第61話 対決2
「そんなもの、罪から逃れたいための嘘に決まっています」
「そんなことはありません。ユアンは信頼できる人です」
「彼を信じたい気持ちは分かりますが。ヴィクトリア、確固たる証拠もないのに人を疑うのはよろしくありませんよ」
「では……そうですね」
ヴィクトリアは思案するように顎に手を当て、それから首を傾げてローズ王妃の顔を覗き込んだ。
「先ほど、私のグラスに毒が入っていたとおっしゃいましたが」
「ええ」
「どうしてグラスだとお分かりなのですか? 私はそんなことはひと言も言っていません」
そう言った時、ローズ王妃の瞳が泳いだことを、ヴィクトリアは見逃さなかった。
そして、これは間違いないだろうとの確信を得たのだった。
いや、ユアンが嘘をつくはずはないとは分かっていたのだが、しかしまさかローズ王妃が、と最後まで信じたかったのだ。
「それは、そうね……」
ままあってから、ローズ王妃は先ほどの威厳を取り戻して滑らかな口調で言う。
「だって、だいたい予想はついたわ。そのユアンという人は、あなたの命を助けるために毒が入っているグラスを銃撃したのでしょう?」
「そう決めつけるには少々無理があるように思います。晩餐会を中止するために狙撃したという可能性もありますし、他の料理に毒を入れられた可能性だってあるじゃないですか。でも、料理に毒が入っていたとしてテーブルの上にあるものを狙撃するなんて無理があるじゃないですか? だからグラスを掲げた時にグラスを狙ったという可能性も」
「そ、そうね。言われてみればそんな可能性もあるわね。早とちりで勘違いして、それがたまたま当たっていただけよ」
「では……こちらの指輪から毒が見つかったとして、それも偶然でしょうか?」
「……。そうね。そうとしか言えないわ」
その強情な言いように、これはひと筋縄ではいかないなと思った。
(素直に……白状するわけないか。困ったなあ)
しかし、ここはなんとか説得するしかないかと腰を据えて挑むことにした。ここでローズ王妃に白状してもらわなければ、ユアンを牢から出すことはできないのだ。




