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ep.15 ヒカリアレ

 入学試験が終わり、無事、都立聖トロイオンス学院へと入学を果たしたティリスとリリアーナは、入学式当日、校門の前で待ち合わせをしていた。


「あんた、試験の時もそうだけど、来るの遅すぎなのよね」


「仕方ないじゃないか、毎晩、サラさんの愚痴を聞く身にもなってみろよ」


「まぁ……ちなみにお酒は入ってるの?」


「当たり前だろ」


 サラのからみ酒は、今やこのメンバーには当たり前になっていた。


「サラ様も、普段はあんなに……活発で淑女なのに、お酒が入ると、どうしても頂けないのよね」


「いやリリアーナ、全然、フォローにすらなってないぞ?」


「あらそう? っあ! みてみて、ティリス! 私達、同じクラスみたいだわ」


「そうか、知らない人より知ってる人が居た方が助かるよ」


「あ…この前のアレンってのも一緒よ」


 この間の一件で、ティリスは少し苦手意識が芽生えていた。

 その隣でリリアーナは、お嬢様とは思えない程の言葉を使う。


「ん~後は……っげ! キーツも一緒なの、最悪」


「キーツ? 知り合いなのか?」


『キーツ・ラトランド』

 リリアーナと同じく地方貴族出身だが、4大貴族の1人と父親が面識があり、度々、王都に呼ばれ良くしてもらっていると言う噂があった。


 それだけではなく、成績は常に優秀、今季新入生の中で首席トップは間違いなしと言われていたが、それはティリスを誰も知らなかった時の話、今季の首席トップは誰がなんと言おうとティリスに決定している。


