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月虹群雲、朱き君。  作者: 雨宮ムラサキ
~番外・魔属かんさつにっき~
21/33

味覚編②

 まるがつさんかくにち。





 クァフしか食べないヴァーグに少々危機感を覚えた俺は、彼に他の味覚も教えようと思い立った。

 いくらクァフが砂糖べったりの菓子じゃないとは言え、虫歯になりでもしたら困る。

 いや、虫歯があるかどうかも判らないけど。

 しかしそもそも、食事をしない魔属に味覚を教えるのは大変か。

 何しろ彼等は、興味のある事以外一切動こうとしないのだから。

 取り敢えず、先ずは俺が色々なモノを食べることにした。

 何だそれ、と言ってきたら分ければいい。俺に好き嫌いがないから出来る作戦だ。

「弥栄」

「うん?」

 口の中のモノを飲み込んで、ヴァーグに返事をした。

「何だ、それは?」

 掛かった!

 計画して色々なものを食べ始めて3日目。興味を示すのは意外と早かった。

 しかし……コレは与えて大丈夫なんだろうか。

 見るからに辛そうな赤色のスープに、幾つか団子が浮かんでいる。

 そして実際、見掛けを裏切らない辛さだ。

 甘党が食べられる辛さかなぁ……?


 ああ、目が生き生きしてる……


「や、ヴァーグ、お前は食べない方がいいから」

「何故だ?」

「辛いから。甘いのが好きだったら止めとけ」

 む、と眉を寄せるヴァーグ。

 どうやらプライドが刺激されたらしい。厄介だ。

 じい、と無言の圧力。

「……判った、一口だけだぞ」

「よし」

 後悔しても知らないからなー。

 内心そんな無責任な事を考えつつ、ヴァーグがスープを口に運ぶのを眺める。




「………………むぅ」




 うっわ嫌そうな顔っ!

 お前のせいだみたいな目でこっちを見るなよ……








『まるがつほしにち。あめ。

 あれから更にクァフしか食べなくなった。まるきり逆効果。

 だから止めとけっていったのに。』

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