~第7幕~
綾世からは再びブロックされるようになり、あれからどうしているのか解らずじまいに。こんなことになってしまった以上、私のことはこれまで以上に憎んでいるのだろう。彼女とはもう二度と会わない方がいい気がした。
そして彼と約束した「光のページェント」を一人眺めて歩いていた時のことだ。
私は目撃した。新滝綾世は別の男子高生と腕を絡めて歩いていた。とびきりの笑顔をみせて。私はすぐさまに彼女たちのもとへ駆け寄った。そして「この阿婆擦れ女!」と彼女に掴みかかった。
「誰だ! お前は!」
私は綾世の新しい彼氏に突き飛ばされた。
「し、知らない! 人違いじゃない?」
迫真の演技とも言うべきか。彼女はまるで赤の他人のように私をあしらう。
私は茫然とした。朔は遺書の中でハッキリと記してなかったが「迷惑をかけてしまった」と私達の事を示す一文を残したのだ。それなのにそれを知らないのか?
「まさか全部……謀っていた……」
私は綾世と太いパイプを持つ高丸先生とアポをとって彼女の事を尋ねに行った。学校に通えなくなった私をよそに彼女はのうのうと学校に通学しているみたいだ。この教師は彼女からある事ない事、私が彼女をのけ者にしようとしていたと彼女から心底訊いていたようだ。もはや完全に彼女の味方であった。
「一体誰が悪いのかしら? 心配の一つぐらいして欲しいのなら、アナタも心配してあげれば何か違ったかもしれないわよ? でも、もう遅いわね。森久保さん」
きっと私と朔は彼女の復讐にやられてしまったのだ。
いや、元はと言えば私が全ての原因なのか。
私は偽名をつかって天文部の入部届をだした。
そしてまた久しぶりに綾世と対面することとなった。
私の顔をみた綾世は目を丸くしていた。状況が飲みこめてないらしい。
それもその筈だ。彼女の胸に刃物が刺さって、そこからは夥しい鮮血が流れて床を汚してゆく。
「何で……ハァハァ……裏切ったのはアナタで……私はただ……」
彼女は死ぬのが怖いのだろう。涙を浮かべて命乞いをしているようだ。
「サチと友達になりたかっただけなのに……!」
彼女の最後の言葉はそうだったように思う。それでも私は彼女への怨み辛みを吐いては彼女を刺し続けた――
そしてその惨劇の現場は静かにその残骸を残すだけだった。
恋なんてどっか遠くにいる人たちが相思相愛になって勝手にするものなのだと思っていた。自殺なんて殺人なんてテレビの中で起きているフィクションなのだ。そう思っていた――
そして今日も仙台駅は幾多の人たちが行き交っている――
仙台駅の片隅にある喫茶店から私は名もなき群衆が通り過ぎていくのを眺めていた。みんな忙しいのね。このお店でしか飲めない紅茶と好物のザッハトルテをちょっとずつ口にしながら久しぶりの読書にのめり込む。哲学書じゃなく宇宙の知識が詰め込んである本だ。将来は宇宙飛行士? まさか。もう遅いよ。
平穏な私の日常はいつからそうでなくなったのだろうか?
目の前に座ったのは刑事の兄だ。家族としての兄ではない。
だけど今にも泣きだしそうな彼と目を合わせることはなかった。
「今でなくていい。今でなくていいから、ゆっくり話を聞かせてくれないか?」
手錠をかけられて私はどこかへ連れられてゆく。
最後に口にしたザッハトルテはどうにも苦くて不味かった――
∀・)最後まで読了ありがとうございました!コンプラ的にどうなんかな~って思ってはいたし、もしかして作品の投稿し直し・大幅な改稿が連載期間中にあったかもしれませんが、このあとがきが無事に表示されているのなら、きっと安心しております(笑)どのような反響があるのか、予約投稿している身としては不安ありワクワクありですが、少なくとも最後まで読んでくださったアナタへは心から感謝を致したいと思います。また別の作品でお会いしましょう。いでっちでした。