 そして、キーツにはいつも付き従う、ミックとポプキンという2人の手下が金魚のフンの様に周りを囲んでいた。


 その中に、奴隷の様な扱いで、キーツの入学と共に一緒に入れられたプラムという女の子が居る。


「どけ! 道を空けろ!! 俺は、あのジルシ様と交友のあるラトランド家の跡どりだぞ!」


 自分のクラス表を見ている同じ学生達に、当たり散らし上から命令する。


「でた、知ってる人は偉い人です自慢」


 リリアーナは小声でボソッと喋る。


「っあ!? 誰だ…俺をバカにした奴は」


 キーツは周り睨みながら辺りを見渡した。


「ん? これはこれは、ピューレ家のお転婆姫じゃないですか!」


 それを聞いたティリスは『ッブ』っと吹き出す。


ティリス(あんた)、今、その通りだと思って吹いたでしょ?」


 顔を笑っていたが、目は真剣な程に笑っていなく怖かったと、後に、ティリスは語る。


「リリアーナに怒られるぞ? 謝るなら今のうちにだそ」


 ティリスはキーツの側へと近寄った。

 しかし、キーツは鼻をつまみ


「あー? なんか臭うぞ? 流民達のゴミの様な臭いがこの近くで漂ってるぞ?」


 キーツは生粋の地方貴族、幼い時よりお前は違う、上に立つ者だと教え育ってきた。


 それは、悪い方へと異常なまでに湾曲していた。


「キーツ様、確かに流民達の臭いがします」


 っと、お付きのミックは言う。


「大変です、キーツ様、ハエがたかってきてるみたいですね」


 3人は爆笑していた。


「おい! 俺はバカにしても良いが、他の人までバカにするのはよせ!」


「あーーん? なんだ? 流民……ちょっと首席だったからって、上から目線かよ?」


「そんなつもりはない! 別に俺は首席なんかに興味は無いし、なんなら辞退して君にあげても良い」


 クラス表が貼られていたボートを、怒りのままに蹴り倒すキーツ


「てめぇ、ふざけんなよ! そんな流民のおこぼれなんて要らねーんだよ!」


 更に、激しくヒートアップするキーツだった。

 そしてキーツは、ティリスに対して真正面から睨む


 同じぐらいの背丈で凄むその姿に、誰もが恐れ慄いた。


 それと同時に、150センチ程のピンクの髪に、手入れが行き届いていないのか、ボサボサ髪のショートからみえる、少し痩せこけた頬にその子の痛々しさが分かる。


 その子はキーツに近づき、震える声で口を開く。


「あ…あ……あの、キーツ様、そろ…そろそろ、入学式のじゅ、準備が出来たみたいです、ジルシ様と、旦那様がお待ちになっております」


 その子を睨み、髪を引っ張りその場を去ろうとしていた。


「ふん! 貴様に言われんでも分かっておるわ!」


 その子を引き摺りながら、ほかの2人にも声を掛ける


「おい、行くぞ! ジルシ様と父上がお待ちだ!」


「っあ! はい!! お待ち下さいキーツ様!」


 嵐の様なキーツ軍団は去っていった。


「っね! 最悪でしょ、あいつ」


 ティリスは、最後に見た女の子の事が気になっていた。


「あぁ…あの子、泣いてた……」


 ボソッと呟くティリス


「ん? あのピンク髪の子?」


「そうだ、こっちを見て、泣いてたんだ」


 初めてティリスが怒った所を見たリリアーナは


「それで? どうするの? 流民のあんたに何が出来るのかしら? あの子を救ったとして、その後どうするつもり?」


「それは……」


 リリアーナが言っている事は事実だ、救った所であの子に、俺には何が出来る。

 苦しくても、生きる為にキーツに従っているのなら、手を差し伸べた後に、あの子はまた戻るだけだ。


 サラさんにお願いをしてみるか?


 いや、ただでさえ俺がお世話になっているのに、更にあの子まで面倒を見てくれと……


 だめだ、そんか甘えた事ばかり……


 リリアーナに頼んでピューレ家に援助してもらうか


 チラッとリリアーナを見ると


「ピューレ家は巻き込まないでよ、流石にラトランド家に4大貴族の相手なんて、ちょっと息を吹かれるだけで家は吹き飛ぶわ」

 

