表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

~第5幕~



「やめて!」



 彼が私に積極的にアプローチしてきた。付き合い始めて1週間経った事だった。私は気がつけば全力で彼を突き放していた。



「どうして? 俺たち恋人同士だよ? 気にすることなの?」

「違う……私は……」

「ショックだな。幸美先輩、のってくれると思った」

「ごめん、もう少し。もう少しだけ時間が欲しいの」



 彼の部屋で映画を観終わった時のことだった。私は自分の身体の特徴もあって、小学校時代から性の嫌がらせを受ける事があった。私にとってそれは克服しようにも辛すぎるトラウマだったのだ。私は謝り俯いたまま彼のお家を出た。



「もう、こんな時間か」



 時刻は21時をまわっていた。兄へは彼氏が出来たなんて事は言っていない。私は天文部の活動で遅くなっていると嘘をつき続けていた――



「今日は綺麗だな。こんなに嫌な気持ちになっているのに……」



 ふと夜空を見上げる。そこには光り輝く幾万もの星が輝いてみえた。なんだか急に綾世がどうなっているのか気になってメールを送ってみた。



 しかしメールは受信されなかった――



 翌日、私は天文部顧問をしていた高丸先生に呼びだされた。何のことだろうか? 鼓動が妙に早まった。



「新滝さんから学校を辞めたいと相談を受けたわ」

「え?」

「貴女の担任の近藤先生は彼女のことをよく解らないだろうし、さらっと知っているだけなのでしょう。去年彼女の担任だった私は彼女の事をよく知っている」

「そうなのですか……」

「ええ、昨年はあんな悲しい事があってね、彼女はすごく不安定になったのよ。寮の部屋から全く出てこなくなって。彼女が出てこられたのはここ最近になってやっとのことなのよ」

「それじゃあ……?」

「そう、私は今も彼女から相談を受けている。貴女達のことも聞いている」



 私は心臓を射抜かれた気がした。そして身構えてしまった。



「わ、私達が悪いって言うのです!? 私も朔君もやましい事なんてしてない! 彼女の為に恋愛しちゃいけないって言うのですか!?」



 先生は溜息をついて首を横に振った。



「そんな事は言ってない。さっき“学校を辞めたい”と彼女が相談してきたって話したわね。私はそれを阻止しようと思っている。彼女には彼女を護ってくれる身内なんていない。そんな彼女が中卒過程で世にでてイイ事あると思う?」

「それは……」

「貴女とは随分親しくしていたらしいわね? そんな彼女を見放してまで選んだ彼氏なのでしょ? ちゃんと導いてあげなさい。成人にもならない男子は過ちを犯しやすいものだからね」

「…………はい」

「それとも一つ」

「はい?」

「孤独になった女は何をするのかわかったものじゃない」



 彼女は私の肩をポンポンと叩いて立ち去って行った。



 私は暫くそのまま立ち尽くした――



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