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ep.12 入学試験②

 最終試験に向かうティリス達の前には、ドーム型の大きな建物があり、その中に入っていくと目の前には緑の芝で埋め尽くされて大きな広場になっていた。


「それでは、最終試験を行う! 試験の内容は簡単だ、今、そこに居る試験官と闘い、君達の真の実力を私達に見せてくれ」


 広場の真ん中に立つ、見た目180cmぐらいの男は、自分の全身半分ぐらいの長さの剣を片手に持ち、肩でその剣を支えて持っていた。


「うむ、試験官のヴォルスだ! 手加減はするが怪我をさせないとは言わないからな、本気掛かってこい」


 ヴォルスは、そこそこ名の知れた冒険者である。


「マジかよ……現『A』ランク最強の1人と言われる冒険者じゃねーかよ」


「あんなのに、俺達の攻撃なんて当たるのかよ?」


 挑戦を前に受験者達は、目の前の絶望に沈んでいた。


「皆、静まれ! あの男に勝てとは言っていない、君達の実力を量る為のものだ。それでは、試験に挑戦したいやつはいるか?」


 勢いよく手を上げる男が1人

 

「俺が行く!」


 痩せ型だが、いい具合に鍛えられた筋肉に、ティリスと同じぐらいの背格好で170cmはあった。

 1番印象的なのは腰に掛けた2本の剣


「えー……っと、アレン・ダーリング君だね」


 ズカズカっと、ヴォルスが居る広場へと歩いて行く。

 指を鳴らし首や全身に準備体操を怠らない。


「あんたの噂は聞いてるぜ! 手加減なんて要らねーぜ」


「君は『剣士(ソード』)志望かな? なら、私も剣のみで闘おうかな」


「っち! 舐めやがって!」


 腰に掛けた両の剣を手に取る。


「ほう、二刀流か……珍しいね、うん♫ 掛かっておいで」


 ヴォルスは剣を構えた。


 それは、見たことのない独特な型


 吠えるアレンは、真正面からヴォルスに向けて走り出す。


《うおぉぉぉぉぉ!!》


 両の剣から次々と放たれる剣戟に、ヴォルスは全てを見切り受け流した。


「んー、良い剣筋だね~、その型は自己流かい?」


 どんな攻撃にもヴォルスは、余裕を持って剣筋を見切る。


「喋ってねーで、掛かって来いよ!」


 全ての攻撃を(ことごと)く弾かれ、顔には苛立ちが隠せないアレンだった。


「これは、試験だから……君の実力を量る為のものだからね」


《ックソ! うぉぉぉぉ!!!》


 アレンは更に連撃のスピードを上げ、スキルアイテムを使用し自身に身体向上(パッシブ)を掛ける。


瞬発力向上(スピード向上)更に、EX瞬発力向上(スピード最向上)


 二段構えの身体向上(パッシブ)は、瞬く間に剣を振るスピードが格段に上がる。


 『秘技、連撃連斬牙(ラピッドストライク)


