表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/72

第52話 真実はどこに?2

 あのユアンが自分の命を狙った。

 そもそもの出会いが、自分を殺そうとやって来たということだったのに、なぜ今更、と思うが、胸がきゅーっと締め付けられて、全身への血の巡りが止まってしまったように感じる。


「しかし、それ以上はなにも話しません。誰かに雇われたかとの問いにも黙秘を貫いています。それを素直に白状した方が罪が軽くなるぞ、とも言ったのですが」


「ヴィクトリアちゃんを狙っている者が、他にいるというのか?」


 パパは憤然これほどか、という勢いである。


「恐れながら、そう考えるのが普通かと。彼は金で雇われたのでしょう」


「お金を積まれてヴィクトリアちゃんを裏切ったと」


「はい、そのように思えます」


 果たしてそうだろうか。

 警備兵たちはそう考えていて、パパはそれで納得している様子だったが、ヴィクトリアはどうにも釈然としなかった。


(でも……私を暗殺するのはやめたと言っておいて、やっぱり依頼を続行することに決めたのかしら?)


 そういえば、自分を殺さなかったら、これから得られるだろうお金を支払うという約束で命びろいをし、それを支払わなくてはね、と言ったのにユアンはそれを拒絶した。

 それは、元の雇い主の依頼を遂行する決意を固めていたからであろうか。


 ユアンは一度はヴィクトリア暗殺を断念したのだ。断念……という言い方は相応しくないかもしれない、いくらでも殺せたのに、殺すのをやめたのだ。

 その思いを翻したものとは一体なんなのか。気になって仕方がなかった。


「それにしても許しがたい! お金のために昔馴染みであるはずのヴィクトリアちゃんを殺そうとするなんて!」


「ええ、そうね……」


「そんな顔をしないで、ヴィクトリアちゃん。ショックなのは分かるけれど」


「ええ」


「きっと彼は変わってしまったんだよ、この王城ではよくあることだ。お金は人の人生を狂わせる」


 なんだか国王らしからぬ言葉だと思いつつ、本当にお金なのだろうかと疑念は消えない。

 ほんの少ししかユアンのことは知らないかもしれないが、彼にはお金にそれほど執着があるように思えなかった。……殺し屋だというのにおかしな話かも知れないけれど。


 誰かに頼まれた、という可能性はある。

 たとえば王城でヴィクトリア暗殺を依頼した者に再会して……顔は露見していないと言っていたが、なにかのことで相手には分かってしまったのかもしれない。それで脅されただとか、改めて依頼されただとか。


(! そういえば、この前ユアンと庭で話していた令嬢は……?)


 確か名前はレイチェルと言った。

 なにかユアンと深刻な様子で話していた。実は彼女がヴィクトリアの暗殺をユアンに頼んだ人物だとしたら?

 侍女のジュリアは、確かレイチェルの家は複雑なことがあったと言っていた。その仔細は話してくれなかったが、そのことがなにかヴィクトリアに関係があって、恨んでいた可能性は否定できないではないか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