 悩むティリスは頭を抱える。


「でも今度の闘技大会で、あの子をかけて闘うってのはどう?」


「決闘を申し込めと」


「そうよ! それなら、あいつも文句は言えないわ」


 リリアーナは少しニヤっと笑う。


「決闘に負けて、女を取られたなんて、貴族として恥ずかしくて言えないわ」


 『おーっほほほほ』っと、リリアーナは悪い顔をする。


「確かに、でも、あいつがそんな約束を守るのか?」


「そこは、私に任せなさい!」


「リリアーナ……本当に任して大丈夫なのか?」


「なに、その目? 私を疑ってるの?」


「いや、そういう訳じゃ無いけど……大丈夫なのかな~って」


「私が、頼りなる所をその目に! 焼き付けなさい!」


 胸をドンっと叩くリリアーナに、ティリスは不安を拭えなかった。




◆◆◆◆




 入学式も終わり、入学生は大きな講堂のホールから外へと向かっていた。


 外に出たキーツは、唐突にリリアーナに呼ばれる。


「キーツ、待ちなさい!」


 足を止め、呼ばれた方向へと向くキーツ


「あぁぁん? 口の利き方も知らないのか…ピューレ家のお嬢様は?」


 2段程先に降りていたキーツは、リリアーナと同じぐらいの背丈になっていた。


 向かい合う2人の後ろにティリスが立つ。


 睨み合う3人、更にキーツの前には取り巻きの2人と、ピンク髪の子も立っている。


「貴族ともあろうものが、そんな流民と仲良くするとは……、ピューレ家も落ちたものだな」


「ティリスはね、サラ様、システィーヌ家にお世話になってるのよ、その点では貴方より上の筈よ!」


 キーツの表情が少し曇る。


「っは、それがなんだ? システィーヌ家の方々も、その流民を奴隷として飼われているだろ? 俺の様に、なぁ~プラム?」


 プラムと呼ばれたピンク髪の女の子は、髪を引っ張られ2人の前へと出した。


 ティリスが前に出ようとするが、リリアーナに止められる。


「落ち着きなさい、ティリス」


「っく!」


 奥歯を噛み、手を握りしめリリアーナの言う通りにした。


「あんた、奴隷としてその子を……」


「あぁ~、イイ声で鳴くぜ、ピューレ家も飼ってみろよ? 癖になるぜ?」


「最っっ低! あんた人として終わってるわね?」


「なんとでも言うが良いさ! それを俺は許される! 何故かって? 貴族だからだ!! そこの流民とは世界が違げーんだよ!」


「ティリス、ごめん……あんなのが貴族で……」


 リリアーナはティリスに頭を下げる。


「リリアーナが謝る事なんて何も無い、アイツが間違ってるだけだ!」


 怒りを露わにするティリス


「なんだ流民、口の利き方に気をつけろよ!」


 ティリスは手を胸のポケットに入れ、リリアーナから借りたハンカチをキーツに投げ叩きつける。


 キーツは少し止まり……投げられたハンカチを拾い上げた。


「意味は分かっているのか……流民?」


 ほんの少し間が開き、もう一度、キーツは問いかける。


「意味は分かっているのかと、聞いているんだ!! このクソ流民がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 キーツの大きな荒げた声で、他の学生達は声の方へと向いた。


「あぁ、今度の闘技大会で、その子を掛けて決闘だ!」


 ティリスとキーツは睨み合う。


「なんだ? ヒーロー気取りか?」


 ティリスはキーツからプラムに向き直り微笑む。


「必ず君を助けてあげるから」


 もう一度、キーツへと向き直る。


「ふん! 俺がそんな約束をするとでも?」


「あら? 貴族ともあろう者が、まさか流民にヒビってるのかしら?」


 リリアーナの挑発にキーツは下がる事が出来なくなってしまう。


「俺が? 流民に…ビビるだと!? ふざけるな!」


 顔を真っ赤にさせて、早口になりながら捲し立てる。


「あぁ、いいだろ! この流民をかけてその決闘、受けてやる! その代わり、俺に負けたらお前を奴隷に飼ってやる」


「あぁ、構わないさ!」


「こんな決闘を申し込まなければと、思わさせてやるぜ、首を綺麗に洗って待ってるんだな!」


 ティリスはプラムに話しかける。


「もう少しだけ、我慢してね」


 プラムはティリスに対し


「キーツ様はお強いです、私の為に止めて下さい」


 キーツはプラムの髪を鷲掴みにし、口の広角を上げニヤっとした。


「プラム…俺様が強いのは分かってるんだ……だけどな、この流民はお前を助けたいらしいぞ? まぁ、直ぐにお前と同じ奴隷になるけどなぁ~」


 目に涙を浮かべるプラムを、ティリスは優しく声を掛ける。


「大丈夫、俺も強いから安心して」


「ふんっ! たまたま、システィーヌ家のお力で首席なったのを自分の実力だと大方…思ってるんだろ? ボコボコにしてやるよ」


 『あーはっはははは』っと、キーツは笑いその場を去って行った。


「ほんと、あいつマジで最低なやつよね……でも、本当に大丈夫なのティリス? あんな性格だけど、腕だけは一流よ、多分、ティリスが居なかったら間違いなく首席合格してたはずよ」


「大丈夫、俺も強いさ」


「いや、あんたの強さは分かってるけど、あいつも本当に強いのよ?」


「言っとくけどこの前の実力試験の時、俺は本気出してないからね」


 リリアーナもティリスの異常な強さを分かっている。


 途中で止められたと言っても、あのヴォルスに引き分けたのだからと。


「そう、あんたが言うだから本当なんでしょ」


「なんか、物分かり良いよね?」


「そら、あの地獄の特訓を……止めとくわ、思い出すだけで吐きそうだわ」


「あっはは、うん、とりあえず闘気大会に向けて燃えてきたよ」


 ティリスはプラムを助ける為に、リリアーナは特訓成果を出す為に、闘技大会に燃える2人だった。



—————————


第二章 入学編でした。


ここまで読んで頂いて、ありがとうございます。


最近は、凄く見てくれて頂ける方が増えて来ました。


単純なので、頑張る材料になってます。


次は、闘技大会編です。


地獄の特訓を終えたリリアーナに、特訓中のアレン


睨み合うキーツに、助けを待つプラム


ティリスはどんな闘いをするのか


やっと、主人公が無双します。


なんか長かった……


それでは、楽しんで頂けると嬉しいです。


一旦、ここで失礼します( ›◡ु‹ )





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