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第62話 対決3

「少し、ゆっくりお話をしたいのですがよろしいでしょうか?」


「ええ、もちろん。どうしてあなたが私が毒を盛ったなんて思ったのか、じっくり話を聞きたいわ。私は、リアに好意を持って接してきたのに、どうしてこんなことを言われなければならないのか」


 そうまっすぐな瞳で言われてしまうと罪悪感が襲ってきたが、ここで怯むわけにはいかない。毅然とした態度で臨むことにした。


「私も、残念です。とても良くしてくださって、仲良くなれると思っていたのに」


「私は、あなたのこと本当の娘のように思って、短い期間だったけれど、王城内で恥をかかないようにあれこれお教えしてきたつもりです」


 ローズ王妃は目を伏せ、肩を上下するほど大きくため息を吐き出した。


「それがどうして? まるで後ろ足で砂を掛けられたような気持ちだわ」


「そうですね、私も残念ですが、ローズ王妃が私のグラスに毒を入れたことは確実です」


「私より、よく分からない下町育ちの男のことを信用するのね」


「ユアンが下町育ちかどうかはよく分かりませんが……まあ、そうです。彼は信頼にたる人物なので、その彼が言っているのだから間違いありません。問題は、ですね」


 ヴィクトリアは一旦言葉を句切って、ローズ王妃の反応を少しでも見逃すまいとしながら、再び口を開いた。


「それを、誰に頼まれたかという点です」


「……なんですって?」


 ローズ王妃の眉根に深く皺が寄った。

 ああ、やはりあの人に頼まれたのかと確信した。まさか、とは思っていたのだが。


「たぶん、お話ししてはくれないかと思うので私からお話します。……その前に、侍女達を下がらせた方がいいのではないですか?」


 ローズ王妃はムッと口許を歪めたが、すぐにいつもの微笑みを浮かべた。


「そう、ね……。今からリアがなにを言い出すのか分からないけれど、とんでもないことを言い出して悪評を買わないように」


「ええ、そうですね。ぜひお願いします」


 ちょっとした嫌みが含まれているとは分かったが、軽く応じて流した。貴族同士余計な衝突がないように必要なことだと教えてくれたのはローズ王妃だったように思う。


「あなたたち、聞いたかしら? 少し控えの間で待っていてくれないかしら?」


「いえ、しかしローズ様……」


「いいから、お願い」


 ローズ王妃が少し強い口調で言うと……、恐らく彼女はそんなふうに口調を変えることが普段はないのだろう、侍女たちははっとした顔つきになって、そそくさと部屋から出て行った。


 こうして、部屋にはヴィクトリアとローズ王妃のみになった。


 ローズ王妃は紅茶に口をつけた。

 きっと緊張しているのだろう、とヴィクトリアはとった。心を落ち着かせるために紅茶を口にしたのだ。と、なると、自分の考えに間違いはないだろうと確信は更に深まっていく。


「さあ、話してもらいましょうか? 私が誰に頼まれたというの? 申し訳ないけれど、私は王妃なのよ。その王妃の私に毒を入れるように頼むなんて、そんなことができる人がこの王城にいると?」


「ええ、そうですね。残念ながら」


「はっきりと言ってちょうだい。それは誰だって言うの?」

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