パパとんかつ【WEB】
パパとんかつ
「ふん! よくもここまで最速で辿り着いたものだな……」
「わたしの思いの強さと、わたしへの勝男さんん思いが引き合ったのよ! 当然でしょ!」
「パパを返して!」
「衣子! パパはもう目前よ!」
「うん! ママ!」
「ここまで最速で辿り着いた御褒美に、メッチャ分かりやすい問題を出してやろう! 大サービスだと捉えてもらって良いのだぞ! そのまんま分かり易い、超イージー問題じゃぞ!」
「そんな前振りをして、言葉巧みにわたしたちをだまくらかそうったってね! そうは簡単に問屋さんはおろさないわよ!」
「お魚屋さんは、直ぐに3枚におろしてくれるけどね!」
「何を言ってるのだ……? 問屋さんとか魚屋さんとか、関係無いだろ?」
「簡単には簡単で、対抗したまでのことよ! さあ! 勝男さんを返してよ!」
「パパッ! 衣子だよ! 迎えに来たよ!」
パン! パン! パン!
「こちら様にお食事の提供だよ!」
「お食事って何よ? ここに来る前に、ソースカツ丼食べてきたからいらないわよ! さあ! 問題を出してよ!」
「ママ! とんかつの臭いが立ち込めて来てるんだけど……? わたし大盛りカツ丼食べたからお腹壱杯何だけど……? サッパリしたのが良いよ!」
「そうね! どうせ頂くんなら、サッパリチェンジでお願いするわ!」
「何を言ってるのだ! 立場を考えろ! お前達の目の前に今置かれた、参つの料理の皿をよ〜く見るんだな!」
「豚カツプレート、カツ丼、味噌煮込みカツ丼……御相伴に預かるんなら、牛丼にするべきだったわ! カツの魅力にやられてしまったから……」
「でも! メッチャ美味しかったよ!」
「そうね! カツの魅力に負けても仕方ないわね!」
「そんな事は、ど〜でもよいわ! 引き合う愛の力とかほざいておいて分からぬのか!」
「耳痛! 急に大きな差声張り上げないでくれます……? えっ……真逆? あの料理下手の勝男さんが作ったって言うの……? この参皿の中に……嘘よ? 騙されないわよ!」
「パパの作ったのヤダよ! 何時も懲りずぎて不味いんだもん!」
「恐ろしい罠ね! この中に勝男さんの手作りの、不味いのがあるって言うのね?」
「違うぞ! この中に……その勝男とやらがだな、わたしのお料理魔法で、姿を変えてあるのが壱つ混じっておるのだぞ!」
「えっ……この中に勝男さんがいるって言うの……ばっかじゃないの?」
「パパ〜っ! お返事して!」
「衣子ちゃん? 感じてるの勝男さんを……?」
「無駄じゃ! そんな初歩的なミス等するはずも無かろう! さあ! 選んで食すがよいわ! おお! そうじゃったそうじゃったな……超分かり易いヒントじゃったな! これがパパ豚カツじゃ! これは魅惑の味噌煮込み! そして、究極のカツ丼じゃ! さあ! 好きに選ぶが良かろう! 選んだからには完食が条件じゃ! 引き合う力を見せてもらおうかのう……あははははは……」
「ちょっと待って! 今のお腹パンパンじゃ正確に選べないわ! 油にウエップってなっちゃうもの……あんた! 魔法使い何だよね? 魔法とかほざいてたし! お腹をペコペコにとか出来ないの? 豚カツに変えたって言われてもねぇ……にわかには信じられないわよ!」
「いいだろう! お望みとあらばペッコペコにしてやろう! ペコペコのペッコペコ〜ッ! エイヤ〜ッ!!」
ぐう〜〜〜〜〜〜う!
「マジ! 美味そ〜っ!」
「さあ壱つ選ぶがよい!」
「ママ! わたしもペッコペコだよ! 究極のカツ丼食べたい! 味噌煮込み苦手だもん!」
「そうね! わたしも味噌煮込みは無しだわ! ガッツリいきたいわよね! ねえ! 壱つづつ選んでもいいのよね!」
「それは構わんが……リスクが大きくなるだけじゃぞ? ワケワケすればよかろうに……?」
「こんなにお腹ペッコペコにさせといてよく言うわね! なんて卑劣な!」
「そうだよ! ワケワケなんて我慢できないし! 卑怯者!」
「いやいやいや……お前らがペコペコにしろと言ったんじゃぞ!」
ガツガツガツガツガツガツ……。
「マジ美味何だけど!」
ガツガツガツガツガツガツ……。
「本当だ! 究極のカツ丼だよ! 朝食べた大盛りカツ丼が霞んじゃうよ〜っ!」
ガツガツガツガツガツガツ……。
「えっ……いや……もうちょっと躊躇とか……あるんじゃ無いのかな……?」
ガツガツガツガツガツガツ……。
「こんなにお腹ペコペコにしておいて何いってんのよ! ばっかじゃ無いの? うだうだ言って暇あったらその味噌煮込みに変えたっ勝男さんを早く戻してよ!」
ガツガツガツガツガツガツ……。
「ご馳走様でした! 完食!」
「はや! まけないわよ!」
ガツガツガツガツガツガツガツガツ……。
キラ〜ン!
「完食よ! あれ……味噌煮込み豚カツ冷めてるけど……? 早く戻してよ?」
「パパ! 早く戻って来て!」
ジ〜ッ!
「超簡単って言ったじゃろ! 手に持ってるそれ……」
「えっ! 衣子ちゃん! どうやらここは無駄足だったようね! パパを探して冒険の旅は続くわよ!」
「うん! ママ!」
「あっちに向ってダッシュよ!」
タッタッタッタッタッタ……。
「いや……それ……」