闇破れる
わずかに空の色が変わってきた。
初日の出を見るための、そんな特別ツアー。
俺はそれに参加している。
3か月前に予約が始まった時には、ものの10分かからずに満席となった。
わざわざ有休まで取って、このツアーに予約をするために近所の旅行代理店へと出向いた。
飛行機で空から見る初日の出は、それは特別だろうと思ったからだ。
どうせ独身で金は余っている。
余っているのなら、こういうふうに使うのも一つの手だと考えた。
「あと5分ほどで、初日の出が出てまいります」
機内放送で、機長が話してくれる。
向かって右側から出てくるそうだ。
すでに先ほどから今にも生まれそうな光が、水平線の中央から八条の光を放ちつつ観える。
ふわふわ、何かが浮かんできているような感覚とともに、とうとう太陽の本体が見え始めた。
太陽を見るための、日食用の眼鏡をかけ、初日の出を眺める。
機体が少し揺れているが、見るためには問題はない。
「……今年一年、何事もなく、善い年になりますように」
思わず拝み、それからつぶやいた。
これから1年、それからずっと善い年であるように、と。