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Dirty Town  作者: 猪口
2/3

*テレパシー

あるビルの入り口にいた。

少し歩いては、終わり。

また歩いては、終わり。

「あはははは!」「きゃー!!ははは!」「ふははは...」

また頭の中で誰かの笑い声が反響する。

今日も歩かなきゃ...

「き こ え る ... ?」

聞こえる...?

急に笑い声じゃない誰かの語り声が聞こえてきた。

あたりを見渡しても誰もいない。

一瞬期待したこの気持ちは...何?

「ねぇ...聞こえる...?」

また語りかけてくる。

あたしの頭の中だ...。

「きこ...える...」

久しぶりに声を出して返事をする。

カラカラした声しか出てこない。

「返事した!君はだれ?」

「...わからない。」

「わからない?まぁ俺の声が聞こえる時点ですごい人だし、仕方ないかー 俺、(せつ)って言います。」

「セツ...?」

この声は人間...?

もしかして、いま会話してるの?

「あなたは、人間?」

「残念、俺人間というよりロボットでさ。」

「ロボット...?」

なぜ、ロボットなの?

あたしはなぜ、この人と会話が出来るの?

「そう、汚い手の人間に作られた人間の偽者だよ。人間のふりして生きている。...もしかして君も?」

「あたし...は...」

わからない。

感情も腐って何も食べずに生きていけるんだもの。

でも、わからない。

「わからない。あなたはどこにいるの?」

「君、大丈夫?俺は今テレパシーを使ってるんだ。俺と同ような人につながるテレパシーをね。君はきっとロボットだよ。俺は...遠くにいるよ。」

「遠く...」

あたしはずっと、会話の相手を求めていたのに、こんな形で出会うなんて。

ここの廃墟にはいないんだ...

「どうしたの?君。なんかあるの?」

「あたしは...」

今までのことをすべて話した。

人間離れしていることも、廃墟のことも。

「そうか...こんなこと言いたくないけど、君はロボットだから捨てられたんじゃないかな。きっとそこからみんなが移動するときにみんなは真実を知って君をおいていったんだ。ロイドは嫌われているからね...。今まで相手を探して迷っているのなら俺を相手にしてよ。俺も寂しいんだ。」

オレモサミシイ...?

「どうしてあなたも寂しいの?だれもいないの?」

「俺は人間のように生きるために生まれたわけじゃない。会話の相手として生まれた人間のクローンなんだ。だけど俺が相手していた人間はとっくの昔に死んでしまった。今は誰の相手も出来ずにこうやってこの世界に留まってるんだよ。ロボットは自分から死んだりは出来ないからね。誰かに壊してもらってメモリーをけしてもらわないと。」

お互い孤独...

でもあたしはいつ...ロイドになったの?

もう、人間じゃないの...?

「それにしても、こうやって話すのは本当に久しぶりだなー。」

「...あたしは人間じゃないの?」

「わからない。だけど俺とこうやってテレパシーで話せる以上君はロイドなんじゃないかな...」

いつのまにか時間がかなりたっていた。

今日はぜんぜん歩いていない。笑い声のかわりにセツとの会話の声が頭の中で響く。

「あと、声は無理に出さなくても聞こえるからね。」

「あ、うん...。」

あたし...ロボットなんだ。

やっと今、気づけた。

変わったんじゃない、最初から、ロボットとして生まれてきたんだ...

「ねぇ、なんて呼べばいいかな?」

「あたしの名前は覚えていないの。」

「じゃあ...俺が付けていいかな?」

「生まれ変われるような素敵な名前にしてください...」

「じゃあ(こう)かな!」

「コウ...」(柴崎コウさんではありません(*_ _

「よし、それじゃあ...」


セツの話を最後まで聞く前にあたしは寝てしまった。

いや...再起動かな...


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