいつの間にそんなにイケメンになってたの?と楽しそうに笑った。


「咲良ってさ、今まで年下と付き合ったことあるの?」

「ないよ」

「年下は恋愛対象外?」

「そういうわけじゃないけど、年下の知り合いってあんまりいないから。」


恋愛対象ではあるんだ。

良かった。


「咲良、受験終わったらちょっと時間ちょうだい」

「え、別に今でもいいよ?」

「いや、終わってからがいい」

「そっか。分かった」



〜〜〜〜〜



卒業式の数日前、一般高校の合否発表があった。

俺も楓真も無事に合格し、来年からもまた同じ高校に通うことになる。

咲良とも1年だけど同じ高校に通えることになった。

合格したことを咲良に伝えに行くと、咲良は自分のことのように喜んでくれた。


「そういえばアキ、受験終わったら時間ちょうだいって言ってたけどいつにする?」

「覚えてたんだ」

「忘れててほしかったの?」


覚えてくれていると思っていなかったし、咲良の方から言われるなんて尚更驚いた。

咲良は不思議そうに首を傾げている。


「じゃあ、散歩付き合って」

「いいよ」


咲良と一緒に河川敷まで歩いた。

まだ桜は蕾ができていなくて寂しい木のまま、並んでいる。

河川敷をぐるりと回るように歩きながら咲良は時々振り返って俺の写真を撮ってる。


「咲良」

「なに?」

「もうバレてると思うけど言っとく。俺、咲良のことが好きだよ。もうずっと前から」

「………私もだよ」


え、と驚いて声が出た。

咲良は少し照れくさそうに笑って振り返ると、俺の顔を見上げた。


「秋人、好きだよ」

「俺も。咲良が好きだよ」


咲良が俺を好きになるなんて思ってもなかったから、嬉しさと驚きが同時にきた。

でも、肝心な言葉を忘れないようにもう一度咲良の方を見た。


「俺と付き合ってください」

「はい。もちろん」


咲良は笑って俺に抱きついた。

春から、咲良と同じ高校でしかも恋人として通えるとか幸せすぎる。

目が覚めたら夢でした、なんてオチないよな。

そっと咲良を抱き返して、首を横に振った。

夢みたいだけど、夢じゃない。


「アキくんなら、大体なんでもバレてるから強がる必要なくて気楽だよ」


咲良はニーッと可愛く笑って俺の顔を見上げた。

まあ、確かにそうかも。

俺の方が年下な分、ダサいとことか、咲良は全部見てきたから今さら嫌われる心配はしなくてもいいかも。


「今さらなんだけどさ、」

「ん?」

「咲良って、なんでそんなに呼び名変えるの?もしかしてはくとか楓真のことも呼び名変えてたりする?」

「するわけないじゃん。アキだけだよ。変えてるのはなんとなく。ノリ?」


昔はずっとアキくんだったのにいつの間にか増えてた。

てか、それを違和感なく受け入れてた俺も俺だな。


咲良の方を見ると年上だということを忘れそうなくらい無邪気に笑いながら歩いていた。

咲良の後を追いながら1枚写真を撮った。

無邪気に笑う咲良の横顔だ。

咲良は俺の写真を何枚も撮ってたし、1枚くらいいいよな?


咲良は写真を撮ったことに気付いて変な顔してなかった!?と慌てている。

咲良はどんなときも可愛いよ。

大丈夫と笑ってスマホをズボンのポケットにしまった。



それから2週間と少しが経って、高校の入学式がやって来た。

合格者説明会や制服採寸で来たけど、相変わらずこの学校広いな。

楓真は入学式だというのに、寝坊してまだ家で寝ているらしい。

今日は咲久さんも真白さんも仕事だから、咲良とはくに起こしてもらったらしいけど、2人とも先に家を出たから二度寝したら起きれなかったらしい。


中学のときは学校までダッシュで行けば5分くらいだったからその感覚で二度寝してしまったんだろう。

昇降口付近で、クラス表を見た。

事前に何組かは知ってるけど、教室の場所は分かっていない。

ちなみに、今年も楓真と同じクラスだ。


「アキ、教室の場所分かる?」

「分からない」

「案内してあげる。先輩についてきなさい」

「お願いします。咲良センパイ」

「よろしい」


咲良は楽しそうに笑いながら俺のクラスである1年B組に案内してくれた。

もう、半分以上の生徒が来ていて既に着席している。


「じゃあ、私もそろそろ教室行かないとだから。また後でね。ちゃんと楓真も引っ張ってきてね」

「分かった」


今日は母さんが仕事のため、父さんと小学6年生になった妹の杏奈が入学式を見に来るらしいけど、実は父さんも寝坊してんだよな。

だから多分、楓真は父さんに送ってもらって来ると思う。

じゃないと式に間に合わないし。


担任らしい先生が入ってきて、入学式についての簡単な説明を終えた直後、教室のドアが開いた。

やっと楓真が来た。

全員揃ったということで、もう一度簡単に説明を聞いて廊下に並んだ。


それから体育館に向かった。



式を終えて退場しようとしたところで、父さんと杏奈を見つけた。

2人してめちゃくちゃ手を振ってくる。

アイドルのコンサートじゃないのに。

軽く手を挙げて返してすぐに父さんと杏奈から視線を外した。

教室に戻ると楓真が俺の席にやって来た。


「焦った〜!」

「何時に起きたんだ?」

「8時」

「よく間に合ったな」

「亮太さんに車で送ってもらった」

「だろうな」


父さんは事前に学校に申請していたため車で学校まで来ていいことになっている。

理由は単純に、元バスケ日本代表のため電車で行こうとするとバスケファンに囲まれて動けなくなることが多いからだ。

父さんが引退したのはもう7年も前なのに未だに騒がれるのはテレビに出ることもあるからかもしれない。



ホームルームが終わって楓真と一緒に教室を出て昇降口で靴を履き替えた。

グラウンドで咲良は父さんと杏奈と一緒に待っているらしいから探しに行った。

まあ、探さなくてもサングラスした高身長男性と、見るからに美人な在校生が並んでたら目立つからすぐに見つけられる。


「ふ〜う〜まぁ〜!」

「秋人!助けて!」

「助けてじゃない!起きたって返事するから先に来たのに。なに二度寝なんてしてんの!?」

「ごめん!姉ちゃんの好きなアイス奢るから!なっ?」

「まあ、それなら」


咲良、ちょろすぎる。

可愛いけど。


「楓真と秋人、入学式のとこ並んで。俺撮るから」

「別に撮らなくても」

「撮るから」

「はい」


他の人がまだ並ばないうちにさっさと写真を撮って、父さんの車に乗り込んだ。

杏奈が助手席に座りたいと言ったため、俺と咲良と楓真が並んで座った。

7人乗りの車だけど、真ん中に椅子を出せば8人乗りになる。

基本的に後ろの方は荷物をおいてるけど。


「楓真、明日からは寝坊しないようにね」

「秋人、起こしに来てな」

「自分で起きる努力をして!」


咲良が目を釣り上げると、楓真は姉ちゃん怖えよと俺の方に寄ってきた。

俺からしたら咲良のこの顔も可愛いんだけどな。

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