 二本の剣が相手を噛み挟む様は、まるで捕食動物の様に上下へと高速で動いた。


「ほぅ…これはこれは、なかなかの良い攻撃だね」


 尚もヴォルスは余裕で攻撃を見切り返す。


「なんで、当たらねーんだよ!!」


 そろそろと、一瞬の隙を見逃さずアレンの攻撃に合わせ反撃をした。


《ッキーーン》


 2本の剣は宙を舞い、地面に叩き落ちる


「良いものを持っているけど、まだまだ、修練が足りないね」


 最後の一撃に心を折られ、肩を落とすアレンだった。


「ックソ!! ……次は負けねー」


 剣を拾い上げアレンは戻って行った。


「うんうん。若いって良いね♫」


 試験官はヴォルスの方を一度見ると、準備は万全という目配せをする。


「それでは、次の挑戦者は居るか?」


 そして、また、無謀な挑戦が始まる。


「私が行くわ!」


「リリアーナ・ピューレさんだね」


「よろしくお願い致しますわ」


 礼儀正しく挨拶をするリリアーナ


「こんな美しいお嬢さんに、剣を向けるの嫌なんだがね……これも試験だと思って頑張らせて貰うよ」


「そんな事を言っていられるのも、今だけですわ!」


 リリアーナはスキルアイテムを取り出し、炎をイメージする。


 先程の的当ての時の様に炎の弾を作りだす。


炎火弾(ブリット)×(かける)10


 リリアーナの周りには炎火弾(ブリット)の弾が浮き、ヴォルスをいつでも狙い撃てる様に的を絞る。


「これを、かわせるかしら?」


「なるほど、『魔導士(ソーサラー)』志望だね、それなら」


 飛んで来た炎火弾(ブリット)を、全て剣で撃ち落としていくヴォルスは、動かない的として全弾を狙いやすい軌道にし全てを処理していった。


「っな! それなら、これは防げないでしょ!!」


 驚きを隠せないリリアーナは、更にスキルアイテムに自身の力を注ぎ込む。


 出来上がったのは、文字通り炎の竜巻を作り出し、それをヴォルスに狙い定める。


炎火暴風(ファイアストーム)


「才能溢れてるね♫ ならこれで、いこうか」


 っと、剣を地面に突き刺すと、剣についたルビー石は強く赤く光り始めると、そのままヴォルス自身をその光に包み込まれる。


守護法陣(ダイヤモンドクロス)


 ヴォルスが最強の1人として言われる所以は、戦いに対しての才能もそうだが、1番の所は『絶対障壁』と言われたスキルアイテムの力を全開で引き出せる所だった。


「そんな!? 私の最強の攻撃が……」


「なかなか、レアなスキルアイテムを所持しているみたいだね、だけど、それに依存しすぎて基本が疎かになっているよ」


「ッく…、、ありがとうございました」


 地面に足を付くリリアーナは、歯を食いしばりお辞儀をして戻ってきた。


 2人のやられ具合に、他の者が続いて手を挙げる事は無くなった。

 それからは、順番にヴォルスとの戦闘試験を行い(ことごと)く負けを積み重ねていく。


「最後だな、え~っと、ティリス・ハミルトン君」


「っあ、はい」


 ティリスは手を上げ広場へとゆっくり向かった。


「君が噂の測定不能の嘘つき君か?」


 先程までのヴォルスでは無く、やる気マンマンでの殺気を放つ。


「俺って、そんな変な噂が試験官さん達の間で立ってるんですか?」


 ティリスはその殺気を感じつつも、気付いていない振りをして、飄々と話を合わせた。


「今の所はね、でも、嘘じゃないかも知れない……っと、僕は思っていたりするけどね」


「いやいや、買い被り過ぎですよ」


 顔の前で手を横に振り、困った顔を見せた。


「まぁ、やってみれば分かる事だしね、ちなみに君は何の職業(クラス)を志望してるんだい?」


「一応、『竜騎士(ドラグナー)です」


「ふーん、僕と一緒か……良いね、腕が鳴るよ」



 前世では、剣士(ソード)魔導士ソーサラーも、そして、竜騎士(ドラグナー)も存在しない職業だった。


 なにもかもが、変わってしまった今の状況にティリスは、慣れてしまっている。


 変わってしまった事が悪い訳では無い、変わってしまった事に何か原因があるはずだと、魔法の概念が無くなってしまったが、それでも、スキルアイテムから使っているものは、魔力を媒体にしている事には違いないと、その原因を調べる為にこの学院で学び、冒険者になる事が近道だと思うティリスだった。


 そして……一閃———、ヴォルスの剣がティリスを襲うが、その剣先はティリスにギリギリ届く寸前の所でビタッと止められる。


「ほぅ、これを見切るか……」


 一切、目を逸らさないティリスにヴォルスは確信を持った。


「抜け! 勝負だ」


 久しぶりの強敵に燃えるヴォルスだった。

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