ep.19 闘技大会 ティリスvsキーツ①
リリアーナとヴォルスの闘いが終わり、勝者はヴォルスに軍配が上がった。
第二試合は、カルステンvsブルックナーという都立聖トロイオンス学院の2年生と3年生、どちらの生徒も優秀な生徒達だが、一回戦の凄まじい闘いを観た後だと、明らかに劣ってしまう。
辛うじて3年生の意地を見せ、ブルックナーが勝利を収めた。
その頃、、、
「キーツ様、そろそろ試合の時間が迫ってきました」
キーツの腰巾着、ミックが知らせに来た。
「そうか、おい! プラム、お前を助けに来た王子様が俺に痛ぶられる所を、よーーーく、観ておくんだな!」
「あ…あの人は関係無いんです、どうか、どうか手加減を、、、」
プラムの顔は、キーツに痛ぶられられていたのか、所々が腫れて上がっている。
「っあ? あいつはな!」
っと、プラムの髪を無造作に掴み、無理矢理顔を上げさせた。
「あいつはな、俺様に喧嘩を売って来たんだ……しかも、それが流民がだぞ? この貴族様に向かって許される筈が無いだろうが!」
髪を掴んだその手を、そのまま地面へと叩きつける。
ッゴン! っと、鈍い音がした後、また髪を掴み顔を上げさせると、プラムの額からは血が流れていた。
「いいか! 痛ぶって、痛ぶって、痛ぶって! 辱めを観衆の前でしてやる、その後は俺の下僕として、一生飼い殺してやる、あははは、はぁ~だあははは!!」
吊り上がった両の目は赤く血走って、鬼の形相を浮かべるキーツを、これ以上やり過ぎるとプラムの危機と思い宥めるが、止める事は出来なかった。
「貴様、この俺様に注意をするとは……お前の家族まとめて我が領地から追い出してくれようか!!」
「そ…それだけは、ご勘弁くださいキーツ様」
「貴様の家なんぞ、父上の息一つで吹き飛ぶと思え!」
「申し訳御座いません」
っと、ポプキンはプラムを横目に、キーツに向かい頭を下げる。
そんな状況でも、冷静なミックはキーツに対し試合の準備が整いましたと、再度報告しにやって来た。
「向かうか、流民の泣き叫ぶ顔が楽しみだ♫」
プラムの髪から手を解き、目の前に居たポプキンを足蹴りにし、キーツは選手入場口へと向う。
「プラムさん…ごめんな、俺の力が足りないばかりに」
「いえ、いつも気にして下さって、ありがとうございますポプキン様、でも、私に気を遣ってはキーツ様にまた叱られてしまいます、早くキーツ様の元へ行って下さい」
プラムは自分の事より、ポプキンの心配をする。
プラムにとって何より怖いのがキーツ怒りだった。
諦めているが、いつかは助けてもらえるのだろうかと、思いつつ、そんな希望は心の奥底に仕舞い込んでいる。
◆◆◆◆
目を覚ましたティリスの隣には、リリアーナが眠っている。
一回戦を、ヴォルスさん相手にあそこまで闘ったのだが、最後は呆気ない幕切で負けてしまった。
それが、本当に悔しかったのだろう、ティリスの自室に突然来ては、それはもう大変だった、泣くは叫ぶは部屋の物に八つ当たりし荒らすわで……自室は大変な事になっていたが、直ぐに力尽き寝てしまった。
そして、不意に部屋の扉を2回ノックされる。
「ティリス選手、出番です。選手通路に集合してください」
「分かりました」
準備に取り掛かるティリスは、リリアーナを起こさない様にして部屋を出る予定だったが、目を覚ますリリアーナ
「ティリス……本当に勝てるの?」
心配するリリアーナ
「俺が負けるわけないだろ?」
笑顔で答えるティリスだったが、、、
「うん…でも気を付けて、キーツの家系には私と一緒で、レアなスキルアイテムを持ってるわ……確か、水を自在に操れるはずよ」
「そっか、でも、心配しなくても大丈夫、俺は必ず帰ってくるから」
右手の親指を立てて『行ってくる!』っと、ティリスは部屋を出て行く顔を見て、リリアーナの脈拍が上がる。
「なんで、私がティリスに、こんなドキドキしないといけないのよ……バカ!」
近くにあったクッションに顔を埋めた。